MENU

化粧品業界のM&A | 良い相手と良い条件で成約するポイント

業種別M&A

化粧品業界では、昨今、中国向け輸出や越境ECが伸びているものの、海外大手メーカーに比べますと日本の大手化粧品メーカーの海外売上比率は低い状況にあります。

国内マーケットでは中長期的に人口減少による需要低下が予想されるため、化粧品業界では海外市場の開拓が大きな課題になっています。また今後も韓国や中国の化粧品メーカーの日本進出で競争激化が懸念されています。

このような状況において、化粧品業界では、中小規模事業者を中心に、後継者難、規模・エリア拡大、顧客の多様なニーズへの対応を目的としたM&Aが活発に行われています。

そこで、本コラムでは、化粧品会社のM&Aで押さえたいポイントや成功の法則を分かりやすく解説します。

Ⅰ. 化粧品業界の市場規模と特徴

化粧品業界の2021年の市場規模(出荷額)は、前年比8.2%減の1兆3,529億円となり、2年連続の減少となっています(経済産業省精算動態統計)。

2012年から2019年までは右肩上がりで推移しましたが、2020年と2021年は2年連続で減少しました。

2021年の化粧品業界は、前年から引き続きコロナの影響を受けた年でした。

化粧品は販売チャネル数が多く、なかでも百貨店が売り上げをけん引していますが、2020年から2021年は中国人を中心とした訪日外国人が大幅に減ったため、百貨店の化粧品売上も大幅な下落となりました。

品目別出荷額の構成比をみますと、化粧水や乳液等の「スキンケア用品」が50.9%と全体の半分を占め、シャンプーやリンス等の「頭髪用化粧品」は26.9%、ファンデーションなどの「仕上げ用化粧品」は16.1%、残りは日焼け止めや香水などです。

 

Ⅱ.化粧品業界のトレンド

他業界同様、化粧品業界においてもDXが加速しています。

従来は、消費者の購買行動の変化に対応すべく、オンライン上での新しい体験や非接触型の美容カウンセラーの提供など、販売面でのDX活用が多かったのですが、昨今は、商品企画、製造現場でも積極的にデジタルが活用されています。

販売面での具体的なDXの取組としては、①オンラインカウンセリング、②バーチャルメイク、③ライブコマース、④店舗のデジタル化などが挙げられます。

また、最近、身だしなみの一環としてスキンケアをする男性が増えています。メンズ用のスキンケア商品も多く登場し、男性にとってもスキンケアは身近になってきています。

これはECの普及で対面での購入に抵抗があった男性も買いやすくなったことや、コロナ後、「自分磨き」など美容に関心をもつ男性が増えたことなどが原因とされています。

大手メーカーからもメンズコスメブランドやジェンダーレスコスメが登場し、今後もメンズコスメの更なる拡大が見込まれています。

 

Ⅲ.化粧品会社のM&A事例

では、化粧品会社のM&A事例にはどのようなものがあるのでしょうか?

 

◆異業種(金融)によるヘルスケア分野におけるネットワーク拡大を目的とした事例

2022年11月、オリックス株式会社(以下、「オリックス」)は、株式会社ディーエイチシー(以下、「ディーエイチシー」)の議決権(発行済株式)の 91.1%を取得し、子会社化しています。

ディーエイチシーは、業界を代表する大手化粧品・健康食品メーカーとして長年の実績を持ち、バラエティー豊富な商品ラインアップのみならず、さまざまなキャンペーンを通じて、顧客がご自身にあった商品を探す購買の楽しさを提供しており、幅広い年齢層の方々に支持されています。

オリックスは、医療機器販売会社の株式会社イノメディックスや製薬会社の同仁医薬化工株式会社への出資等を通じてヘルスケア事業に注力しており、このM&Aは、オリックスグループにおける同分野のネットワーク拡大に寄与することを期待したものです。

オリックスは、新たな株主として、ディーエイチシーが新たな経営体制の下、社会と協調し、顧客や取引先をはじめとするさまざまなステークホルダーに貢献するとともに、同社の持続的な社会の実現に向けた活動を支援するため、このM&Aが実行されています。

 

◆同業による商品群拡大を目的とした事例

2022年6月、株式会社アイケイ(以下、「アイケイ」)は、同社子会社である株式会社プライムダイレクト(以下、「プライムダイレクト」)を譲受会社として、コンビ株式会社が運営する化粧品事業を譲り受けることを決議しています。

アイケイグループは、2021 年7月に公表しました中期計画において、重点施策として重点投資領域への M&A を掲げており、TV ショッピング、EC、定期購入商品への注力、メイドインジャパンの海外展開の強化を目指しています。

コンビ株式会社が営む化粧品事業は、希少価値の高いツバメの巣由来の美容成分であります「コロカリア」を原料とする商品群を取り扱っており、アイケイのダイレクトマーケティング事業及びセールスマーケティング事業の各販路において大変魅力ある商品群であり、売上の拡大が見込まれることから、今回のM&Aでアイケイグループの企業価値向上に資するものであると判断しています。

