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コールセンター業界のM&A | 良い相手と良い条件で成約するポイント

業種別M&A

コールセンター業界では、昨今、人材不足を背景に、問い合わせ対応をコールセンターに外注する企業が増加しており、市場規模は拡大していますが、一方、人手不足、応対品質の低下、離職率の高さ、テレワーク導入による管理の不行き届き、対応チャネルの多様化などの様々な経営課題を抱えています。

このような状況において、コールセンター業界では、中小規模事業者を中心に、後継者難、規模・エリア拡大、顧客の多様なニーズへの対応を目的としたM&Aが活発に行われています。

そこで、本コラムでは、コールセンター事業のM&Aで押さえたいポイントや成功の法則を分かりやすく解説します。

Ⅰ. コールセンター業界の市場規模と特徴

昨今のコールセンター(電話以外の対応を行うコンタクトセンターを含む)の市場規模は、拡大傾向にあり、2021年度の市場規模は、1兆1,259億円で前年度より8%増加しました(矢野経済研究所調べ)。

これはコロナ渦でコールセンターは非対面、非接触コミュニケーションチャネルとして注目されたことや、人材不足によりコールセンター業務を外注する傾向が強まったことが原因と言われています。

 

Ⅱ.コールセンター業界のトレンド

昨今のコールセンター業界では、地方または海外に拠点を移す企業が増えています。

これは、コールセンターの運営コストはオペレーターの人件費、賃借料、採用コストが大きな割合を占めていますが、地方ではこれらのコストを首都圏エリアよりも大幅に引き下げることが可能だからです。

北海道、沖縄などでは、地方自治体の雇用対策として誘致企業に補助金を出す政策が採用されており、地域活性化の方策としても活用されています。

また最近は、電話以外での対応をする「コンタクトセンター」と呼ばれる業態も増えてきています。これは顧客の多様化したニーズに対応する方法として出てきたサービスであり、具体的にはチャットやSMSなどのテキストメッセージによるコミュニケーションが使われており、特にユーザー数の多い「LINE」による対応が注目されています。

 

Ⅲ.コールセンター事業のM&A事例

では、コールセンター事業のM&A事例にはどのようなものがあるのでしょうか?

 

◆同業による規模・エリア拡大を目的とした事例

2022年6月、株式会社ラストワンマイル(以下、「ラストワンマイル」)は、株式会社ブロードバンドコネクション(以下、「BBC」)の全株式を取得し、子会社化しています。

ラストワンマイルは、インサイドセールスセンターを活用し、電気、ガス、宅配水、インターネットなどの生活に関わるインフラサービスを、新生活を始めるタイミングに、顧客に対して販売する「ラストワンマイル事業」をメイン事業にしています。

現在、ラストワンマイルグループは池袋本社、福岡営業所の2拠点でインサイドセールスセンターを運営しており、日本の年間の平均移動世帯数約200万世帯に対し、約14%のシェア率を獲得しています。

BBCは、北海道で約125席のインサイドセールスセンターを運営しています。

このM&Aにより、ラストワンマイルはBBCのノウハウとの事業シナジー、サービス提供エリアの拡大が見込め、お互いの業容拡大を推進していく目的でM&Aが実行しています。

 

◆経営陣によるMBO(マネージメントバイアウト)事例

2022年3月、NCS&A株式会社(以下、「NCS」)は、連結子会社である株式会社フューチャー・コミュニケーションズ(以下、「フューチャー社」)の発行済全株式をフューチャー社の経営陣に譲渡しています。

NSCグループは、2021 年 4 月よりスタートした中期経営計画において「収益性の安定と向上」に向け、主力ソリューションの強化に取り組むとともに、DXを推進しております。

一方、フューチャー社は、コールセンター事業および人材派遣事業を展開しており、これまで両社のシナジーの向上を図ってきましたが、いまだ十分にその効果を発揮できていない状況にありました。

