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食品業界のM&A(事業承継)を検討する場合_岡村 新太

こんにちは。かえでFA岡村です。本日は食品業界のM&Aについて見ていきたいと思います。
食品業界のM&Aといっても、商社なのか、メーカーなのか、メーカーであれば調味料なのか、加工品なのか、と分類がかなりできるのですが、今回は食品メーカーに重点を置いたものにしたいと思います。
個人的には、これから統合が進みグローバルにうってでる、グローバルブランドが複数生まれるのではないかと期待している分野になります。

1.業界の市場規模と特徴

では、まず市場から見ていきましょう。食品メーカーの市場規模は、わが国のGDPから見てみると、2018年において13兆4,320億円と巨大な市場となっています。

食品は、生鮮食品と加工食品に大別され、更に56分類と細分類ができる業種です。加工食品については、1次から3次加工までございます。1次加工食品とは、漬物や白米、缶詰等の最小限の加工処理を行ったものを指します。2次加工食品とは、パン類や麺類、ハム等複数の食材、または1次加工品を用いて新たな食品としたものを指し、3次加工食品とは、1次・2次加工食品を2種類以上用いて加工食品としたものを言い、具体的には総菜だったり冷凍食品、菓子等です。多くの事業者は、3次加工食品を製造しています。

食品製造業界の特徴としては、原料の調達等の側面から、商材は同じでも地域ごとに複数の事業者がいることです。実際に、食品加工業の事業所数は、国内の製造業においては最大であり、地域の食を支えるだけでなく、人の雇用や生活まで守ってきた事業者といえます。生活必需品を扱うことから、景気の変動を大きく受けない業種でもあり、大手事業者のシェアが絶対的なものではない、比較的多くの会社でシェアを分け合っている業界であります。

国内の景気に大きく左右されない特徴があると申し上げた一方、先に記したように原材料を海外から調達することもございますので、事業によっては、海外との貿易協定や為替変動のリスクを抱えている業種であると思います。TPP(環太平洋パートナーシップ協定)や各国とのEPA等、貿易協定によっては、今まで通用していた売値が激変することもあれば、逆に仕入値がとても安くなる可能性もありますので、貿易協定の動向や為替変動は特にチェックが必要な業種といえるでしょう。

2.トレンド

では続いて、食品業界のトレンドについて見ていきます。

(1)コロナ禍の影響

新聞各社や雑誌から読み解くと、コロナ禍で外食店の売上が急減してしまったことで、業務用食品を製造している事業者は窮地に立たされていそうです。一方で、巣ごもり需要や内食、デリバリー業態は好調であり、そういった事業に販路がある事業者は大幅な増収・増益となっているようです。巣ごもり消費でも特に好調だったのが、冷凍食品や缶詰、乾麺等で一時的に品切れになるほどだったのは、皆様もご存知だと思います。

(2)少子高齢化

続いて、少子高齢化により需要も大きく変化していることがあります。我が国は、世界一の高齢化率といわれており、それを受けて介護食市場が注目されています。また、介護食以外に患者食と呼ばれるものもニーズがあり、こういったものが市場を牽引するものと予測されます。勿論、在宅用の介護食も伸びていくでしょう。

(3)生活習慣

少子高齢化はもちろん、現代は生活習慣も大きく変わりました。核家族から更に個人へと食事一つとっても、一概に論じることができなくなっています。その中で、個食と呼ばれるような、お一人様向けの商品に注目が集まっています。また、生活習慣を予防するための健康志向へのニーズも高まっていて、サプリメントや保健機能食品と呼ばれる商材も増えています。背景には、国の方針として社会保障費を削減したいという思惑があり、そういった事情もあることから、人々の食への関心は高まっていくでしょう。

3.食品業界のM&A事例

では、食品メーカーのM&A事例を複数見ていきましょう。

 (1)ヨシムラフード社のM&A事例

ヨシムラフード社は、中堅・中小の食品メーカーに対しM&Aを行い拡大してきた企業です。

中堅・中小企業をきちんと引受け、利益を生み出せる会社は実際そう多くないと考えていますが、同社はそれができる数少ない事業者だと思います。

チルドシウマイ製造の楽陽食品社を皮切りに、酒造、ゼリー、水産加工等様々な事業体と次々にM&Aを実行し、その規模を大きくしています。同社の特徴は、譲り受けた企業を売却することなく、自社のノウハウを注入して成長させていくスタイルを取っていることです。2017年には、シンガポールの企業に対しM&Aを行っており、海外への販路も手にしているようで、今後も食品メーカーのM&Aを牽引していく存在となりそうです。

(2)神明HD社のM&A事例

神明社は、精米卸の老舗の事業者です。近年、活発にM&Aを行っている事業者ですので、紹介させていただきます。直近の動きだけでも、

2020年12月 東京中央青果社と資本業務提携を締結(生鮮卸)

2020年11月 中島社の株式取得(水稲の育種研究)