子会社のプライムダイレクトが譲り受け先となる理由は、同社がダイレクトマーケティング事業を営んでおり、TV ショッピング、EC、定期購入商品への注力を成長のエンジンとしているなど、シナジー効果が一番高く最適であると判断したことによります。

 

◆同業による商品ラインナップの拡充を目的とした買収事例

2022年2月、株式会社サンドラッグ(以下、「サンドラッグ」)の子会社である株式会社ピュマージ(以下、「ピュマージ」)は、株式会社I-ne(アイエヌイー)からスキンケアブランド「skinvill(スキンビル)」を買収しています。

今回のM&Aは、サンドラッググループのオリジナルブランド強化の一環で、ヘルス&ビューティーケアの分野であるスキンケア商品の導入を図りながら今後商品ラインナップの充実を行うためです。

I-neは、独自のブランドマネジメントシステムを採用し、商品企画から販売本格スケールまでの各フェーズにおいて管理ステップ及びKPIを設け、リスクの抑制、ヒットの再現性並びに需要予測精度の向上に取り組んでいます。

今回のM&Aは、ブランドの本格スケールだけでなく、ブランド売却という選択を設けることで、I-neが育成してきたブランドをより成長シナジーのある企業を通じてスケールさせつつ、同時に投資の早期回収及び経営資源を集中させることを目的としています。

 

Ⅳ.化粧品会社のM&A・事業承継のポイント

化粧品会社を売却するとき、「できるだけ良い条件で売却したい」という方が多いと思いますので、その良い条件を獲得するためのポイントを解説します。

まず交渉を有利に進めるためにも、買い手が見るポイントを以下で説明します。

 

【買い手が見るポイント】

①化粧品事業に関する法規制
化粧品事業を運営していくにあたり、「薬機法」、「景品表示法」のほか、「化粧品の成分に関する法規則」、「適正包装規則」、「法定表示」など様々な法規制を遵守する必要があります。化粧品会社(製造販売業)の場合は、総括製造販売責任者という人員を配置し、内部を自己監督する義務を負い、製品に問題があったときには、自己監督責任(問題への対応責任)のもと行動しなければなりませんので、これらの法規制に対するコンプライアンス体制が非常に重視されます。

②人材確保の方法と育成
化粧品業界において、製品開発、マーケティング、研究開発、ITなど幅広い分野で専門的な人材が必要ですので、人材の確保とスキルの育成が最大の経営課題です。したがって、優秀な人材を確保するルート、採用時における人材の評価方法、最新技術動向の教育など人材の質を確保するための取り組みが評価されます。

③市場競争と差別化
化粧品市場は競争が激しいため、他社との差別化が非常に重要です。製品の品質、ブランド価値、新製品の開発、環境への影響など、差別化要因が詳細に検討されます。

④新製品開発とイノベーション
消費者の需要は常に変化しているため、新製品の開発とイノベーションが必要です。市場トレンドや技術の進歩に対応し、競争力を維持する戦略の内容が問われます。

⑤マーケティングと顧客獲得
消費者への適切なマーケティング戦略を策定し、顧客を獲得・維持することが重要です。ソーシャルメディア、デジタル広告、顧客対応などへの取り組みが評価されます。

⑥クレーム、バグ(欠陥)対応
過去にどんなクレーム、バグがあったのか、どんな対応を行ったのか、状況説明できるようにリストを作成しておくと良いでしょう。

⑦従業員の定着率
現在人手不足が最大の経営リスクとなっているため、従業員の定着率が低い場合、原因が待遇にあるのか、労働環境にあるのか、など原因を突き止めておくと良いでしょう。

 

【良い条件で売却するポイント】

①経営課題は伸びしろと考える
どのような化粧品会社でも何らかの経営課題を抱えています。まず売却の一番のポイントは、経営課題をネガティブなものとして捉えるのではなく、「伸びしろ」として捉えることです。つまり、自社で解決できない経営課題を解決してくれる買い手が「ベストパートナー」、イコール「良い条件を出してくれる相手」ということです。例えば、人材の採用に課題があれば、採用に強い買い手と組むべきですし、資金調達に課題があれば、資金に余裕がある買い手と組むことがM&Aで良い条件を引き出す重要なポイントとなります。

②赤字の原因を明らかにする
現在、事業が赤字、債務超過の状況にあっても、「赤字、債務超過だから売却できない」ということはありません。化粧品会社を売却するうえで、重要なのは赤字の原因を明らかにすることです。例えば、赤字の原因が人材不足にある場合、「もし人材の豊富な買い手と組めば、適正な管理体制や営業・マーケティング力はあるので必ず黒字転換できる」などと、きちんと伸びしろを最大限反映させた説明をすべきです。さらに、赤字の原因を解消できた状態の事業計画を準備しておけば、その伸びしろは買い手から高く評価されます。

③従業員の引き抜きを目的としたM&Aに注意
M&Aのプロセスを進めるうえで、買い手から従業員リストの提出を求められる場合があります。中には従業員の引き抜きを画策する買い手もいるため、個人名などの固有名詞は伏せてください。また、M&Aは従業員に与える影響が大きく、不安を感じる従業員は多いものです。従業員の離職につながらないよう、情報漏洩には注意してください。従業員にM&Aのことを開示するタイミングは最終契約書を締結した後が望ましいといえるでしょう。

