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ビルメンテナンス会社のM&A | いい相手といい条件で成約するポイント

業種別M&A

事業承継問題、人手不足による人件費アップ、業界内の構造変化などによって、現在、ビルメンテナンス業界で中小企業のM&Aが活発に行われています。

ビルメンテナンス会社は、同業者によるM&Aだけでなく、異業種の買い手候補からも人気の業種です。

これは、M&Aによるグループ化により、DX化、共同仕入によるコスト削減、資金調達力、人材獲得力、ブランド力の向上が、売り手、買い手双方に与えるメリットが大きいからです。

そこで、本コラムでは、ビルメンテナンス事業のM&Aで押さえたいポイントや成功の法則を分かりやすく解説します。

Ⅰ. ビルメンテナンス業の市場規模と特徴

ビルメンテナンス業の市場規模は、ここ数年で約3兆5,000億円前後と、おおむね微増傾向で推移しています(出典:(公)全国ビルメンテナンス協会)。

業界の主要企業は、多くが東京に本社があり、業界トップ企業でもシェアは1割以下で、多数の中小零細企業がひしめき合っている状況と言えます。

首都圏では、アベノミクス後、インバウンドの増加、東京オリンピックパラリンピックの開催があったこともあり市場は拡大中で、今後も大型施設の開発ラッシュで市場規模の拡大が期待されています。

業界の特徴としては、①労働集約的産業、②中小企業が多い、③受注産業、④都市型産業(首都圏と関西圏で約5割)という点が挙げられます。

業界団体としては、以下があります。
*(公)全国ビルメンテナンス協会
*(社)日本ビルディング協会連合会
*全国ビルメンテナンス協同組合連合会

 

Ⅱ.ビルメンテナンス業のトレンド

以前は、競争激化で、価格改定が難しく、全体的にコストは上昇気味で、それが長期的な収益率悪化の原因にいるという傾向にありましたが、近年は、人手不足で人材が確保できない、資格者がいないなど、採用問題が業界の大きな課題と変わってきています。

この人手不足は、コストアップ、受注の見送りなど業績へのインパクトが大きく、今後、業界で抜本的な改革が必要になってきています。

また、これまでは業務が定型的で労働集約型であったため、会社の規模の大小による技術、サービスなどの質の相違が少なく、中小規模の事業者が多数を占めていましたが、システムやITなどDX導入による管理業務を効率化する流れの中で、スケールメリットを生かしたサービス向上のため、中小事業者で規模拡大目的のM&Aが積極的に行われています。

このようにDX化によって効率化やサービス向上が進んでおり、よほど設備・人材投資をしてサービスの質と量を上昇させなければ大手に対抗することは厳しく、物件オーナーに管理先を変更され、経営難に陥るリスクが以前に増して高くなってきています。

 

Ⅲ.ビルメンテナンス業のM&A事例

では、ビルメンテナンス業のM&A事例にはどのようなものがあるのでしょうか?

 

◆規模拡大、エリア拡大目的の事例

2020年11月、マンション管理業の株式会社穴吹ハウジングサービス(本社:香川県、以下「穴吹ハウジング」)は、建衛工業株式会社(本社:北海道札幌市、以下「建衛工業」)の株式を取得し、同社を子会社化しました。

穴吹ハウジングは現在、全国で分譲・賃貸マンション・企業社宅などの不動産を管理しており、分譲マンションの管理戸数については全国で約13万戸です。

建衛工業は、札幌において、分譲マンション管理業・ビルメンテナンス業などを行っていますが、将来に渡り顧客への更なるサービス提供力の向上や、後継者問題による事業を継続させることが今回のM&Aの目的です。

穴吹ハウジングは北海道エリアにおいて事業を拡大させていく上で、建衛工業を子会社化することで、北海道においても分譲マンションの管理事業を中心に、あなぶきグループとして成長していくことが子会社化の目的です。

 

◆同業買収による規模拡大の事例

2022年1月、ジャパンエレベータサービスHD(以下、「ジャパンエレベータ」は、株式会社関東エレベーターシステム(以下、関東エレベーターシステム)の株式を取得し、子会社化しました。

ジャパンエレベータは、独立系エレベーター等メンテナンス企業として、サービス品質・技術力の強化、顧客満足度の向上に継続的に努める一方、顧客基盤の強化、生産性の向上を目指して、保守契約台数の増大を通じた事業基盤の構築・拡大に注力しています。

