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EC業界のM&A | 良い相手と良い条件で成約するポイント

業種別M&A

ネット通販のノウハウを持つ人材の不足、AIやメタバースなどのトレンド技術、事業承継越境ECなどに対応する戦略として、現在、EC業界で中堅・中小企業を中心にM&Aが活発に行われています。

これは、M&Aによるグループ化により、資金調達力、人材獲得力、ブランド力、トレンド技術の向上などが売り手企業、買い手企業双方に与えるメリットが大きいからです。

そこで、本コラムでは、EC企業のM&Aで押さえたいポイントや成功の法則を分かりやすく解説します。

Ⅰ. EC業界の市場規模と特徴

EC業界における現在の市場規模は年々伸びてきていますが、コロナ渦の影響で大きな変動がありました。

経済産業省によりますと、日本国内のEC(BtoC)の市場規模は、2019年は約19.4億円でしたが、2020年はコロナの影響で旅行サービスが低迷してサービス系分野の市場規模が縮小した影響もあり、市場規模は約19.3億円と微減となりました。

物販系は2019年から2020年の間に21.7%増で、EC化率も6.76%から8.08%へと伸長しました。一方でサービス系分野は36.5%のマイナスと大幅に減少しました。

現在はコロナ渦の影響は少なくなってきていますが、在宅で商品を購入するという流れは残っています。

今後、人の流れが戻ればサービス分野も回復し、同時に物販分野も伸び続け、EC化比率も順調に推移することが予想されています。

 

Ⅱ.EC業界のトレンド

EC業界の最近のトレンドとしては、主に以下の3つが挙げられます。

1.O2OからOMOへ

O2O(Online to Offline) は、オンラインで得られた情報をオフラインでも活用していくという考え方です。例えば、オンラインで付与したポイントなどをオフライン店舗で使用すること、などです。

このO2O をさらに発展させた形態が、OMO(Online Merges with Offline)です。これは、オンラインとオフラインを融合するやり方です。オフラインでの購買データを活用してオンラインでレコメンドしたり、オンラインでの閲覧データを分析して、オフライン店舗で商品レコメンドをしたりと、オンラインとオフラインが垣根なく、消費者にますます便利さを体験してもらう試みです。

2.AIの活用

これまでのネットショッピングでは、検索エンジンで検索をかけ、欲しいものを探し、比較検討するといったプロセスを踏んでいました。しかし、レビューの発達やSNS の普及により、「検索をしてからものを探す」機会はどんどん減ってきています。

今後は、ChatGPTやBing AIなどが、好みの傾向や、欲しいものの特徴を伝えなくても、消費者の購買履歴や行動データをもとに、世界中のEC サイトから心躍る商品を探し出してきてくれます。このAI 革命を支えるのが、5G通信です。

2020 年に5G 通信が始まり、より大容量のデータ通信が可能になりました。たとえば、売り場全体をリアルタイム動画で追いかけることにより、店舗に足を運ばなくても、まるで店舗にいるかのような購買体験ができます。

このように買い物に必要な情報がオンラインとオフラインで垣根なく瞬時に行き交い、消費者の利便性がますます高まっていく時代になっていくでしょう。

3.越境ECの拡大

越境ECとは、海外の消費者に向けてEC事業を展開することで、現在、順調に成長してきています。2020年の日本の越境EC市場規模は3,416億円でした。中国や米国に比べると日本の越境EC市場はまだまだ小さいですが、ポテンシャルは高いと言えます。

今後の越境EC市場の年平均成長率は約 30%という推計もあり、世界の EC 市場規模の拡大を上回るペースで日本の越境 EC の市場規模は拡大すると期待されています。

 

Ⅲ.EC企業のM&A事例

では、EC企業のM&A事例にはどのようなものがあるのでしょうか?

 

◆異業種による事業分野の拡充を目的とした事例

2022年3月、株式会社オーイズミ(以下、「オーイズミ」)は、取締役会において、バブルスター株式会社(以下、「バブルスター」)の発行済全株式100株を取得し、子会社化することを敬継しています。

オーイズミは、遊技場設備機器、太陽光発電、不動産賃貸、ゲームソフト、酒類醸造、農産物加工食品など多岐にわたる事業を行っています。

バブルスターは、「食べたものから体は創られる」を企業理念とし、低糖質食品を軸とした良質な健康食品を、自社で開発・製造・販売を一貫して行い、ECサイトにおいてブランド、商品を展開しています。

今回のM&Aは、オーイズミの更なる事業分野の拡充と両者のシナジー効果を追求する目的で実行されています。

 

