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事業承継問題、人手不足による人件費アップ、業界内の構造変化などによって、現在、食品メーカー業界で中小企業のM&Aが活発に行われています。
食品メーカーは、同業者によるM&Aだけでなく、周辺業種、異業種の買い手候補からも人気の業種です。
これは、M&Aによるグループ化により、共同仕入によるコスト削減、資金調達力、人材獲得力、ブランド力の向上が、売り手、買い手双方に与えるメリットが大きいからです。
そこで、本コラムでは、食品メーカーのM&Aで押さえたいポイントや成功の法則を分かりやすく解説します。
目次
食品メーカーの市場規模は、約42兆円(2021年度法人企業統計調査)と、ここ数年おおむね微減傾向で推移しています。
2022年以降では、コロナ渦の巣ごもり重要は落ち着きを見せ、経済再開により、業務用食材の需要は増加に転じています。一方で原材料の高騰により、食品全般の値上げが続いており、特に、乳製品、肉、小麦などで高騰が顕著です。
食品業界の特徴としては、①売上数千億円~1兆円超の超巨大企業が多い、②多種多様な業者が含まれている、③食品の安全性が重要で規制が多い、などの点が挙げられます。
同業との価格競争の激化や原材料費の高騰などにより、中小企業では厳しい状況が続いています。
また人口減少や少子高齢化で国内市場は微減が続いているため、大手上場企業では新たな市場の獲得のため、M&Aで海外進出を加速させています。
さらに近年では、共働き世帯や単身世帯の増加により、家で調理する機会が減ってきています。
それに伴う食品需要の低下により、利益率も低下傾向にあります。高齢化も進んできており、一人当たりの消費量も減少傾向にあります。
この業界におけるM&A動向としては、以下のような動きが見られます。
①同業で経営統合し、生産設備や技術を集約化して競争力を増進する
②飲料メーカーが畜産水産製造業を買収するなど、事業ポートフォリオを拡大
③スーパーなどの小売企業が川上のメーカーを買収
④海外市場拡大
では、食品メーカーのM&A事例にはどのようなものがあるのでしょうか?
◆海外展開の加速、新分野の商品開発目的の事例
2022年12月、投資ファンドのD Capital 株式会社(以下「D Capital」)は、カーライルジャパン(投資ファンド)及び創業家の株主である松田好旦氏との間で、株式会社おやつカンパニーの株式に関して株式譲渡契約を締結しています。
おやつカンパニーは、1948年に創業した国内屈指のスナック菓子メーカーです。「ラーメンをそのまま食べる」という発想から1959年に生まれたベビースターラーメンは、時を経て、子供から大人まで幅広く愛される日本を代表するスナックです。
このM&Aでおやつカンパニーは、確固たるブランドを有するスナックを核としながら、グローバルで進む健康意識の高まりに応える新たな商品を生み出していくことで、国や年齢を問わず、さらに多くのファンを創出していく可能性を秘めており、創業来培ってきた強みにデジタルの力を組み合わせることで、その成長可能性を最大限追求することが出来ます。
◆同業買収によるグループ力の強化の事例
株式会社ヨシムラ・フードHDは、202 2年11月、株式会社丸太太兵衛小林製麺(以下、「丸太太兵衛小林製麺」)の株式を取得し、子会社化しています。
丸太太兵衛小林製麺は、北海道札幌市に本社及び工場を構え、生麺(ラーメン)の製造・販売を主な事業内容としており、餃子の皮の製造及びたれ等調味料の販売も一部行う企業です。同社の強みは、長年にわたり培われてきた高度な製麺技術とノウハウにより、こだわりの味と高品質の麺を製造できること、また、得意先からの要望を反映した特注麺等、高付加価値商品の製造が可能 である部分にあります。それにより多くの有名なラーメン店で同社の麺が採用されており、安定的な業績を維持することができております。
ヨシムラ・フードHDは、丸太太兵衛小林製麺が作り上げてきた独自のビジネスモデル、特徴のある製品を作り上げる高度な製造技術とノウハウ、北海道で長年築き上げてきた小林製麺ブランドとその 高い知名度に魅力を感じ、M&Aを実行しています。
このM&Aで丸太太兵衛小林製麺が持つ強みを活かしながら、ヨシムラ・フードHDが持つ経営ノウハウや中小企業支援プラットフォームを活用し、グループの食品メーカー各社との相乗効果を生み出すことで、両社で一層の成長を目指すことが可能となります。
