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弁当、総菜などの食品宅配業界では、昨今、女性の社会進出による家庭内調理時間の減少、老齢人口の増加に伴って、市場が拡大しています。
また、外食離れや家庭内での内食回帰の風潮が強まっているため、業界各社では、店内販売だけでなく、家庭やオフィス、工場などの事業所へ向けた食品宅配サービスに積極的に参入しています。
このように食品宅配業界では、成長性も見込まれていますが、少子高齢化に伴い市場は長期的には縮小傾向にあり、生き残りをかけた規模拡大、エリア拡大を目的にしたM&Aが活発に行われています。
そこで、本コラムでは、食品宅配業界のM&Aで押さえたいポイントや成功の法則を分かりやすく解説します。
目次
家庭内で調理した料理をする「内食」、飲食店など飲食する「外食」に対して、「中食」は弁当や総菜などを家庭やオフィス・工場など事業所へ宅配し、食事するスタイル(以下、「食品宅配市場」という)が含まれます。
食品宅配市場には、高齢者や育児世帯を対象とした「在宅配食サービス」、介護施設や老人ホームなどに総菜を宅配する「総菜宅配サービス」などがあります。
2020年の食品宅配市場は前年度比14.3%増の2兆4,969億円、2025年度は2020年度比17.4%増の2兆9,321億円と予想されています(矢野経済研究所、2023年7月調査参考)。
2020年3月以降、新型コロナ渦の影響により、消費者の新たなニーズに対応したカテゴリーも急激に伸びてきています。昨今、内食、中食、外食の垣根はなくなりつつあり、調理済み冷凍総菜、イートイン、フードデリバリーなど、それぞれの間に位置する業態や商品が増えてきています。
また、大手宅配サービスのウーバーイーツの加盟店数は、2021年5月は10万店でしたが、2022年1月には15万店まで増加してきています。
今後の動向としては、高齢者向けの宅配サービスや、介護施設、老人ホームなどの高齢者施設への食材供給の拡大が見込まれています。
高齢者世帯数の増加や医療・介護の在宅化が進行したことで、弁当や総菜の宅配が栄養管理や在宅の見守りの役割を担うことが期待されていますので、今後この分野での新規参入やM&Aが増加することが予想されています。
では、食品宅配会社のM&A事例にはどのようなものがあるのでしょうか?
◆食品総合大手企業による規模拡大、新事業の拡充を目的とした事例
2022年8月、ヤマエグループホールディングス株式会社(以下、「ヤマエグループ」という)は、日本ピザハット・コーポレーション株式会社(以下、「日本ピザハット」という)の全株式を取得し、子会社化しています。
ヤマエグループは、「食」と「住」を事業のベースとしつつ新たなステージへ進化するため、“M&Aによる水平・垂直、新規事業分野への進出を加速”を基本戦略の一つの柱として掲げ、事業に取り組んでいます。
ピザハットは、世界最大級の宅配ピザチェーンであり、日本ピザハットは日本におけるピザハットのフランチャイザーとして国内で約500店舗を展開・運営しています。
このM&Aは、ヤマエグループとして新たな事業領域であるBtoC事業に挑戦するとともに、「流通のトータルサポート」としてサプライチェーン全体の発展に寄与することも目的として行われています。
◆コンビニ大手による米国での食品宅配業進出を目的としたM&A事例
セブンイレブンが、米国でレストランの料理を配達する創業4年のフードデリバリー(料理宅配)スタートアップ、スキップカート(Skipcart)を買収しています。
現在、セブンイレブンでは、ドアダッシュの配達員が、セブンイレブンのアプリを使って宅配用の食品や飲料を購入したり、ドアダッシュのアプリを通じて買い物をしたセブンイレブンの顧客に注文品を届けているが、この協業が変わる可能性があるといわれています。
セブンイレブンは独自の配送網を持つことで、ドアダッシュへの依存度を下げることができる可能性があります。
2020年、テキサス州に拠点を置くSkipcartは、ルクセンブルクに拠点を置く投資会社Sustainable Growth Managementから資金調達を行った際、6,500万ドルと評価されていました。
セブンイレブンは、2021年に200億ドルを投じて約4,000店のコンビニエンスストアSpeedwayを買収しています。このM&Aにより、セブンイレブンは北米で約14,000店舗を展開することになりましたが、セブンイレブンがSkipcartのようなソフトウェアと物流の新興企業をM&Aするのは異例といわれています。
◆水産最大手によるインターネット宅配事業獲得を目的とした買収事例