④成約後は速やかに取引先・業提提携先に対する説明会を開催
化粧品会社の経営において、取引先・業務提携先との信頼関係は重要な要素です。買い手は既存の既存の取引先や業務提携先の反応を心配します。これらの取引先・提携先の理解を得るためにも、M&Aが完了した段階で速やかに説明会などを行い、買い手が安心できる企業であること、M&A前と運営は何も変わらないことを伝えましょう。

 

Ⅴ.まとめ

当社は、世界的に有名なREFINITIV(旧トムソンロイター)のM&A成約件数ランキングに9年連続ランクインしております。

また、豊富な譲り受けニーズを保有しており、2005年の設立(M&A業界では老舗)以来、蓄積してきた豊富な譲り受け希望企業のニーズを保有しています。

事業の今後の成長性を考慮した事業計画作成による譲渡価額最大化や、補助金・税制の申請支援、M&A後の相続税対策、資産運用などのご相談も承ります。

M&Aアドバイザリー会社では珍しく弊社には営業ノルマがないため、弊社の都合でM&A実行を急がせることはなく、ベストなタイミング・譲渡候補先をご提案いたします。

まずは、M&A・事業承継に関する事例やお話だけ聞いてみたいという方もお気軽にご連絡くださいませ。

 

M&A・事業承継の無料相談のご案内

M&A・事業承継のご相談ならかえでファイナンシャルアドバイザリー

  1. 安心の完全成功報酬制では支援件数No.1(400件超)
  2. 創業以来19年の豊富な実績と信頼感
  3. 幅広いネットワークによる強いマッチング力
  4. 士業グループならではの知見・ノウハウとサポート体制
  5. オーナー様に寄り添ったお手伝いができる組織風土

当社は、世界的に有名なREFINITIV(旧トムソンロイター)のM&A成約件数ランキングに9年連続ランクインしております。

また、豊富な譲り受けニーズを保有しており、2005年の設立(M&A業界では老舗)以来、蓄積してきた豊富な譲り受け希望企業のニーズを保有しています。

事業の今後の成長性を考慮した事業計画作成による譲渡価額最大化や、補助金・税制の申請支援、M&A後の相続税対策、資産運用などのご相談も承ります。

M&Aアドバイザリー会社では珍しく弊社には営業ノルマがないため、弊社の都合でM&A実行を急がせることはなく、ベストなタイミング・譲渡候補先をご提案いたします。

まずは、M&A・事業承継に関する事例やお話だけ聞いてみたいという方もお気軽にご連絡くださいませ。

 

売り手経営者のM&Aによるメリット

Ⅰ.経営者個人のメリット

1. 創業者利潤の獲得
M&A(株式譲渡)による税金は約20%で、役員給与、賞与、贈与・相続による税率よりも大きなメリットがあります。手取現金を多く残したいということであれば、親族内承継よりもM&Aが一般的に有利です。

2.個人保証・担保の解除
買い手は一般的に売り手企業よりも規模が大きく、その分金融機関からの与信が大きくなります。したがってM&Aのタイミングで経営者の個人保証・担保は解除されます(借入金の一括返済または保証の引継ぎ)。親族内承継では、前の経営者の保証が解除されないケースや承継者に保証を新たに求めたり、新旧両経営者に保証が残るケースもあります。

Ⅱ.会社のメリット

1.グループ経営による財務、人材のバックアップ、ブランディングによる採用
大手企業のグループに統合することによりブランド力、信用力が向上し、金融機関から資金調達力、人材採用力、取引先との交渉力などが強化されるため、このグループ力を生かして業績が急上昇します。株式上場の夢も実現可能性が高くなります。

2.従業員の雇用継続とモチベーションの向上
中小企業は一般的にオーナー経営になっている場合が多いため、従業員の視点から処遇の改善、個人のやりがい(能力の向上、キャリアアップ)が見込めない状態になっている場合も少なくありません。グループ経営により、業績が向上し、個人経営から組織経営に脱皮し、個人のモチベーション、やりがい、生きがい、処遇などが確実に向上します。

 

本記事の執筆者

かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社_代表取締役_佐武伸

かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社
代表取締役
佐武 伸

 

兵庫県宝塚市出身。関西学院大学商学部卒。米国サンダーバード国際経営大学院卒(MBA)。
朝日監査法人(現あずさ監査法人)にて上場企業数十社の会計監査、システム監査、株式公開準備(IPO)プロジェクト等に参画。
その後、奥田公認会計士事務所で中堅・中小企業の国内・国外税務戦略立案、事業承継対策、IPO等の幅広いコンサルティング業務に従事。専門は、M&Aコンサルティング、企業評価、会計・税務コンサルティング。
2005年にかえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社を設立、代表取締役に就任。
元中央大学ビジネススクール客員教授(M&A戦略)。

カテゴリー CATEGORY

カテゴリー CATEGORY

おすすめ書籍 RECCOMEND

最新記事 LATEST TOPICS