2020年10月 モチクリームジャパン社からの事業譲渡(冷凍・チルド菓子製造)

2020年3月 名水美人ファクトリー社の株式取得(もやし製造)

※同社HPを参照

と、今年だけでもかなりの件数のM&Aを実行されています。米という商材に限らず、食の総合商社を目指そうとされていることが読み取れ、今後の動向にも注目です。

(3)西原商会社のM&A事例

西原商会社は、鹿児島に本社を構える業務用の食品商社です。同社も、近年M&Aを推し進めている代表的な会社だと考えていて、2020年だけでも、

2020年12月 草加葵社の株式取得(煎餅・あられの製造)

2020年11月 はやしハム社の株式取得(食肉関係のPBのOEM等)

2020年 9月 松山製菓社の株式取得(スナック菓子製造)

2020年 7月 龍屋物産社の株式取得(珍味・志向品の製造)

2020年 1月  松本農園の取得

※同社HPを参照

と5件もM&Aを実行しています。地方の有力な企業がM&Aを通じてさらに商圏を広めるという好事例だと思いますし、今後にも注目です。

(4)アドバンテッジパートナーズ社のM&A事例(日本銘菓総本舗)

アドバンテッジパートーナーズ社は、老舗のプライベートエクイティですが、2018年に菓子に着眼したファンドを設立しています。その背景には、ポッカ社やクラシエフーズ社、成城石井社やコメダ珈琲社等同社が投資実績の中で培ったノウハウを活かせると踏んだからのようです。今後はこういう、特定の分野に特化するような特色のあるファンドがちらほら、出てくることが予想されます。

※同社発表を参照

4.M&Aのポイント

では、第三者に事業承継を検討するにあたってどういう点がポイントなのか、小職の実体験を踏まえ解説したいと思います。

(1)商流や取引先

まず、商流がどこにあるのかはポイントになります。スーパー向けなのか、外食向けや業務用のものなのかで興味を持つ事業者が変わります。例えば商品がスーパー向けの商材として、食肉関係でしたら、興味を持つ事業者は食肉に関連する事業者が出てくるでしょうし、もしかしたら新たな販路を求め水産加工系の事業者も欲しがるかも知れません。もちろん、調味料系の事業者も買い手候補になり得るでしょうし、川上の原料を供給する事業者が欲しがることもあり得ます。

このように、まずは自社の商材が商流上何処にいるのか、きちんと整理して自社の付加価値を高く見てくれる事業者を分析してみてください。

次に、全ての事業に共通するのですが、取引先(取引口座)にはどういったところがあるのか、は必ずポイントになると思います。これも先の商流に絡みますが、新たな販路を確保したい事業者にとって、自社にない取引先は魅力です。従って、取引先ごとの売上や損益は、最低でも付加価値ベースで管理してください。ないのであれば、最低3年間は整理しましょう。

(2)地域(商圏)

商圏も大事なポイントになります。買い手候補者にとって、M&Aは新たな販路を確保するためのものですから、商圏ごとの損益の整理もきちんと行いましょう。先に記載した通り、食品業界は地域ごとに職の経済圏があることが多いために、別の地域からしたら参入障壁が高いこともあり得ます。従って、事業承継を検討する場合は、必ず自社の商圏ごとの損益は整理してください。

(3)利益率の高い商品

どの商品が実際儲かっているのか、きちんと整理できていますか?売上構成比だけではだめです。第三者に事業承継を行うということは、定性的な側面だけでなく、定量的な側面からも評価を受けることです。

従って、商品ごとの損益は、売却の手続きに入る前に必ず整理しましょう。詳しくは小職が投稿したコラムをご覧ください。

(4)従業員との関係(労働債務)

工場をお持ちの事業者には必ず出てくる論点だと思うのですが、いわゆる未払残業代等がないか、きちんと確認しておきましょう。また、万が一過去に労働者との間でトラブルがあったのであれば、そのあたりも書類を整理しておきましょう。

(5)法令関係や食品安全マネジメントシステム等

食品業界は様々な法令がございます。事業をしていくうえではあまり意識されないかもしれませんが、事業承継を検討するうえでは、第三者から評価を受けることになりますので、自社のビジネスの前提がどのような法令を基に成り立っているのか、取得しているマネジメントシステムがどのようなものか、リストを整理しましょう。

取得のものがISOなのかFSSCなのかでは、当然評価も異なるでしょうから、何故それを取得したのかも整理できているとよりgoodでしょう。

5.終わりに

いかがでしたでしょうか?食品業界、特に食品メーカーは国内市場で拡大していた事業者が多く、これからグローバルに戦う事業者が中堅・中小企業からもっと増えていくと思います。事業承継は今や経営戦略の一つです。食わず嫌いをするのではなく、きちんと情報を整理し、有利な条件で事業承継ができるよう、準備してみてください。

 

かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社

マネージャー マーケティング担当

上級ウェブ解析士

岡村 新太 Arata Okamura

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