マルハニチロ株式会社(以下、「マルハニチロ」という)は、“健康的な食生活を手軽に続けられるための食事”を自社で開発・製造し、主にインターネットサイトを通じたサブスクリプションモデルで販売するナッシュ株式会社(以下、「ナッシュ」という)に対し、2022年1月に出資を行っています。
ナッシュは「社会全体を健康に」という企業理念のもと、専属シェフ監修による“手軽でおいしく、健康的な食事”を自社製造し、インターネットを中心に販売しています。糖質・塩分を徹底管理した冷凍弁当のサブスクリプションサービスを展開しており、生活習慣病の予防・改善をめざす方や、負担の少ないダイエットを目的とする方、調理に時間をかけられない方など幅広い層から支持されています。
マルハニチロは2020年から水産物を皮切りに、畜肉、農産品などナッシュの企業理念・コンセプトに合致する食材提供を通じて協業を進めてきています。
このたびの出資により、食材供給面での一層の関係強化はもとより、両社の強みを融合することにより、さらなるサービス向上や新たな価値提供の可能性が広がることが期待されています。さらにインターネットマーケティングの領域において、豊富な技術とノウハウを有するナッシュとの協働も予定しており、マルハニチロにとってオープンイノベーションの観点からも新たなサービスの創造が期待されています。
食品宅配会社を売却するとき、「できるだけ良い条件で売却したい」という方が多いと思いますので、その良い条件を獲得するためのポイントを解説します。
まず交渉を有利に進めるためにも、買い手が見るポイントを以下で説明します。
【買い手が見るポイント】
①食品衛生法
食材に調理を加える場合は、飲食店と同様、「食品衛生法」に基づく営業許可が必要になります。調理加工しない場合でも、取り扱う食材に応じて、乳類販売業、食肉販売業、魚介類販売業など、販売業としての営業許可が必要となります。
また、自社で配送を行う場合は、特定貨物自動車運送業として、運輸支局長への届出が必要です。なお、都道府県の条例によっても規制がある場合があるので、事前に自治体にも確認をしておく必要があり、まずはこれらの業法との順法性が問われます。
②価格戦略と利益率
食品宅配業界は価格競争が激しい場合があり、適切な価格戦略の設計と利益率の維持が課題です。過度な価格競争によって収益が圧迫されることがありますので同業者との差別化戦略などが検討されます。
③顧客満足度とリピート率
顧客満足度を維持し、リピート購買率を向上させることが極めて重要なため、適切なカスタマーサポートや返品・交換ポリシーの適切な設計が必要となります。
④品質管理と食品安全
食品の宅配は品質管理と食品安全に関する高い基準を満たさなければなりません。商品の鮮度維持や適切な温度管理、衛生規格の遵守などが重要な課題となります。
⑤最適な配達ルートとタイミング
配達の効率化は重要です。適切な配達ルートやタイミングを設計することで、効率的な配達が実現できますので社内での取り組みが評価されます。
⑥クレーム、バグ(欠陥)対応
過去にどんなクレーム、バグがあったのか、どんな対応を行ったのか、状況説明できるようにリストを作成しておくと良いでしょう。
⑦従業員の定着率
現在人手不足が最大の経営リスクとなっているため、従業員の定着率が低い場合、原因が待遇にあるのか、労働環境にあるのか、など原因を突き止めておくと良いでしょう。
⑧社員の教育研修
質の高い従業員を確保するため、採用時における人材の評価方法、最新技術動向の教育など人材の質を確保するための取り組みが重要視されます。
【良い条件で売却するポイント】
①経営課題は伸びしろと考える
どのような食品宅配会社でも何らかの経営課題を抱えています。まず売却の一番のポイントは、経営課題をネガティブなものとして捉えるのではなく、「伸びしろ」として捉えることです。つまり、自社で解決できない経営課題を解決してくれる買い手が「ベストパートナー」、イコール「良い条件を出してくれる相手」ということです。例えば、人材の採用に課題があれば、採用に強い買い手と組むべきですし、資金調達に課題があれば、資金に余裕がある買い手と組むことがM&Aで良い条件を引き出す重要なポイントとなります。
②赤字の原因を明らかにする
現在、事業が赤字、債務超過の状況にあっても、「赤字、債務超過だから売却できない」ということはありません。食品宅配会社を売却するうえで、重要なのは赤字の原因を明らかにすることです。例えば、赤字の原因が人材不足にある場合、「もし人材の豊富な買い手と組めば、適正な管理体制や営業・マーケティング力はあるので必ず黒字転換できる」などと、きちんと伸びしろを最大限反映させた説明をすべきです。さらに、赤字の原因を解消できた状態の事業計画を準備しておけば、その伸びしろは買い手から高く評価されます。