一方、関東エレベーターシステムは、エレベーター等メンテナンス事業を営み、群馬県館林市を拠点として、群馬県を中心に、1,200 台以上のエレベーター等保守管理を行っています。

今回のM&Aで関東エレベーターシステムは、ジャパンエレベータグループに加わることにより、保守契約台数の増加を通じた北関東地区における事業基盤の一層の強化を図るとともに、共通のサービス提供エリアにおける人的資源の相互活用を通じた効率的なメンテナンスの実施、さらには、技術ノウハウの提供によるサービス品質の向上など、同業の優位性を生かした事業連携が可能となります。

 

◆近接事業者(建築、不動産、設備関連)による相乗効果の高い買収事例

2020年11月、株式会社TOKAI(本社:静岡県静岡市、以下「 TOKAI」)が、株式会社イノウエテクニカ(本社:静岡県沼津市、以下 「イノウエテクニカ」)の株式を取得し、同社を連結子会社化しました。

TOKAIは、全国約80万件の顧客基盤を擁するLPガス・宅配水事業を中心に、静岡県・愛知県・神奈川県で建築、設備工事、不動産事業を展開しています。また、静岡県においては管財(ビルメンテナンス)事業として消防設備点検・機械設備保守点検・清掃業務・警備業務等を行っています。

一方、イノウエテクニカは、静岡県沼津市に拠点をおき、静岡県東部を中心に管財(ビルメンテナンス)事業を展開し、長年の実績に基づく地域社会での強固な信頼関係を背景に、沼津市、伊豆市、静岡市や富士市の公共施設や病院、民間企業の工場などの管財業務を多く請け負っています。

このM&Aにより、TOKAIはイノウエテクニカが長年培ってきた管財事業のノウハウを継承し、同事業の拡大を図ります。また、イノウエテクニカはTOKAIの静岡県内における組織力を最大限に活用し、営業エリアを静岡県全域、さらには中京圏・全国へと拡大し、益々の事業発展を計画しており、M&Aのシナジーを創出することで、両社の事業をより一層成長させていくことを目的としています。

 

Ⅳ.ビルメンテナンス業のM&A・事業承継のポイント

ビルメンテナンス業の会社・事業を売却するとき、「できるだけ良い条件で売却したい」という方が多いと思いますので、その良い条件を獲得するためのポイントを解説します。

まず交渉を有利に進めるためにも、買い手が見るポイントを以下で説明します。

【買い手が見るポイント】

①受託物件数、顧客数
業界における主要な売上は、月額の受託手数料とスポット業務料であり、受託手数料は受託物件数と手数料率に分けることができますが、手数料率は競合との関係でほぼ決まっているため、物件数が一番重要な指標となります。

②受注方式
受注方式は、元請けまたは下請けがありますが、収益的には元請けでないと厳しく、二次請けや三次請けでは厳しい評価になる場合があります。

③資格者数
電気主任技術者、ビル管理士、ボイラー技士、昇降設備検査資格者など社員の資格と資格者数は企業評価にあたって重要な基準となります。資格の保有数と資格の内容によって、専門業者から総合業者か判断され、事業評価に影響します。

④クレーム対応
過去にどんなクレームがあったのか、どんな対応を行ったのか、状況説明できるようにリストを作成しておくと良いでしょう。

⑤従業員の定着率
現在人手不足が最大の経営リスクとなっているため、従業員の定着率が低い場合、原因が待遇にあるのか、労働環境にあるのか、など原因を突き止めておくと良いでしょう。

⑥物件、顧客のニーズに合ったサービス
高級マンションであれば、「コンシェルジュサービス」など地域や客層と提供するサービスが合っているかどうか確認します。ポイントはセールスではなく、コンサルです。

物件やオーナーが持つ課題を明確にし、解決に導くための提案ができているかどうか確認しておきましょう。

 

【良い条件で売却するポイント】

①経営課題は伸びしろと考える
どのようなメンテナンス会社でも何らかの経営課題を抱えています。まず売却の一番のポイントは、経営課題をネガティブなものとして捉えるのではなく、「伸びしろ」として捉えることです。つまり、自社で解決できない経営課題を解決してくれる買い手が「ベストパートナー」、イコール「良い条件を出してくれる相手」ということです。例えば、採用に課題があれば、ブランド力があり採用に強い買い手と組むべきですし、資金調達に課題があれば、資金に余裕がある買い手と組むことがM&Aで良い条件を引き出す重要なポイントとなります。