今回のM&Aは、NSCとフューチャー社のそれぞれが独自の成長戦略を柔軟に推進できるようにすることが望ましいと判断し、株式会社FCホールディングス(フューチャー社の取締役4名の出資による新設会社)、フューチャー社代表取締役及び同取締役に、NSCが保有するフューチャー社の全株式を譲渡することを決定しています。

 

◆周辺業種(人材紹介・派遣)による首都圏エリアの強化を目的とした買収事例

2021年9月、人材派遣・紹介会社の株式会社アドミック(以下、「アドミック」)は 、株式会社ビズスタッフコミュニケーションズ(以下、「ビズスタッフ」)の発行済み株式の 100%を取得し、子会社化しています。

ビズスタッフは、東京都中央区に本社を置き、コールセンター受託業務及び派遣業務をメインに行っている人材ビジネス会社です。

アドミックは、 2013 年に東京進出をし、近年ではコールセンター業務への人材依頼も徐々に増えだしている中で、ビズスタッフのM&Aにより業績の相乗効果が相当に見込めると判断し、M&Aが行われています。

 

Ⅳ.コールセンター事業のM&A・事業承継のポイント

コールセンター事業を売却するとき、「できるだけ良い条件で売却したい」という方が多いと思いますので、その良い条件を獲得するためのポイントを解説します。

まず交渉を有利に進めるためにも、買い手が見るポイントを以下で説明します。

 

【買い手が見るポイント】

①人材確保の方法
インバウンドでもアウトバウンドでも、コールセンターのオペレーターは、顧客と直接接する業務ですので、オペレーターの対応一つで会社の信用、ブランド、商品の購買が決まると言っても過言ではないでしょう。したがって、優秀な人材を確保するルート(教育機関、専門学校など)が最も重要視されます。

②顧客情報などの情報管理
コールセンター業務は、さまざまな顧客の個人情報を抱えているため、コンプライアンス違反にならないように情報管理体制の整備状況(マニュアル、教育体制など)が確認されます

③未払賃金
コールセンタ―では、人材の入れ替わりが激しいため、未払賃金が発生しやすい業種です。M&Aにあたり未払賃金に限らず人材に関する過去のトラブルなどもヒアリングされますので整理しておきましょう。

④クレーム、バグ(欠陥)対応
過去にどんなクレーム、バグがあったのか、どんな対応を行ったのか、状況説明できるようにリストを作成しておくと良いでしょう。

⑤従業員の定着率
現在人手不足が最大の経営リスクとなっているため、従業員の定着率が低い場合、原因が待遇にあるのか、労働環境にあるのか、など原因を突き止めておくと良いでしょう。

⑥社員の教育研修
質の高い従業員を確保するため、採用時における人材の評価方法、最新技術動向の教育など人材の質を確保するための取り組みが重要視されます。

 

【良い条件で売却するポイント】

①経営課題は伸びしろと考える
どのようなコールセンター事業でも何らかの経営課題を抱えています。まず売却の一番のポイントは、経営課題をネガティブなものとして捉えるのではなく、「伸びしろ」として捉えることです。つまり、自社で解決できない経営課題を解決してくれる買い手が「ベストパートナー」、イコール「良い条件を出してくれる相手」ということです。例えば、人材の採用に課題があれば、採用に強い買い手と組むべきですし、資金調達に課題があれば、資金に余裕がある買い手と組むことがM&Aで良い条件を引き出す重要なポイントとなります。

②赤字の原因を明らかにする
現在、事業が赤字、債務超過の状況にあっても、「赤字、債務超過だから売却できない」ということはありません。コールセンター事業を売却するうえで、重要なのは赤字の原因を明らかにすることです。例えば、赤字の原因が人材不足にある場合、「もし人材の豊富な買い手と組めば、適正な管理体制や営業・マーケティング力はあるので必ず黒字転換できる」などと、きちんと伸びしろを最大限反映させた説明をすべきです。さらに、赤字の原因を解消できた状態の事業計画を準備しておけば、その伸びしろは買い手から高く評価されます。

