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不動産管理業のM&A | いい相手といい条件で成約するポイント

業種別M&A

シェア獲得競争の激化、供給物件の長期的減少、事業承継問題によって、現在、不動産管理業界で中小企業のM&Aが活発に行われています。

これは、M&Aによるグループの資金調達力、人材獲得力、ブランド力の向上が売り手経営者、売り手企業、買い手企業など当事者に与えるメリットが大きいからです。

そこで、本コラムでは、不動産管理業のM&Aで押さえたいポイントや成功の法則を分かりやすく解説します。

Ⅰ. 不動産管理業の市場規模と特徴

不動産管理業の市場規模は約4兆8,000億円(2016年)で、個人顧客を対象とする賃貸住宅と企業を対象とするオフィスでほぼ100%を占めています。

不動産管理業を行うために免許などは特段必要ありませんが、2011年から賃貸住宅管理事業者を対象に「賃貸住宅管理業者登録制度」が開始されています。

マンション管理受注件数は、業界上位10社がマンションストック数の約40%を占めており、長期的に見ても大きな変動は見られません。

 

Ⅱ.不動産管理業のトレンド

供給される管理物件数は、長期的に減少傾向が続いているため、現有する物件の資産価値の最大化が重要となってきています。

これまでは業務が定型的で労働集約型であったため、会社の規模の大小による技術、サービスなどの質の相違が少なく、中小規模の事業者が多数を占めていましたが、システムやITなどDX導入による管理業務を効率化する流れの中で、スケールメリットを生かしたサービス向上のため、中小事業者でM&Aが積極的に行われています。

このようにDX化によって効率化やサービス向上が進んでおり、よほど設備・人材投資をしてサービスの質と量を上昇させなければ大手に対抗することは厳しく、物件オーナーに管理先を変更され経営難に陥るリスクが以前に増して高くなってきています。

 

Ⅲ.不動産管理業のM&A事例

では、不動産管理業のM&A事例にはどのようなものがあるのでしょうか?

◆異業種による買収の事例

2022年4月、長野県地盤でホームセンターや建設事業を主力とする綿半ホールディングス株式会社(東証プライム)が、オフィスやテナントビル、マンション、アパート等の建物管理 ・不動産売買などの事業を展開している株式会社 AIC(以下、「AIC」という)の全株式を取得し、連結子会社化しました。

このM&Aは、両社の長年培った経営資源や強みを相互活用することにより、不動産情報の集約、物件管理機能の強化を図り、グループの更なる企業価値向上を目的として行われた異業種によるM&A事例です。このように不動産管理事業は異業種からもM&A案件として非常に人気が高い業種です。

◆上場会社グループのスピンアウト(事業切り離し)の事例 

2022年4月、安川電機の子会社である株式会社ドーエイ(以下「ドーエイ」)と株式会社スピナ(西日本鉄道株式会社の100%子会社、以下「スピナ」)は、ドーエイが保有する株式会社安川ビルサービス(以下「BB」)の株式を全てをスピナに譲渡(以下「本株式譲渡」)する契約を締結しています。

BBは、設立以来、清掃、一般・産業廃棄物収集運搬、建物管理、剪定・草刈など、安川グループをはじめとした顧客へのサービスを提供しています。一方、スピナは、北九州で不動産賃貸業、総合ビル管理業、防疫業、緑化環境事業など幅広いサービスを提供しております。

このM&Aは、安川グループの資本効率化を図るとともに、スピナが保有する総合ビル管理業にかかわる豊富な経験とネットワークを活用することによる更なる品質、効率、サービスの向上を目的として行われたものです。

◆不動産近接事業者(開発、販売、賃貸)による相乗効果の高い買収事例

2022年10月、不動産開発から販売・賃貸・仲介に至るまでの一連のサービスをワンストップで提供しているヤマイチ・ユニハイムエステート株式会社(東証スタンダード市場)は、ニューライフサービス株式会社(大阪市東住吉区)の発行済の全株式を取得し、連結子会社化しました。

ニューライフサービスは、不動産の賃貸、管理、代理業他を行っており、ヤマイチ・ユニハイムエステートが扱っていない分譲マンションの管理に関して長年の実績とノウハウを有しています。

このM&Aで、ヤマイチ・ユニハイムエステートは、企画・販売した分譲マンションの管理業務をニューライフサービスに委託することが可能となり、マンション顧客と継続的な関係性を保つことにより、グループとして将来の住替需要やリフォームニーズへの対応を図ることが可能となります。

 

Ⅳ.不動産管理業のM&A・事業承継のポイント

不動産管理業の会社・事業を売却するとき、「できるだけ良い条件で売却したい」という方が多いと思いますので、その良い条件を獲得するためのポイントを解説します。

まず交渉を有利に進めるためにも、買い手が見るポイントを以下で説明します。

【買い手が見るポイント】

①管理件数、戸数

不動産管理における主要な売上は、管理受託手数料であり、管理物件数、賃料総額、手数料率に分けることができますが、手数料率は競合との関係でほぼ決まっているため、管理物件数が重要な指標となります。

②マンション管理組合との関係

マンション管理組合との役割分担など良好な関係を維持しているかによって今後の解約リスクが決まりますので評価対象となります。

③マンション管理士などの資格者数

マンション管理士を有効に活用することにより管理組合業務の一部受託やコンサルティング機能など今後付加価値の高いサービスを提供することができるため、資格者は多いほうが有利となります。

