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葬儀業のM&A | 良い相手と良い条件で成約するポイント

業種別M&A

高齢化による需要拡大、葬儀のスタイルの変化、事業承継問題、規模拡大によるコスト削減、オンライン葬儀などに対応する戦略として、現在、葬儀業界で中堅・中小企業を中心にM&Aが活発に行われています。

これは、M&Aによるグループ化により、資金調達力、人材獲得力、ブランド力、サービスラインの向上などが売り手企業、買い手企業双方に与えるメリットが大きいからです。

そこで、本コラムでは、葬儀業のM&Aで押さえたいポイントや成功の法則を分かりやすく解説します。

Ⅰ. 葬儀業の市場規模と特徴

葬儀業の2022年の売上高は5,599億円(前年比8.6%)、取扱件数は、49万4,000件(前年比7.9%増)となりました(経済産業省統計調査)。

葬儀業の売上高と取扱件数の推移は、2019年までは売上高、取扱件数ともほぼ横ばいでしたが、2020年には売上高が急減し、取扱件数もマイナスになっています。

2022年の売上高は増加していますが、取扱件数は過去10年で最高の件数となっており、葬儀1件あたりの単価が長期的に減少傾向になってきていることを示しています。

 

Ⅱ.葬儀業界のトレンド

葬儀業界の規模は、近年増加傾向にあります。国内では高齢者の増加に伴う死亡者数が増えるため、葬儀件数は増加傾向にあります。

一方、葬儀1件あたりの単価は下落傾向にあります。単価下落の要因は、葬儀の小規模化です。

これまでの葬儀は、故人の生前から関係のあった仕事関係者や友人などに加え、親族、近隣住民など多くの人に訃報を知らせ、葬儀に参列いただく形が一般的でした。

しかし、近年では葬儀の形に変化が表れています。まず、長寿化が進む中で、要介護や認知症に伴い友人、知人との関係が薄れてきています。

また、高齢者の葬儀に対する考えも変化してきており、「お金をかけたくない」、「迷惑をかけたくない」との考えを持つ人が増え、遺族や親しい知人だけで行う「家族葬」が好まれるようになってきています。

また一人暮らしの高齢者の増加も進んできており、孤独死の問題は今後ますます深刻になってきます。

そのような故人を弔う形として、「直葬」(24時間安置後に火葬する形)が増え続けていくことが予想されています。

 

Ⅲ.葬儀業のM&A事例

では、葬儀業のM&A事例にはどのようなものがあるのでしょうか?

 

◆同業によるエリアの強化を目的とした事例

2022年11月、葬祭業として葬儀式場を展開する株式会社天光社(本社:福岡県福岡市、以下 天光社)は、創業1880年(明治13年)より岐阜市で葬祭業を行う株式会社野々村葬儀社(本社:岐阜県岐阜市、以下 野々村葬儀社)の株を取得し、完全子会社化しました。

天光社は、1955年福岡県柳川市に創業し、信頼と実績を積み重ね、2009年より中部(岐阜)、関西、関東へ出店を続け、現在では家族葬ホールを中心に49ホールの葬儀式場を展開している葬祭業社です。

また、野々村葬儀社は創業1880年(明治13年)より岐阜市を中心に多くの葬儀を手掛けてきており、地域での信頼も厚く、永く親しまれた老舗の葬儀社であります。

天光社は、岐阜県で4ホールの葬儀式場を運営していますが、この度の完全子会社化によって野々村葬儀社の持つ岐阜市3式場(6ホール)を合わせて運営することとなり、対象エリアの拡大と地域の顧客の利便性を高めることができ、このM&Aにより両社のさらなる発展を目指しています。

 

◆同業者による新エリア進出の事例

2021年1月、株式会社きずなホールディングス(以下、「きずなグループ」)は、有限会社備前屋(以下、備前屋)の株式を取得し、子会社化することについて決議しています。

きずなグループは、「葬儀再生は、日本再生。」の経営理念に基づき、家族葬を中心に全国7 道府県において 90 店の直営ホールを展開しております。将来的には全国 47 都道府県での展開を展望しており、成長戦略のひとつとして「M&A による新規エリア進出及び、パートナー(対象会社)との協働による成長」を掲げております。

備前屋は、岡山県瀬戸内市を中心に家族葬・一般葬を手掛ける葬儀葬祭事業者です。3店(瀬戸内市2店、岡山市1店)の直営ホールを展開しており、瀬戸内市における高いシェアに加え、近年進出した岡山市においても順調に拡大しております。

