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ゲーム制作会社のM&A | 良い相手と良い条件で成約するポイント

業種別M&A

少子化によるマーケット縮小、アプリ開発人材などの人手不足、仮想通貨やメタバースなどトレンド技術、事業承継問題、eスポーツなどに対応する戦略として、現在、ゲーム制作業界で中堅・中小企業を中心にM&Aが活発に行われています。

これは、M&Aによるグループ化により、資金調達力、人材獲得力、ブランド力、トレンド技術の向上などが売り手企業、買い手企業双方に与えるメリットが大きいからです。

そこで、本コラムでは、ゲーム制作会社のM&Aで押さえたいポイントや成功の法則を分かりやすく解説します。

Ⅰ. ゲーム制作業界の市場規模と特徴

国内のゲームコンテンツ市場は、コロナ感染渦による巣ごもり需要の影響で2019年から2020年にかけて2割増加し、2兆円となりました。2021年は前年比微減となりましたが、2兆円の規模を維持しています。

このコロナ渦による巣ごもり需要は一時的な特需で終わることなく、世界的にゲームコンテンツの需要を拡大、定着させたといわれています。

2021年の国内ゲーム人口は5,535万人ですが、一人当たりのゲームにかける金額はやや下がっています。

2021年のゲーム人口は、スマホのアプリゲームユーザーで6.4%増、PCゲームユーザーも4.8%増加し、PCのみでプレーする人口は約20%増と大幅に伸びています。

これは若者を中心にeスポーツ系のタイトルや、F2P(Free-to-play。プレー自体は無料で、ゲームに使う武器やアイテムなどの追加アイテムが有料になっているゲーム)でマルチデバイス対応のタイトルが人気を集めた影響と言われています。

 

Ⅱ.ゲーム制作業界のトレンド

先述したように、国内のゲームコンテンツの市場規模は2兆円ですが、オンラインプラットフォームは1兆6414億円と大半を占めています。そのうちゲームアプリは1兆3001億円で79.2%を占め、国内ゲーム市場のけん引役となっています。

ゲームアプリ市場はここ数年、ランキング上位のタイトルがほぼ固定され、変化が乏しくなっていましたが、2021年は『ウマ娘 プリティーダービー』が大ヒットし、この状況に変化をもたらしました。

このように、国内ゲーム市場のけん引役であるゲームアプリ市場の活性化には、特定のゲームがランキング上位に固定化することを打破し、新規参入企業がどんどん出てくる業界にする必要があります。

また、例えば、『ポケモンGO』が位置情報とAR技術で新たなゲーム体験を想像して大ヒットになったように、新たな体験ができ、インフルエンサーに遡及することができるイノベーティブなゲームの登場が求められています。

(参照:日経クロストレンド「世界ゲーム市場は約22億円に国内市場はゲームアプリが1.3兆円」)

 

Ⅲ.ゲーム制作会社のM&A事例

では、ゲーム制作会社のM&A事例にはどのようなものがあるのでしょうか?

 

◆同業によるタイトルのラインナップの強化を目的とした事例

2023年3月、GFA株式会社は取締役会において、クレーンゲームジャパン株式会社の全株式取得に関し、株主との間で株式譲渡契約を締結することを決議しています。

クレーンゲームジャパン社は、オンラインエンターテイメントサービスの企画・開発・運営を行うインターネット企業で、オンラインクレーンゲームの企画開発力に強みを持っており、世界累計 250 万ダウンロードを誇る「クレマス」を中心に多彩な企画開発実績を有しています。

一方でGFAグループは、ゲーム事業においてレーシングゲームアプリをリリースするとともに、e スポーツ大会等イベントを実施しています。また、子会社である株式会社 CAMELOT を舞台とした「META CAMELOT」というデジタルツインのメタバース空間の運営もしています。

クレーンゲームジャパン社が経営するオンラインクレーンゲームの市場規模は国内 200 億円、海外においては 300 億円と言われ、今後も増加することが予想されております。