◆越境EC事業強化目的のM&A事例

2022年3月、株式会社インターファクトリー(以下、「インターファクトリー」)は、株式会社ジグザグ(以下、「ジグザグ」))と資本業務提携契約を締結しています。

インターファクトリーはこれまで、EC事業者の国内⾃社ECサイトの運営を⽀援してきています。

ジグザグは、海外販売を始めたいすべての事業者に対して、多⾔語対応・海外決済・海外配送までを⼀気通貫で提供する越境EC対応サービスを提供しています。

今回のM&Aは、2社のシステム⾯、営業⾯において連携することにより、既存顧客であるEC事業者へのグローバル化および今後国内EC・越境EC事業を強化されるEC事業者の事業を⽀援する目的で実行されています

 

◆異業種による取扱い商品の拡充、ネット通販ノウハウの獲得を目的とした買収事例

2022年3月、スーパー・ホームセンターなどの小売事業、建設事業、貿易事業を手掛ける綿半ホールディングス株式会社(以下、「綿半」)は、子会社を通じて、大洋株式会社(以下、「大洋」)の全株式を取得し、子会社化しています。

大洋は、1926年に製材業として創業し、現在では、収納棚をはじめとする組立家具の製造、卸売、インターネット通販事業を行っている家具メーカーです。

インターネット通販サイト「オーダー収納スタイル」は、組立家具の販売、法人向けにオフィス収納棚・店舗什器等のオーダーも受けており、顧客一人ひとりのニーズに寄添った家具を自社工場で製造しています。

今回のM&Aは、両社の長年培った経営資源や強みを相互活用することにより、取扱商品の拡充、インターネット通販のノウハウ共有を図り、グループの更なる企業価値の向上を目的として実行されています。

 

Ⅳ.EC企業のM&A・事業承継のポイント

EC企業・事業を売却するとき、「できるだけ良い条件で売却したい」という方が多いと思いますので、その良い条件を獲得するためのポイントを解説します。

まず交渉を有利に進めるためにも、買い手が見るポイントを以下で説明します。

 

【買い手が見るポイント】

①集客・プロモーション
EC企業の経営課題の中で、「集客・プロモーション」を一番の課題として挙げている事業者が多いといわれています。SEO、WEB広告の運用、SNS運用、アクセス解析などアクセス数(集客数)、CVR(購入率)、客単価を上げるために必要なノウハウなどが組織として蓄積されているか、が大事なポイントとなります。

②人材獲得力
他の多くの業界と同様に、EC業界も人材不足が継続しています。また、この業界は勢力図の変化が激しく、技術革新のスピードも速いので、商品開発・企画力、デジタルマーケティングのノウハウを持っている人材の転職や独立が多いという特徴があります。そのため、採用ルートの独自性(大学や大学院などとの提携)、従業員のエンゲージメントの向上など人材の維持と獲得のための独自性などが高く評価されます。

③業務の管理
EC会社の仕事内容は、商品企画、仕入、ECサイト制作・更新、マーケティングなどのフロント業務から商品の検品、梱包、発送、入金確認、アフターサービスなどのバックエンド業務まで広範囲です。特に昨今は適正な発注管理、在庫管理、物流管理の巧拙が企業の命運を分けるといわれています。コスト面でも大きな影響ができますので、適切な業務管理が行われているか否か精査されます。

④クレーム、バグ(欠陥)対応
過去にどんなクレーム、バグがあったのか、どんな対応を行ったのか、状況説明できるようにリストを作成しておくと良いでしょう。

⑤従業員の定着率
現在人手不足が最大の経営リスクとなっているため、従業員の定着率が低い場合、原因が待遇にあるのか、労働環境にあるのか、など原因を突き止めておくと良いでしょう。

⑥社員の教育研修
質の高い従業員を確保するため、採用時における人材の評価方法、最新技術動向の教育など人材の質を確保するための取り組みが重要視されます。

 

⑦リピート集客
EC事業を展開するうえで新規集客ももちろん大事ですが、売上を安定させるためにもリピート集客が注目されます。クーポンの配布、メルマガ・DMの発信、アフターサポートなどが徹底されているか、確認が必要です。

 

【良い条件で売却するポイント】

①経営課題は伸びしろと考える
どのようなEC企業でも何らかの経営課題を抱えています。まず売却の一番のポイントは、経営課題をネガティブなものとして捉えるのではなく、「伸びしろ」として捉えることです。つまり、自社で解決できない経営課題を解決してくれる買い手が「ベストパートナー」、イコール「良い条件を出してくれる相手」ということです。例えば、人材の採用に課題があれば、採用に強い買い手と組むべきですし、資金調達に課題があれば、資金に余裕がある買い手と組むことがM&Aで良い条件を引き出す重要なポイントとなります。