◆食品メーカー×小売業(スーパーマーケット):相乗効果の高い買収事例
スーパーマーケットのアークスグループの子会社である株式会社福原は、2022 年5月、100%子会社である株式会社ハピネス・デリカと、北海道内米穀・食料品卸売業界における大手企業である株式会社食創(本社:帯広市)の子会社の道東ライス株式会社との間で、事業譲渡契約を締結し、株式会社ハピネス・デリカが 2022 年9月1日付で道東ライス株式会社の食品(惣菜)製造事業の譲受及び同社幕別工場の固定資産の取得を行うことを合意しています。
このM&Aは、株式会社福原が、永年道東地区で食品製造業に従事してきた、道東ライス株式会社の米穀の炊飯加工業及び惣菜類の製造ノウハウを活かし、また、アークスグループの惣菜事業と連携し、フクハラの惣菜売場で「安心で安全な美味しい商品」を提供することを目的としています。
食品メーカーの会社・事業を売却するとき、「できるだけ良い条件で売却したい」という方が多いと思いますので、その良い条件を獲得するためのポイントを解説します。
まず交渉を有利に進めるためにも、買い手が見るポイントを以下で説明します。
【買い手が見るポイント】
①消費者の「安心・安全」を確保するための取り組み
食品メーカーでは、原材料仕入れから完成品の検査まで工程ごとに、病原菌などによる汚染、異物混入などのリスクを予測し、防止につながる施策を工程ごとに監視し記録するなどの取り組みの強化が求められています。したがって、これらの一連の工程管理をシステムで対応するHACCPなどが導入されていれば高評価につながります。
②見込生産のリスク
見込生産で製造する食材を扱っているメーカーの場合、作りすぎによる廃棄ロスが問題になります。したがって、これを回避する精度の高い受注予測、生産管理が求められます。
③販売単価の下落可能性
製造している食品・飲料によっては、大手スーパーやコンビニのPBに対抗するするため、販売単価を下げざるをえないケースもあります。このような食品・飲料を扱っているメーカーについてはその製品の競争力を多面的に分析されます。
④公衆衛生に関する規制
食品メーカーが遵守すべき公衆衛生に関する代表的な法律は、食品衛生法です。この法律に違反した場合、罰則のほか、会社の名称などが公表されるリスクがあります。この公表が取引先や消費者に知れると、信頼が失墜し、売り上げに大きなダメージを与えます。したがって、万が一のリスクに備えて、例えば、月額売上の6か月以上の現金預金を保有しているかどうか、先述したHACCPの導入などがチェックされます。
⑤食品流通に関する規制
食品流通の表示規制に関する代表的な法律として、食品表示法があります。食品表示法は、メーカーに対して、食品を販売するにあたって表示する項目・基準を決めています。
この基準に違反している場合には、一定の消費者団体などから、表示行為に対して差し止め請求を受ける可能性があるため、この規制に関する社内のコンプライアンスの状況などが確認されます。
【良い条件で売却するポイント】
①経営課題は伸びしろと考える
どのような食品メーカーでも何らかの経営課題を抱えています。売却時にいい評価を受けるためのポイントは、経営課題をネガティブなものとして捉えるのではなく、「伸びしろ」としていかにアピールできるかという点です。つまり、経営課題(「伸びしろ」)を解決してくれる買い手をいかに探すかということです。この経営課題を自社のリソースで解決できる相手が「ベストパートナー」、イコール「良い条件を出してくれる相手」ということです。例えば、採用に課題があれば、ブランド力があり採用に強い買い手と組むべきですし、資金調達に課題があれば、資金に余裕がある買い手と組むことがM&Aで良い条件を引き出す重要なポイントとなります。
②赤字の原因を明らかにする
「赤字だから売却できない」ということはありません。食品メーカーを売却するうえで、重要なのは赤字の原因を明らかにすることです。例えば、赤字の原因が工場の稼働率の低下にある場合、「もし未稼働のラインを別の商品で使い、稼働率が***以上になれば、黒字転換できる」などと、きちんと伸びしろを考慮したアピールをすべきです。さらに、赤字の原因を解消できた状態の事業計画を準備しておけば、その赤字原因、つまり伸びしろが買い手から高く評価されます。