④クレーム対応

過去にどんなクレームがあったのか、どんな対応を行ったのか、状況説明できるようにリストを作成しておくと良いでしょう。

⑤従業員の定着率

現在人手不足が最大の経営リスクとなっているため、従業員の定着率が低い場合、原因が待遇にあるのか、労働環境にあるのか、など原因を突き止めておくと良いでしょう。

⑥物件、顧客のニーズに合ったサービス

高級マンションであれば、「コンシェルジュサービス」など地域や客層と提供するサービスが合っているかどうか確認します。

⑦入居率、サブリース

サブリースを行っている事業者においては、物件ごとに転貸賃料でオーナーに対する支払い賃料を賄えているか、チェックが必要です。転賃貸料は物件入居率がポイントのため、客付のための営業戦略、賃料戦略も重要な視点です。

 

【良い条件で売却するポイント】

①経営課題は伸びしろと考える

どのような不動産管理会社でも何らかの経営課題を抱えています。まず売却の一番のポイントは、経営課題をネガティブなものとして捉えるのではなく、「伸びしろ」として捉えることです。つまり、自社で解決できない経営課題を解決してくれる買い手が「ベストパートナー」、イコール「良い条件を出してくれる相手」ということです。例えば、採用に課題があれば、採用に強い買い手と組むべきですし、資金調達に課題があれば、資金に余裕がある買い手と組むことがM&Aで良い条件を引き出す重要なポイントとなります。

②赤字の原因を明らかにする

「赤字だから売却できない」ということはありません。不動産管理会社を売却するうえで、重要なのは赤字の原因を明らかにすることです。例えば、赤字の原因が管理件数不足にある場合、「もし物件数が***以上になれば、黒字転換できる」などと、きちんと伸びしろを反映させた説明をすべきです。さらに、赤字の原因を解消できた状態の事業計画を準備しておけば、その伸びしろが買い手から高く評価されます。

③従業員の引き抜きを目的としたM&Aに注意

M&Aのプロセスを進めるうえで、買い手から従業員リストの提出を求められる場合があります。中には従業員の引き抜きを画策する買い手もいるため、個人名などの固有名詞は伏せてください。また、M&Aは従業員に与える影響が大きく、不安を感じる従業員は多いものです。従業員の離職につながらないよう、情報漏洩には注意してください。従業員にM&Aのことを開示するタイミングは最終契約書を締結した後が望ましいといえるでしょう。

④成約後は速やかに顧客説明会を開催

管理業務の運営において、取引先との信頼関係は重要な要素です。買い手は既存の取引先の反応を心配します。取引先の理解を得るためにも、M&Aが完了した段階で速やかに取引先説明会を行い、買い手が安心できる企業であること、M&A前と運営は何も変わらないことを伝えましょう。

 

Ⅴ.まとめ

当社は、世界的に有名なREFINITIV(旧トムソンロイター)のM&A仲介の成約件数ランキングに9年連続ランクインしております。

また、豊富な譲り受けニーズを保有しており、2005年の設立(M&A業界では老舗)以来、蓄積してきた豊富な譲り受け希望企業のニーズを保有しています。

事業の今後の成長性を考慮した事業計画作成による譲渡価額最大化や、補助金・税制の申請支援、M&A後の相続税対策、資産運用などの無料相談も承っております。

M&Aアドバイザリー会社では珍しく弊社には営業ノルマがないため、弊社の都合で売り手企業様にM&A実行を急がせることはなく、完全成功報酬のため着手金や中間金はなくM&Aが成約した場合のみ手数料をいただくため、ベストなタイミング・譲渡候補先をご提案いたします。

まずは、M&A・事業承継に関する事例やお話だけ聞いてみたいという方もお気軽に当社の無料相談をご活用くださいませ。

 

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売り手経営者のM&Aによるメリット

Ⅰ.経営者個人のメリット

1. 創業者利潤の獲得
M&A(株式譲渡)による税金は約20%で、役員給与、賞与、贈与・相続による税率よりも大きなメリットがあります。手取現金を多く残したいということであれば、親族内承継よりもM&Aが一般的に有利です。

2.個人保証・担保の解除
買い手は一般的に売り手企業よりも規模が大きく、その分金融機関からの与信が大きくなります。したがってM&Aのタイミングで経営者の個人保証・担保は解除されます(借入金の一括返済または保証の引継ぎ)。親族内承継では、前の経営者の保証が解除されないケースや承継者に保証を新たに求めたり、新旧両経営者に保証が残るケースもあります。

Ⅱ.会社のメリット

1.グループ経営による財務、人材のバックアップ、ブランディングによる採用
大手企業のグループに統合することによりブランド力、信用力が向上し、金融機関から資金調達力、人材採用力、取引先との交渉力などが強化されるため、このグループ力を生かして業績が急上昇します。株式上場の夢も実現可能性が高くなります。

2.従業員の雇用継続とモチベーションの向上
中小企業は一般的にオーナー経営になっている場合が多いため、従業員の視点から処遇の改善、個人のやりがい(能力の向上、キャリアアップ)が見込めない状態になっている場合も少なくありません。グループ経営により、業績が向上し、個人経営から組織経営に脱皮し、個人のモチベーション、やりがい、生きがい、処遇などが確実に向上します。

 

本記事の執筆者

かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社_代表取締役_佐武伸

かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社
代表取締役
佐武 伸

 

兵庫県宝塚市出身。関西学院大学商学部卒。米国サンダーバード国際経営大学院卒(MBA)。
朝日監査法人(現あずさ監査法人)にて上場企業数十社の会計監査、システム監査、株式公開準備(IPO)プロジェクト等に参画。
その後、奥田公認会計士事務所で中堅・中小企業の国内・国外税務戦略立案、事業承継対策、IPO等の幅広いコンサルティング業務に従事。専門は、M&Aコンサルティング、企業評価、会計・税務コンサルティング。
2005年にかえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社を設立、代表取締役に就任。
元中央大学ビジネススクール客員教授(M&A戦略)。

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