②赤字の原因を明らかにする
現在、事業が赤字、債務超過の状況にあっても、「赤字、債務超過だから売却できない」ということはありません。EC企業を売却するうえで、重要なのは赤字の原因を明らかにすることです。例えば、赤字の原因が人材不足にある場合、「もし人材の豊富な買い手と組めば、潜在的な商品開発力やデジタルマーケティング力はあるので必ず黒字転換できる」などと、きちんと伸びしろを最大限反映させた説明をすべきです。さらに、赤字の原因を解消できた状態の事業計画を準備しておけば、その伸びしろは買い手から高く評価されます。

③従業員の引き抜きを目的としたM&Aに注意
M&Aのプロセスを進めるうえで、買い手から従業員リストの提出を求められる場合があります。中には従業員の引き抜きを画策する買い手もいるため、個人名などの固有名詞は伏せてください。また、M&Aは従業員に与える影響が大きく、不安を感じる従業員は多いものです。従業員の離職につながらないよう、情報漏洩には注意してください。従業員にM&Aのことを開示するタイミングは最終契約書を締結した後が望ましいといえるでしょう。

④成約後は速やかに取引先・業提提携先に対する説明会を開催
EC企業の経営において、取引先・業務提携先との信頼関係は重要な要素です。買い手は既存の既存の取引先や業務提携先の反応を心配します。これらの取引先・提携先の理解を得るためにも、M&Aが完了した段階で速やかに説明会などを行い、買い手が安心できる企業であること、M&A前と運営は何も変わらないことを伝えましょう。

 

Ⅴ.まとめ

当社は、世界的に有名なREFINITIV(旧トムソンロイター)のM&A成約件数ランキングに9年連続ランクインしております。

また、豊富な譲り受けニーズを保有しており、2005年の設立(M&A業界では老舗)以来、蓄積してきた豊富な譲り受け希望企業のニーズを保有しています。

事業の今後の成長性を考慮した事業計画作成による譲渡価額最大化や、補助金・税制の申請支援、M&A後の相続税対策、資産運用などのご相談も承ります。

M&Aアドバイザリー会社では珍しく弊社には営業ノルマがないため、弊社の都合でM&A実行を急がせることはなく、ベストなタイミング・譲渡候補先をご提案いたします。

まずは、M&A・事業承継に関する事例やお話だけ聞いてみたいという方もお気軽にご連絡くださいませ。

 

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売り手経営者のM&Aによるメリット

Ⅰ.経営者個人のメリット

1. 創業者利潤の獲得
M&A(株式譲渡)による税金は約20%で、役員給与、賞与、贈与・相続による税率よりも大きなメリットがあります。手取現金を多く残したいということであれば、親族内承継よりもM&Aが一般的に有利です。

2.個人保証・担保の解除
買い手は一般的に売り手企業よりも規模が大きく、その分金融機関からの与信が大きくなります。したがってM&Aのタイミングで経営者の個人保証・担保は解除されます(借入金の一括返済または保証の引継ぎ)。親族内承継では、前の経営者の保証が解除されないケースや承継者に保証を新たに求めたり、新旧両経営者に保証が残るケースもあります。

Ⅱ.会社のメリット

1.グループ経営による財務、人材のバックアップ、ブランディングによる採用
大手企業のグループに統合することによりブランド力、信用力が向上し、金融機関から資金調達力、人材採用力、取引先との交渉力などが強化されるため、このグループ力を生かして業績が急上昇します。株式上場の夢も実現可能性が高くなります。

2.従業員の雇用継続とモチベーションの向上
中小企業は一般的にオーナー経営になっている場合が多いため、従業員の視点から処遇の改善、個人のやりがい(能力の向上、キャリアアップ)が見込めない状態になっている場合も少なくありません。グループ経営により、業績が向上し、個人経営から組織経営に脱皮し、個人のモチベーション、やりがい、生きがい、処遇などが確実に向上します。

 

本記事の執筆者

かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社_代表取締役_佐武伸

かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社
代表取締役
佐武 伸

 

兵庫県宝塚市出身。関西学院大学商学部卒。米国サンダーバード国際経営大学院卒(MBA)。
朝日監査法人(現あずさ監査法人)にて上場企業数十社の会計監査、システム監査、株式公開準備(IPO)プロジェクト等に参画。
その後、奥田公認会計士事務所で中堅・中小企業の国内・国外税務戦略立案、事業承継対策、IPO等の幅広いコンサルティング業務に従事。専門は、M&Aコンサルティング、企業評価、会計・税務コンサルティング。
2005年にかえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社を設立、代表取締役に就任。
元中央大学ビジネススクール客員教授(M&A戦略)。

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