今回のM&Aは、ゲーム事業の強化の一環として、今後市場規模が拡大すると見込まれるオンラインクレーンゲームを第 2 のゲームタイトルとしてラインナップに加えると共に、将来的に「META CAMELOT」というメタバース空間に、オンラインクレーンゲームを融合させることで場所にとらわれないエンタテインメント体験を提供し、国内のみならずグローバルなユーザーの獲得を目指しています。

 

◆同業による新エリア強化の事例

2023年2月、ITサービスで人と社会の価値を創出する株式会社テンダ(以下「テンダ」)は、株式会社アールフォース・エンターテインメント(以下、「アールフォース社」)の全株式を取得し、子会社化することについて決議し、株式譲渡契約を締結しています。

テンダは、時代に合ったワークスタイル変革ソリューションを提供し続けるという2023年5月期の経営方針のもと、BtoC領域を管掌する「コンシューマー事業」においては、市場及び顧客軸にフォーカスした事業に取り組むために、戦略的な推進体制の強化を目指しています。

アールフォース社は、家庭用ゲーム機、スマートフォンゲームなどの様々なプラットフォームを通して、大手パブリッシャーに対してゲームの企画から開発、運用までをワンストップかつ高品質で提供してきた実績が多数あります。特にBGM及び3DCGアニメーションについては、専門チームによる制作に強みを持っており、多彩な開発実績に裏付けされた継続取引の多いゲームソフトの企画開発企業です。

今回のM&Aは、アールフォース社の技術力や継続取引の実績がテンダに連係されることにより、これまで培ってきたオンラインゲーム開発運用におけるノウハウ及び2022年の有限会社熱中日和の買収を踏まえて、「ゲームパブリッシャーからの開発受託」、「オンラインゲームのセカンダリビジネス」、「クリエイター人財ビジネス」を含めたコンシューマー事業のビジネスモデル及び推進体制の強化の加速につながると判断し、アールフォース社の株式取得を実行しています。

 

◆同業による収益機会の拡大、人材リソースの保管、海外展開を目的とした買収事例

2022年11月、株式会社エクストリーム(以下、「エクストリーム」)は取締役会において、エス・エー・エス株式会社(以下、「エス・エー・エス」))の発行済株式 51.3%を取得し、子会社化することを決議しています。

エクストリームは、クリエイター・エンジニアのプロダクションカンパニーとして、ゲーム・デジタルコンテンツなどの企画・開発業務を行っております。具体的には、技術社員が顧客企業のプロジェクトに参画(常駐)し、技術ソリューションを提供する「デジタル人材事業」、顧客企業からゲーム・WEB サイト・各種ソフトウエアなどの開発案件を受注し納品する「受託開発事業」、ゲームタイトル・キャラクターなどの自社保有知的財産を活用し収益化する「コンテンツプロパティ事業」を展開しています。

エス・エー・エスは、エンターテイメント事業及びシステムソリューション事業の2事業を展開する受託開発会社であり、エンターテイメント事業におけるゲーム等の受託開発事業においては、大手ゲームパブリッシャーを主な取引先として 40 年を超える取引実績があり、業界内でも老舗として名が通った企業です。

今回のM&Aは、デジタル人材事業を通じて顧客から相談を受けるゲーム等の受託開発案件のエス・エー・エスとの連携による営業力と、エス・エー・エスの開発力の一体化による収益機会の拡大、人的交流(出向等)によるエス・エー・エスの課題である人的開発リソースの補完、エクストリームの海外取引ネットワークを生かし、今後アジア地域などで商圏が拡大されると見込まれるアミューズメント施設向けゲーム筐体市場への積極参入など、両社の企業価値向上につながる様々な要素が大いに見込まれるものと判断し、子会社化を決議しています。

 

