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建設業のM&A | 良い相手と良い条件で成約するポイント

業種別M&A

慢性的な人手不足、職人の高齢化、事業承継問題、DX対応の遅れなどを解決する戦略として現在、建設業界で中堅・中小企業を中心にM&Aが活発に行われています。

これは、M&Aによるグループ化により、資金調達力、人材獲得力、ブランド力、デジタル対応力の向上が売り手企業、買い手企業双方に与えるメリットが大きいからです。

そこで、本コラムでは、建設業のM&Aで押さえたいポイントや成功の法則を分かりやすく解説します。

Ⅰ. 建設業の市場規模と特徴

建設業の市場規模は約67億円(国土交通省。2022年)です。最近5年間は、コロナ感染拡大による影響がありましたが、東京オリンピックに向けた建設需要、自然災害からの復興需要、都市部での再開発、公共インフラの更新工事などにより、微増ながら成長を続けてきました。

市場の特性としては、大都市圏と地方では大都市圏が工事数、規模とも勝っている状況です。

建設業者数は、1999年の約60万業者を天井に、2015年には約47万業者と約22%減少しています。市場規模も1992年の84兆円をピークに2010年には42兆円と半減しました。

 

Ⅱ.建設業のトレンド

建設業界では、就業者数が1997年の約685万人から2015年には約500万人と減少しています。就業者の高齢化が進んでおり、2025年には50万人以上の就業者不足が予想されています。この人手不足の原因としては、高齢者の引退と若年層の就業者が減ってきていることが挙げられます。

また、市場規模が減少傾向にある中で、業者数は市場規模の減少ほど縮小しておらず、供給過多の状態が続いています。

このような市場環境の中で、価格だけでなく、品質、工期などの面で競争力を高めるため、DXによる現場作業の効率化、新工法の開発、事業エリアの拡大など生き残りをかけてM&Aが戦略として活用されています。

さらに、経営者の高齢化にともない、事業承継を目的としたM&Aに対する要望も急増しています。

 

Ⅲ.建設業のM&A事例

では、建設業のM&A事例にはどのようなものがあるのでしょうか?

◆全国展開を目的とした買収の事例

株式会社 ナカノフドー建設は、2023年 3 月、 株式会社トライネット、株式会社パテック、株式会社トライネット不動産、株式会社住まいる工房及び株式会社創力の発行済全株式を保有する株式会社トライネットホールディングス(以下トライネットグループ)の株式を取得し、子会社化しています。

トライネットグループは、昭和 24 年の会社設立以来、長野県飯田市を基盤として、土木事業を主要事業とする総合建設業、不動産事業、リフォーム事業を展開しております。

同グループの土木事業に関するノウハウは、ナカノフドー建設の全国で展開する土木事業の拡大に大いに貢献するものであるとともに、ナカノフドー建設の建築事業のノウハウがトライネットグループの建築事業の強化に寄与できることから、M&Aにより十分な相乗効果が見込まれると判断しています。

今後は、双方のノウハウを活かして土木事業並びに建築事業の積極的な展開を全国規模で行い、さらなる企業価値の向上を目指しています。

同業による商圏拡大を目的とした事例

矢作建設工業株式会社、2023 年1月、北和建設株式会社の全株式を取得し、子会社化することについて決議し、株主との間で株式譲渡契約を締結しています。

矢作建設工業は、東海圏にとどまらずリニア経済圏への事業拡大を図り、そのなかの特定の顧客・分野で強力な競争力を有する企業を目指しています。

一方、北和建設は、京都府有数の建設会社としてマンション工事を中心に、ホテルや福祉施設等の建築工事を実施しています。

矢作建設工業は、京都を中心とした関西圏の営業基盤に強みを持つ北和建設を子会社化することで、商圏拡大などの多くの相乗効果が見込めることから、矢作建設工業の目指す姿である「課題解決&価値創造型企業」の実現に寄与するものと判断し、この度のM&Aが行われています。

◆商圏拡大及び相乗効果を目的とした買収事例

株式会社エストラストは、2023年1月、建和住宅株式会社の株式100%を取得し、子会社化しています。

エストラストは、主に山口県及び九州の主要都市において、ファミリータイプマンション及び分譲戸建を提供しています。

一方、建和住宅は、山口県内を中心に、戸建住宅の販売を行っています。

今回のM&Aは、商圏を西日本だけでなく、今後、規模を拡大し、全国に広げて行く目的で実行されています。

 

Ⅳ.建設業のM&A・事業承継のポイント

建設業の会社・事業を売却するとき、「できるだけ良い条件で売却したい」という方が多いと思いますので、その良い条件を獲得するためのポイントを解説します。

まず交渉を有利に進めるためにも、買い手が見るポイントを以下で説明します。

【買い手が見るポイント】

①人材の量と質
人手不足問題解決のためのM&Aが急増しています。そのため、どのような有資格者が、何名いるか、そのスキルと実績など各人別のスキルシートなどを作成しておくことが望まれます。

②民間と公共事業の割合、建築と土木工事の割合
民間工事においては、経営者との個人的な人的ネットワークから受注につながっているのかどうか、売上割合の高い得意先はあるのか、などを主として評価し、公共工事についても人脈による受注、ダンピングの有無、などが検討されます。

③個別工事の損益管理
工事内容の複雑性や担当する現場監督の実力により、各個別工事の採算は大きく影響を受けます。したがって、赤字受注しているかどうか、大きな費目、工期の遅れ、目標利益の達成度合い、予実の差異原因など、工事別採算管理の完成度が見られます。