③従業員の引き抜きを目的としたM&Aに注意
M&Aのプロセスを進めるうえで、買い手から従業員リストの提出を求められる場合があります。中には従業員の引き抜きを画策する買い手もいるため、個人名などの固有名詞は伏せてください。また、M&Aは従業員に与える影響が大きく、不安を感じる従業員は多いものです。従業員の離職につながらないよう、情報漏洩には注意してください。従業員にM&Aのことを開示するタイミングは最終契約書を締結した後が望ましいといえるでしょう。
④成約後は速やかに取引先説明会を開催
食品メーカーの経営において当然のことですが、取引先との信頼関係は重要な要素です。買い手は既存の取引先の反応を心配します。取引先の理解を得るためにも、M&Aが完了した段階で速やかに取引先説明会を行い、買い手が安心できる企業であること、M&A前と運営は何も変わらないことを伝えましょう。
当社は、世界的に有名なREFINITIV(旧トムソンロイター)のM&A成約件数ランキングに9年連続ランクインしております。
また、豊富な譲り受けニーズを保有しており、2005年の設立(M&A業界では老舗)以来、蓄積してきた豊富な譲り受け希望企業のニーズを保有しています。
事業の今後の成長性を考慮した事業計画作成による譲渡価額最大化や、補助金・税制の申請支援、M&A後の相続税対策、資産運用などのご相談も承ります。
M&Aアドバイザリー会社では珍しく弊社には営業ノルマがないため、弊社の都合でM&A実行を急がせることはなく、ベストなタイミング・譲渡候補先をご提案いたします。
まずは、M&A・事業承継に関する事例やお話だけ聞いてみたいという方もお気軽にご連絡くださいませ。
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売り手経営者のM&Aによるメリット
Ⅰ.経営者個人のメリット
1. 創業者利潤の獲得
M&A(株式譲渡)による税金は約20%で、役員給与、賞与、贈与・相続による税率よりも大きなメリットがあります。手取現金を多く残したいということであれば、親族内承継よりもM&Aが一般的に有利です。
2.個人保証・担保の解除
買い手は一般的に売り手企業よりも規模が大きく、その分金融機関からの与信が大きくなります。したがってM&Aのタイミングで経営者の個人保証・担保は解除されます(借入金の一括返済または保証の引継ぎ)。親族内承継では、前の経営者の保証が解除されないケースや承継者に保証を新たに求めたり、新旧両経営者に保証が残るケースもあります。
Ⅱ.会社のメリット
1.グループ経営による財務、人材のバックアップ、ブランディングによる採用
大手企業のグループに統合することによりブランド力、信用力が向上し、金融機関から資金調達力、人材採用力、取引先との交渉力などが強化されるため、このグループ力を生かして業績が急上昇します。株式上場の夢も実現可能性が高くなります。
2.従業員の雇用継続とモチベーションの向上
中小企業は一般的にオーナー経営になっている場合が多いため、従業員の視点から処遇の改善、個人のやりがい(能力の向上、キャリアアップ)が見込めない状態になっている場合も少なくありません。グループ経営により、業績が向上し、個人経営から組織経営に脱皮し、個人のモチベーション、やりがい、生きがい、処遇などが確実に向上します。
かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社
代表取締役
佐武 伸
兵庫県宝塚市出身。関西学院大学商学部卒。米国サンダーバード国際経営大学院卒(MBA)。
朝日監査法人(現あずさ監査法人)にて上場企業数十社の会計監査、システム監査、株式公開準備(IPO)プロジェクト等に参画。
その後、奥田公認会計士事務所で中堅・中小企業の国内・国外税務戦略立案、事業承継対策、IPO等の幅広いコンサルティング業務に従事。専門は、M&Aコンサルティング、企業評価、会計・税務コンサルティング。
2005年にかえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社を設立、代表取締役に就任。
元中央大学ビジネススクール客員教授(M&A戦略)。
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