③従業員の引き抜きを目的としたM&Aに注意
M&Aのプロセスを進めるうえで、買い手から従業員リストの提出を求められる場合があります。中には従業員の引き抜きを画策する買い手もいるため、個人名などの固有名詞は伏せてください。また、M&Aは従業員に与える影響が大きく、不安を感じる従業員は多いものです。従業員の離職につながらないよう、情報漏洩には注意してください。従業員にM&Aのことを開示するタイミングは最終契約書を締結した後が望ましいといえるでしょう。

④成約後は速やかに取引先・業提提携先に対する説明会を開催
コールセンター企業の経営において、取引先・業務提携先との信頼関係は重要な要素です。買い手は既存の既存の取引先や業務提携先の反応を心配します。これらの取引先・提携先の理解を得るためにも、M&Aが完了した段階で速やかに説明会などを行い、買い手が安心できる企業であること、M&A前と運営は何も変わらないことを伝えましょう。

 

Ⅴ.まとめ

当社は、世界的に有名なREFINITIV(旧トムソンロイター)のM&A成約件数ランキングに9年連続ランクインしております。

また、豊富な譲り受けニーズを保有しており、2005年の設立(M&A業界では老舗)以来、蓄積してきた豊富な譲り受け希望企業のニーズを保有しています。

事業の今後の成長性を考慮した事業計画作成による譲渡価額最大化や、補助金・税制の申請支援、M&A後の相続税対策、資産運用などのご相談も承ります。

M&Aアドバイザリー会社では珍しく弊社には営業ノルマがないため、弊社の都合でM&A実行を急がせることはなく、ベストなタイミング・譲渡候補先をご提案いたします。

まずは、M&A・事業承継に関する事例やお話だけ聞いてみたいという方もお気軽にご連絡くださいませ。

 

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売り手経営者のM&Aによるメリット

Ⅰ.経営者個人のメリット

1. 創業者利潤の獲得
M&A(株式譲渡)による税金は約20%で、役員給与、賞与、贈与・相続による税率よりも大きなメリットがあります。手取現金を多く残したいということであれば、親族内承継よりもM&Aが一般的に有利です。

2.個人保証・担保の解除
買い手は一般的に売り手企業よりも規模が大きく、その分金融機関からの与信が大きくなります。したがってM&Aのタイミングで経営者の個人保証・担保は解除されます(借入金の一括返済または保証の引継ぎ)。親族内承継では、前の経営者の保証が解除されないケースや承継者に保証を新たに求めたり、新旧両経営者に保証が残るケースもあります。

Ⅱ.会社のメリット

1.グループ経営による財務、人材のバックアップ、ブランディングによる採用
大手企業のグループに統合することによりブランド力、信用力が向上し、金融機関から資金調達力、人材採用力、取引先との交渉力などが強化されるため、このグループ力を生かして業績が急上昇します。株式上場の夢も実現可能性が高くなります。

2.従業員の雇用継続とモチベーションの向上
中小企業は一般的にオーナー経営になっている場合が多いため、従業員の視点から処遇の改善、個人のやりがい(能力の向上、キャリアアップ)が見込めない状態になっている場合も少なくありません。グループ経営により、業績が向上し、個人経営から組織経営に脱皮し、個人のモチベーション、やりがい、生きがい、処遇などが確実に向上します。

 

本記事の執筆者

かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社_代表取締役_佐武伸

かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社
代表取締役
佐武 伸

 

兵庫県宝塚市出身。関西学院大学商学部卒。米国サンダーバード国際経営大学院卒(MBA)。
朝日監査法人(現あずさ監査法人)にて上場企業数十社の会計監査、システム監査、株式公開準備(IPO)プロジェクト等に参画。
その後、奥田公認会計士事務所で中堅・中小企業の国内・国外税務戦略立案、事業承継対策、IPO等の幅広いコンサルティング業務に従事。専門は、M&Aコンサルティング、企業評価、会計・税務コンサルティング。
2005年にかえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社を設立、代表取締役に就任。
元中央大学ビジネススクール客員教授(M&A戦略)。

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