②赤字の原因を明らかにする
「赤字だから売却できない」ということはありません。メンテナンス会社を売却するうえで、重要なのは赤字の原因を明らかにすることです。例えば、赤字の原因が物件数不足にある場合、「もし物件数が***以上になれば、黒字転換できる」などと、きちんと伸びしろを考慮したアピールをすべきです。さらに、赤字の原因を解消できた状態の事業計画を準備しておけば、その赤字原因、つまり伸びしろが買い手から高く評価されます。

③従業員の引き抜きを目的としたM&Aに注意
M&Aのプロセスを進めるうえで、買い手から従業員リストの提出を求められる場合があります。中には従業員の引き抜きを画策する買い手もいるため、個人名などの固有名詞は伏せてください。また、M&Aは従業員に与える影響が大きく、不安を感じる従業員は多いものです。従業員の離職につながらないよう、情報漏洩には注意してください。従業員にM&Aのことを開示するタイミングは最終契約書を締結した後が望ましいといえるでしょう。

④成約後は速やかに取引先説明会を開催
メンテナンス業務の運営において、取引先との信頼関係は重要な要素です。買い手は既存の取引先の反応を心配します。取引先の理解を得るためにも、M&Aが完了した段階で速やかに取引先説明会を行い、買い手が安心できる企業であること、M&A前と運営は何も変わらないことを伝えましょう。

 

Ⅴ.まとめ

当社は、世界的に有名なREFINITIV(旧トムソンロイター)のM&A成約件数ランキングに9年連続ランクインしております。

また、豊富な譲り受けニーズを保有しており、2005年の設立(M&A業界では老舗)以来、蓄積してきた豊富な譲り受け希望企業のニーズを保有しています。

事業の今後の成長性を考慮した事業計画作成による譲渡価額最大化や、補助金・税制の申請支援、M&A後の相続税対策、資産運用などのご相談も承ります。

M&Aアドバイザリー会社では珍しく弊社には営業ノルマがないため、弊社の都合でM&A実行を急がせることはなく、ベストなタイミング・譲渡候補先をご提案いたします。

まずは、M&A・事業承継に関する事例やお話だけ聞いてみたいという方もお気軽にご連絡くださいませ。

 

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売り手経営者のM&Aによるメリット

Ⅰ.経営者個人のメリット

1. 創業者利潤の獲得
M&A(株式譲渡)による税金は約20%で、役員給与、賞与、贈与・相続による税率よりも大きなメリットがあります。手取現金を多く残したいということであれば、親族内承継よりもM&Aが一般的に有利です。

2.個人保証・担保の解除
買い手は一般的に売り手企業よりも規模が大きく、その分金融機関からの与信が大きくなります。したがってM&Aのタイミングで経営者の個人保証・担保は解除されます(借入金の一括返済または保証の引継ぎ)。親族内承継では、前の経営者の保証が解除されないケースや承継者に保証を新たに求めたり、新旧両経営者に保証が残るケースもあります。

Ⅱ.会社のメリット

1.グループ経営による財務、人材のバックアップ、ブランディングによる採用
大手企業のグループに統合することによりブランド力、信用力が向上し、金融機関から資金調達力、人材採用力、取引先との交渉力などが強化されるため、このグループ力を生かして業績が急上昇します。株式上場の夢も実現可能性が高くなります。

2.従業員の雇用継続とモチベーションの向上
中小企業は一般的にオーナー経営になっている場合が多いため、従業員の視点から処遇の改善、個人のやりがい(能力の向上、キャリアアップ)が見込めない状態になっている場合も少なくありません。グループ経営により、業績が向上し、個人経営から組織経営に脱皮し、個人のモチベーション、やりがい、生きがい、処遇などが確実に向上します。

 

本記事の執筆者

かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社_代表取締役_佐武伸

かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社
代表取締役
佐武 伸

 

兵庫県宝塚市出身。関西学院大学商学部卒。米国サンダーバード国際経営大学院卒(MBA)。
朝日監査法人(現あずさ監査法人)にて上場企業数十社の会計監査、システム監査、株式公開準備(IPO)プロジェクト等に参画。
その後、奥田公認会計士事務所で中堅・中小企業の国内・国外税務戦略立案、事業承継対策、IPO等の幅広いコンサルティング業務に従事。専門は、M&Aコンサルティング、企業評価、会計・税務コンサルティング。
2005年にかえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社を設立、代表取締役に就任。
元中央大学ビジネススクール客員教授(M&A戦略)。

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