④クレーム対応
過去にどんなクレームがあったのか、どんな対応を行ったのか、状況説明できるようにリストを作成しておくと良いでしょう。

⑤従業員の定着率
現在人手不足が最大の経営リスクとなっているため、従業員の定着率が低い場合、原因が待遇にあるのか、労働環境にあるのか、など原因を突き止めておくと良いでしょう。

⑥粉飾決算
経営審査、銀行からの融資などのために粉飾決算が行われていないかどうか、詳細にチェックされるため、特に注意が必要です。

⑦外注業者
外注業者を活用している場合、外注業者の数、施工できる工事の種類・品質・価格が競争力の源泉になるため、詳細な分析が行われます。

【良い条件で売却するポイント】

①経営課題は伸びしろと考える
どのような建設会社でも何らかの経営課題を抱えています。まず売却の一番のポイントは、経営課題をネガティブなものとして捉えるのではなく、「伸びしろ」として捉えることです。つまり、自社で解決できない経営課題を解決してくれる買い手が「ベストパートナー」、イコール「良い条件を出してくれる相手」ということです。例えば、人材の採用に課題があれば、採用に強い買い手と組むべきですし、資金調達に課題があれば、資金に余裕がある買い手と組むことがM&Aで良い条件を引き出す重要なポイントとなります。

②赤字の原因を明らかにする
「赤字だから売却できない」ということはありません。建設会社を売却するうえで、重要なのは赤字の原因を明らかにすることです。例えば、赤字の原因が資格者の不足にある場合、「もし現場で必要となる資格者を3名採用できれば、受注件数を年間10件以上増やせるので黒字転換できる」などと、きちんと伸びしろを反映させた説明をすべきです。さらに、赤字の原因を解消できた状態の事業計画を準備しておけば、その伸びしろが買い手から高く評価されます。

③従業員の引き抜きを目的としたM&Aに注意
M&Aのプロセスを進めるうえで、買い手から従業員リストの提出を求められる場合があります。中には従業員の引き抜きを画策する買い手もいるため、個人名などの固有名詞は伏せてください。また、M&Aは従業員に与える影響が大きく、不安を感じる従業員は多いものです。従業員の離職につながらないよう、情報漏洩には注意してください。従業員にM&Aのことを開示するタイミングは最終契約書を締結した後が望ましいといえるでしょう。

④成約後は速やかに取引先説明会を開催
建設会社の経営において、取引先との信頼関係は重要な要素です。買い手は既存の取引先の反応を心配します。取引先の理解を得るためにも、M&Aが完了した段階で速やかに取引先説明会を行い、買い手が安心できる企業であること、M&A前と運営は何も変わらないことを伝えましょう。

 

Ⅴ.まとめ

当社は、世界的に有名なREFINITIV(旧トムソンロイター)のM&A成約件数ランキングに9年連続ランクインしております。

また、豊富な譲り受けニーズを保有しており、2005年の設立(M&A業界では老舗)以来、蓄積してきた豊富な譲り受け希望企業のニーズを保有しています。

事業の今後の成長性を考慮した事業計画作成による譲渡価額最大化や、補助金・税制の申請支援、M&A後の相続税対策、資産運用などのご相談も承ります。

M&Aアドバイザリー会社では珍しく弊社には営業ノルマがないため、弊社の都合でM&A実行を急がせることはなく、ベストなタイミング・譲渡候補先をご提案いたします。

まずは、M&A・事業承継に関する事例やお話だけ聞いてみたいという方もお気軽にご連絡くださいませ。

 

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売り手経営者のM&Aによるメリット

Ⅰ.経営者個人のメリット

1. 創業者利潤の獲得
M&A(株式譲渡)による税金は約20%で、役員給与、賞与、贈与・相続による税率よりも大きなメリットがあります。手取現金を多く残したいということであれば、親族内承継よりもM&Aが一般的に有利です。

2.個人保証・担保の解除
買い手は一般的に売り手企業よりも規模が大きく、その分金融機関からの与信が大きくなります。したがってM&Aのタイミングで経営者の個人保証・担保は解除されます(借入金の一括返済または保証の引継ぎ)。親族内承継では、前の経営者の保証が解除されないケースや承継者に保証を新たに求めたり、新旧両経営者に保証が残るケースもあります。

Ⅱ.会社のメリット

1.グループ経営による財務、人材のバックアップ、ブランディングによる採用
大手企業のグループに統合することによりブランド力、信用力が向上し、金融機関から資金調達力、人材採用力、取引先との交渉力などが強化されるため、このグループ力を生かして業績が急上昇します。株式上場の夢も実現可能性が高くなります。

2.従業員の雇用継続とモチベーションの向上
中小企業は一般的にオーナー経営になっている場合が多いため、従業員の視点から処遇の改善、個人のやりがい(能力の向上、キャリアアップ)が見込めない状態になっている場合も少なくありません。グループ経営により、業績が向上し、個人経営から組織経営に脱皮し、個人のモチベーション、やりがい、生きがい、処遇などが確実に向上します。

 

本記事の執筆者

かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社_代表取締役_佐武伸

かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社
代表取締役
佐武 伸

 

兵庫県宝塚市出身。関西学院大学商学部卒。米国サンダーバード国際経営大学院卒(MBA)。
朝日監査法人(現あずさ監査法人)にて上場企業数十社の会計監査、システム監査、株式公開準備(IPO)プロジェクト等に参画。
その後、奥田公認会計士事務所で中堅・中小企業の国内・国外税務戦略立案、事業承継対策、IPO等の幅広いコンサルティング業務に従事。専門は、M&Aコンサルティング、企業評価、会計・税務コンサルティング。
2005年にかえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社を設立、代表取締役に就任。
元中央大学ビジネススクール客員教授(M&A戦略)。

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