Ⅳ.ゲーム制作会社のM&A・事業承継のポイント

ゲーム制作会社・事業を売却するとき、「できるだけ良い条件で売却したい」という方が多いと思いますので、その良い条件を獲得するためのポイントを解説します。

まず交渉を有利に進めるためにも、買い手が見るポイントを以下で説明します。

【買い手が見るポイント】

①人気アプリの開発実績
ゲーム業界で事業を継続的に成長させていくためには、人気アプリの開発力があるか否かが最重要ポイントになります。オンラインゲームの発展は、「App Store」を運営するAppleや「モバゲー」のディー・エヌ・エーなどのプラットファーマーの存在や人気タイトルの開発が大きなカギとなっているので社内人材の開発力が重要視されます。

 

②人材獲得力
他の多くの業界と同様に、ゲーム業界も人材不足が継続しています。また、この業界は勢力図の変化が激しく、技術革新のスピードも速いので、技術力のある人材の転職や独立が多いという特徴があります。そのため、採用ルートの独自性(専門学校や大学などとの提携)、従業員のエンゲージメントの向上など人材の維持と獲得のための独自性などが高く評価されます。

 

③プロジェクト管理
ゲーム開発会社の経営管理においては、プロジェクト管理が重要です。この業界は人件費を中心に固定費の割合が高く、プロジェクトの遅延は、赤字に直結するからです。個人の趣味から起業している人も多く、制作現場では採算よりも、作品へのこだわりが重視されており、スケジュールは二の次とならないような適正な管理体制が問われます。

 

④クレーム、バグ(欠陥)対応
過去にどんなクレーム、バグがあったのか、どんな対応を行ったのか、状況説明できるようにリストを作成しておくと良いでしょう。

 

⑤従業員の定着率
現在人手不足が最大の経営リスクとなっているため、従業員の定着率が低い場合、原因が待遇にあるのか、労働環境にあるのか、など原因を突き止めておくと良いでしょう。

 

⑥社員の教育研修
質の高い従業員を確保するため、採用時における人材の評価方法、最新技術動向の教育など人材の質を確保するための取り組みが重要視されます。

 

⑦タイトルの販売・回収期間の確認
コンシューマータイトル(家庭用ゲーム機で中心に中心に使われる売り切り型ゲーム)は、ロングヒット作品は別として、通常発売後3~4か月以内に販売が集中するといわれています。したがって、多額の製作費をこの短期間に回収できるか否かがポイントです。スマートフォン向けタイトルは、サービス開始後も課金を継続できるため、長期にわたり回収が可能です。

 

【良い条件で売却するポイント】

①経営課題は伸びしろと考える
どのようなゲーム開発会社でも何らかの経営課題を抱えています。まず売却の一番のポイントは、経営課題をネガティブなものとして捉えるのではなく、「伸びしろ」として捉えることです。つまり、自社で解決できない経営課題を解決してくれる買い手が「ベストパートナー」、イコール「良い条件を出してくれる相手」ということです。例えば、人材の採用に課題があれば、採用に強い買い手と組むべきですし、資金調達に課題があれば、資金に余裕がある買い手と組むことがM&Aで良い条件を引き出す重要なポイントとなります。

 

②赤字の原因を明らかにする
現在、事業が赤字、債務超過の状況にあっても、「赤字、債務超過だから売却できない」ということはありません。ゲーム開発会社を売却するうえで、重要なのは赤字の原因を明らかにすることです。例えば、赤字の原因が人材不足にある場合、「もし人材の豊富な買い手と組めば、潜在的な開発力はあるので必ず黒字転換できる」などと、きちんと伸びしろを最大限反映させた説明をすべきです。さらに、赤字の原因を解消できた状態の事業計画を準備しておけば、その伸びしろは買い手から高く評価されます。

 