今回のM&Aは、きずなグループとしては初の中国エリアへの進出です。特に、岡山市エリアについては、商圏規模の大きさに加え、大規模葬や一般葬をメインとする同業者が相対的に多く、家族葬市場の成長余地は極めて大きなマーケットで、備前屋の従来の経営基盤をベースに、きずなグループの出店・マーケティング・多店舗展開ノウハウ等を加えることでシナジー効果を発揮できると考え、M&Aを実行しています。

 

◆異業種(地域投資ファンド)による成長加速を目的とした買収事例

2020年12月、四国アライアンスキャピタル株式会社(以下、「四国キャピタル」)が運営するしこく創生投資事業有限責任組合(しこく創生ファンド)は、事業承継に関する課題解決と持続的な成長の支援を目的に、株式会社エレナ(以下、「エレナ」)の全株式を取得し、資本業務提携を行っています。

エレナは、1939年の会社設立以来、香川県高松市を中心に葬儀業を営み、歴史と伝統を重んじ、古きを愛しながら、より個性的で自由度の高い葬儀を提供しています。「エレガントな葬儀」を信条とし、祭壇生花にこだわり、優雅な葬儀の提供が強みです。近年では「家族葬ならエレナ」を掲げ、多様化する現代のニーズに対応し、事業を展開しています。

今般の資本業務提携に伴い四国キャピタルは、複数の役員を派遣し、エレナの役職員と協働して同社の持続的な成長・発展に向けて積極的に取り組むとともに、オーナーによる同族経営から組織的経営への移行をサポートすることで、次世代へのスムーズな承継を実現し、今後も地域社会に貢献し続けていくことを目指して支援していく予定です。

 

Ⅳ.葬儀業のM&A・事業承継のポイント

葬儀業の会社・事業を売却するとき、「できるだけ良い条件で売却したい」という方が多いと思いますので、その良い条件を獲得するためのポイントを解説します。

まず交渉を有利に進めるためにも、買い手が見るポイントを以下で説明します。

 

【買い手が見るポイント】

①互助会業者
互助会業者の場合、加入者から毎月数千円の掛け金を葬儀サービスの提供に先立って預かるため、その充当額、預金残高の保全措置、設備投資に充当しているか否か、などが検討されます。

②資金繰り
葬儀業は業界慣習として現金商売に近い業態であり、運転資本はそれほど必要ありませんが、季節的な変動が多いため、継続的な資金収支のチェックが必要です。死亡者数は比較的冬場に多く、春から夏にかけては一般的に減少傾向になるため、稼働率や資金繰りも連動する傾向にあり、資金収支がマイナスの月があると一時的な借入が必要となります。したがって、数年間の資金繰りの季節変動などが詳細に分析されます。

③重要管理指標
葬儀業は、設備産業とサービス業の2つの特徴を持ちます。リピートや固定客という概念がありませんが、一定以上の設備稼働率を確保しなければならないという特性があります。

設備産業の指標としては、設備稼働率、投資利益率、投資回収期間などがあり、サービス面からは、顧客一人当たりの売上、費用、顧客数などがチェックされます。

④クレーム対応
過去にどんなクレームがあったのか、どんな対応を行ったのか、状況説明できるようにリストを作成しておくと良いでしょう。

⑤従業員の定着率
現在人手不足が最大の経営リスクとなっているため、従業員の定着率が低い場合、原因が待遇にあるのか、労働環境にあるのか、など原因を突き止めておくと良いでしょう。

⑥社員の教育研修
質の高い従業員を確保するため、採用時の人材の評価方法、サービスマナー教育など人材の質を確保するための取り組みが重要視されます。

⑦葬儀以外のサービスの取り組み状況
葬儀以外のサービスの取り組み状況は、今後の営業・マーケット面からも重視されます。

例えば、遺言、エンディングノート、相続税対策というようなテーマでの生前セミナーの開催、葬儀後のサポート(位牌、仏壇、香典返し、一周忌のサポート)などです。

 

【良い条件で売却するポイント】

①経営課題は伸びしろと考える
どのような葬儀事業でも何らかの経営課題を抱えています。まず売却の一番のポイントは、経営課題をネガティブなものとして捉えるのではなく、「伸びしろ」として捉えることです。つまり、自社で解決できない経営課題を解決してくれる買い手が「ベストパートナー」、イコール「良い条件を出してくれる相手」ということです。

例えば、人材の採用に課題があれば、採用に強い買い手と組むべきですし、資金調達に課題があれば、資金に余裕がある買い手と組むことがM&Aで良い条件を引き出す重要なポイントとなります。