③従業員の引き抜きを目的としたM&Aに注意
M&Aのプロセスを進めるうえで、買い手から従業員リストの提出を求められる場合があります。中には従業員の引き抜きを画策する買い手もいるため、個人名などの固有名詞は伏せてください。また、M&Aは従業員に与える影響が大きく、不安を感じる従業員は多いものです。従業員の離職につながらないよう、情報漏洩には注意してください。従業員にM&Aのことを開示するタイミングは最終契約書を締結した後が望ましいといえるでしょう。
④成約後は速やかに取引先・業提提携先に対する説明会を開催
食品宅配会社の経営において、取引先・業務提携先との信頼関係は重要な要素です。買い手は既存の既存の取引先や業務提携先の反応を心配します。これらの取引先・提携先の理解を得るためにも、M&Aが完了した段階で速やかに説明会などを行い、買い手が安心できる企業であること、M&A前と運営は何も変わらないことを伝えましょう。
当社は、世界的に有名なREFINITIV(旧トムソンロイター)のM&A成約件数ランキングに9年連続ランクインしております。
また、豊富な譲り受けニーズを保有しており、2005年の設立(M&A業界では老舗)以来、蓄積してきた豊富な譲り受け希望企業のニーズを保有しています。
事業の今後の成長性を考慮した事業計画作成による譲渡価額最大化や、補助金・税制の申請支援、M&A後の相続税対策、資産運用などのご相談も承ります。
M&Aアドバイザリー会社では珍しく弊社には営業ノルマがないため、弊社の都合でM&A実行を急がせることはなく、ベストなタイミング・譲渡候補先をご提案いたします。
まずは、M&A・事業承継に関する事例やお話だけ聞いてみたいという方もお気軽にご連絡くださいませ。
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まずは、M&A・事業承継に関する事例やお話だけ聞いてみたいという方もお気軽にご連絡くださいませ。
売り手経営者のM&Aによるメリット
Ⅰ.経営者個人のメリット
1. 創業者利潤の獲得
M&A(株式譲渡)による税金は約20%で、役員給与、賞与、贈与・相続による税率よりも大きなメリットがあります。手取現金を多く残したいということであれば、親族内承継よりもM&Aが一般的に有利です。
2.個人保証・担保の解除
買い手は一般的に売り手企業よりも規模が大きく、その分金融機関からの与信が大きくなります。したがってM&Aのタイミングで経営者の個人保証・担保は解除されます(借入金の一括返済または保証の引継ぎ)。親族内承継では、前の経営者の保証が解除されないケースや承継者に保証を新たに求めたり、新旧両経営者に保証が残るケースもあります。
Ⅱ.会社のメリット
1.グループ経営による財務、人材のバックアップ、ブランディングによる採用
大手企業のグループに統合することによりブランド力、信用力が向上し、金融機関から資金調達力、人材採用力、取引先との交渉力などが強化されるため、このグループ力を生かして業績が急上昇します。株式上場の夢も実現可能性が高くなります。
2.従業員の雇用継続とモチベーションの向上
中小企業は一般的にオーナー経営になっている場合が多いため、従業員の視点から処遇の改善、個人のやりがい(能力の向上、キャリアアップ)が見込めない状態になっている場合も少なくありません。グループ経営により、業績が向上し、個人経営から組織経営に脱皮し、個人のモチベーション、やりがい、生きがい、処遇などが確実に向上します。
かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社
代表取締役
佐武 伸
兵庫県宝塚市出身。関西学院大学商学部卒。米国サンダーバード国際経営大学院卒(MBA)。
朝日監査法人(現あずさ監査法人)にて上場企業数十社の会計監査、システム監査、株式公開準備(IPO)プロジェクト等に参画。
その後、奥田公認会計士事務所で中堅・中小企業の国内・国外税務戦略立案、事業承継対策、IPO等の幅広いコンサルティング業務に従事。専門は、M&Aコンサルティング、企業評価、会計・税務コンサルティング。
2005年にかえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社を設立、代表取締役に就任。
元中央大学ビジネススクール客員教授(M&A戦略)。
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