③従業員の引き抜きを目的としたM&Aに注意
M&Aのプロセスを進めるうえで、買い手から従業員リストの提出を求められる場合があります。中には従業員の引き抜きを画策する買い手もいるため、個人名などの固有名詞は伏せてください。また、M&Aは従業員に与える影響が大きく、不安を感じる従業員は多いものです。従業員の離職につながらないよう、情報漏洩には注意してください。従業員にM&Aのことを開示するタイミングは最終契約書を締結した後が望ましいといえるでしょう。

 

④成約後は速やかに取引先・業提提携先に対する説明会を開催
ゲーム開発会社の経営において、取引先・業務提携先との信頼関係は重要な要素です。買い手は既存の既存の取引先や業務提携先の反応を心配します。これらの取引先・提携先の理解を得るためにも、M&Aが完了した段階で速やかに説明会などを行い、買い手が安心できる企業であること、M&A前と運営は何も変わらないことを伝えましょう。

 

Ⅴ.まとめ

当社は、世界的に有名なREFINITIV(旧トムソンロイター)のM&A成約件数ランキングに9年連続ランクインしております。

また、豊富な譲り受けニーズを保有しており、2005年の設立(M&A業界では老舗)以来、蓄積してきた豊富な譲り受け希望企業のニーズを保有しています。

事業の今後の成長性を考慮した事業計画作成による譲渡価額最大化や、補助金・税制の申請支援、M&A後の相続税対策、資産運用などのご相談も承ります。

M&Aアドバイザリー会社では珍しく弊社には営業ノルマがないため、弊社の都合でM&A実行を急がせることはなく、ベストなタイミング・譲渡候補先をご提案いたします。

まずは、M&A・事業承継に関する事例やお話だけ聞いてみたいという方もお気軽にご連絡くださいませ。

 

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売り手経営者のM&Aによるメリット

Ⅰ.経営者個人のメリット

1. 創業者利潤の獲得
M&A(株式譲渡)による税金は約20%で、役員給与、賞与、贈与・相続による税率よりも大きなメリットがあります。手取現金を多く残したいということであれば、親族内承継よりもM&Aが一般的に有利です。

2.個人保証・担保の解除
買い手は一般的に売り手企業よりも規模が大きく、その分金融機関からの与信が大きくなります。したがってM&Aのタイミングで経営者の個人保証・担保は解除されます(借入金の一括返済または保証の引継ぎ)。親族内承継では、前の経営者の保証が解除されないケースや承継者に保証を新たに求めたり、新旧両経営者に保証が残るケースもあります。

Ⅱ.会社のメリット

1.グループ経営による財務、人材のバックアップ、ブランディングによる採用
大手企業のグループに統合することによりブランド力、信用力が向上し、金融機関から資金調達力、人材採用力、取引先との交渉力などが強化されるため、このグループ力を生かして業績が急上昇します。株式上場の夢も実現可能性が高くなります。

2.従業員の雇用継続とモチベーションの向上
中小企業は一般的にオーナー経営になっている場合が多いため、従業員の視点から処遇の改善、個人のやりがい(能力の向上、キャリアアップ)が見込めない状態になっている場合も少なくありません。グループ経営により、業績が向上し、個人経営から組織経営に脱皮し、個人のモチベーション、やりがい、生きがい、処遇などが確実に向上します。

 

本記事の執筆者

かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社_代表取締役_佐武伸

かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社
代表取締役
佐武 伸

 

兵庫県宝塚市出身。関西学院大学商学部卒。米国サンダーバード国際経営大学院卒(MBA)。
朝日監査法人(現あずさ監査法人)にて上場企業数十社の会計監査、システム監査、株式公開準備(IPO)プロジェクト等に参画。
その後、奥田公認会計士事務所で中堅・中小企業の国内・国外税務戦略立案、事業承継対策、IPO等の幅広いコンサルティング業務に従事。専門は、M&Aコンサルティング、企業評価、会計・税務コンサルティング。
2005年にかえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社を設立、代表取締役に就任。
元中央大学ビジネススクール客員教授(M&A戦略)。

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