②赤字の原因を明らかにする
「赤字だから売却できない」ということはありません。葬儀事業を売却するうえで、重要なのは赤字の原因を明らかにすることです。

例えば、赤字の原因が地域での認知度、サービスライン不足にある場合、「もし豊富な認知度、サービスラインのある買い手と組めば、人材は豊富にいるので必ず黒字転換できる」などと、きちんと伸びしろを反映させた説明をすべきです。さらに、赤字の原因を解消できた状態の事業計画を準備しておけば、その伸びしろが買い手から高く評価されます。

③従業員の引き抜きを目的としたM&Aに注意
M&Aのプロセスを進めるうえで、買い手から従業員リストの提出を求められる場合があります。中には従業員の引き抜きを画策する買い手もいるため、個人名などの固有名詞は伏せてください。

また、M&Aは従業員に与える影響が大きく、不安を感じる従業員は多いものです。従業員の離職につながらないよう、情報漏洩には注意してください。従業員にM&Aのことを開示するタイミングは最終契約書を締結した後が望ましいといえるでしょう。

④成約後は速やかに取引先・業提提携先に対する説明会を開催
葬儀事業の経営において、取引先・業務提携先との信頼関係は重要な要素です。買い手は既存の既存の取引先や業務提携先の反応を心配します。

これらの取引先・提携先の理解を得るためにも、M&Aが完了した段階で速やかに説明会などを行い、買い手が安心できる企業であること、M&A前と運営は何も変わらないことを伝えましょう。

 

Ⅴ.まとめ

当社は、世界的に有名なREFINITIV(旧トムソンロイター)のM&A成約件数ランキングに9年連続ランクインしております。

また、豊富な譲り受けニーズを保有しており、2005年の設立(M&A業界では老舗)以来、蓄積してきた豊富な譲り受け希望企業のニーズを保有しています。

事業の今後の成長性を考慮した事業計画作成による譲渡価額最大化や、補助金・税制の申請支援、M&A後の相続税対策、資産運用などのご相談も承ります。

M&Aアドバイザリー会社では珍しく弊社には営業ノルマがないため、弊社の都合でM&A実行を急がせることはなく、ベストなタイミング・譲渡候補先をご提案いたします。

まずは、M&A・事業承継に関する事例やお話だけ聞いてみたいという方もお気軽にご連絡くださいませ。

 

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売り手経営者のM&Aによるメリット

Ⅰ.経営者個人のメリット

1. 創業者利潤の獲得
M&A(株式譲渡)による税金は約20%で、役員給与、賞与、贈与・相続による税率よりも大きなメリットがあります。手取現金を多く残したいということであれば、親族内承継よりもM&Aが一般的に有利です。

2.個人保証・担保の解除
買い手は一般的に売り手企業よりも規模が大きく、その分金融機関からの与信が大きくなります。したがってM&Aのタイミングで経営者の個人保証・担保は解除されます(借入金の一括返済または保証の引継ぎ)。親族内承継では、前の経営者の保証が解除されないケースや承継者に保証を新たに求めたり、新旧両経営者に保証が残るケースもあります。

Ⅱ.会社のメリット

1.グループ経営による財務、人材のバックアップ、ブランディングによる採用
大手企業のグループに統合することによりブランド力、信用力が向上し、金融機関から資金調達力、人材採用力、取引先との交渉力などが強化されるため、このグループ力を生かして業績が急上昇します。株式上場の夢も実現可能性が高くなります。

2.従業員の雇用継続とモチベーションの向上
中小企業は一般的にオーナー経営になっている場合が多いため、従業員の視点から処遇の改善、個人のやりがい(能力の向上、キャリアアップ)が見込めない状態になっている場合も少なくありません。グループ経営により、業績が向上し、個人経営から組織経営に脱皮し、個人のモチベーション、やりがい、生きがい、処遇などが確実に向上します。

 

本記事の執筆者

かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社_代表取締役_佐武伸

かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社
代表取締役
佐武 伸

 

兵庫県宝塚市出身。関西学院大学商学部卒。米国サンダーバード国際経営大学院卒(MBA)。
朝日監査法人(現あずさ監査法人)にて上場企業数十社の会計監査、システム監査、株式公開準備(IPO)プロジェクト等に参画。
その後、奥田公認会計士事務所で中堅・中小企業の国内・国外税務戦略立案、事業承継対策、IPO等の幅広いコンサルティング業務に従事。専門は、M&Aコンサルティング、企業評価、会計・税務コンサルティング。
2005年にかえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社を設立、代表取締役に就任。
元中央大学ビジネススクール客員教授(M&A戦略)。

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