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M&Aのリスクとは?買収側・売却側それぞれのリスクと対策を解説

M&Aのお役立ち情報

こんにちは。完全成功報酬型M&A仲介 かえでファイナンシャルアドバイザリー代表の佐武です。

M&Aには多くの利点があり、売り手経営者、譲渡企業、譲受企業の三方に大きなメリットをもたらしますが、いくつかのリスクも存在し、万が一対処方法を間違えれば3者にとって深刻な経済的損失をもたらす可能性があります。

M&Aを実施する際には、三者がこれらのリスクを理解しておくと、M&Aを進めるにあたり発生するトラブルやクレームを事前に回避することができます。

そこで今回は、M&A時に起こりうる可能性のあるリスクについて解説します。

1.M&Aに関する代表的なリスクとは?

M&Aには多くのリスクが存在します。

ここでは、代表的な4つのリスクである経営リスク、財務リスク、法務リスク、人材リスクについて説明します。

①経営リスク

経営リスクとは、業績低迷や従業員のマネジメント等、経営全般に関するリスクのことです。

将来、新たに発生する技術革新、マクロ環境の変化、新規参入による競争激化など現在は成長分野であっても将来の事業の成長性や業績に不安がある、などといった事業全般に関するリスクのことです。

また、例えば、従業員の労働時間を適切に管理していないことにより、未払残業代が多額に発生している可能性など、人事に関するリスクも最近目立ってきています。

さらに、M&A後の経営統合(PMI)において、社風や文化、オペレーションのフロー、システム、人事制度などの統合作業がうまく行かないリスクも考えられます。

②財務リスク

財務リスクとは、M&Aで譲り受ける事業に関する資産、負債、資金繰りなど財務面のリスクのことです。具体的には、下記のようなリスクがあります。

イ.簿外債務
簿外負債は、財務諸表(注記事項を含む)には表れていない、買い手企業側から見て将来不利益となるような事項全般を言います。中小企業のM&A案件でよく問題となる項目としては、未払税金、未払残業代、役員・従業員の退職引当金、パート社員等の社会保険未加入、保証債務などがあります。

ロ.架空資産・不良資産計上
貸借対照表には計上されていても実際には存在していない売掛金、在庫、貸付金や回収が実質不可能な資産などを言います。過去の粉飾の結果、このような資産が計上されている可能もあり、そのようなケースでは経営者の資質が問われることがあったり、案件自体がブレイクすることもしばしばあります。

ハ.資金繰り
中小企業のM&Aでは、税務署に提出する決算書にCF計算書が添付されていないことが多いため、資金繰り状況をあまり分析せずにM&Aを進めているケースがあります。

したがって、まず会計事務所に依頼して過去3~5年のキャッシュフロー(CF)計算書を入手し、CFの推移を把握することが大事です。CFがタイトな場合、M&Aが成約するまでに資金が枯渇する可能性もあります。

このようなケースでは、月別、日別資金繰り予定表を作成し、買い手が見つかるまで時間的余裕がないと判断した場合には、再生型M&A,自主廃業、破産などの法的手続きを検討せざるを得ない場合もあります。

③法務リスク

法務リスクは、売り手企業の法務全般に関するリスクです。

具体的には、以下のようなリスクがあります。

イ.株式・株券に関するリスク
会社設立から現時点までの株式移転の経緯が不明、株主総会、取締役会などの資料が保管されていない、株主名簿がない、株券がない、など株式全般に関する瑕疵や疑義があるリスクです。

ロ.契約に関するリスク
重要な取引先や事業に不可欠な資産の使用に関する契約の継続が難しくなる、取引先との契約で不利な条件が設定されている、などのリスクです。

ハ.係争事件、クレームに関するリスク
これまでに提起された係争事件やクレームだけでなく、現在進行している係争中の訴訟、紛争についてのリスクです。これらについては、訴訟関係資料、クレームリストを入手し、その内容と終結時に予想される財務インパクトなどを評価します。またクレームリストで将来紛争に発展する可能性のあるトラブルやクレームの有無、内容、影響額などを推定します。

④人材リスク

M&Aによって役員・従業員の役職、配置、組織体制などが変更される場合、役員・従業員の不安感が生じ、離職リスクが高まることがよくあります。特に、買い手企業側でM&A後の人材管理の経験やノウハウがあまりなく、さまざまな問題を抱えている場合には、従業員の不満や離職リスクが高まることになります。

具体的に人材に関しては、以下のようなリスクが考えられます。

イ.従業員のモチベーション
M&A後、従業員のモチベーションやモラルが低下することにより、従業員が大量離職する等のリスクがあります。これを回避するには、買い手企業の方でストックオプションを用意したり、コミュニケーションを密にしたりするなど積極的な対応策を買い手企業側で用意しておく必要があります。

ロ.PMI(統合作業)でのリスク
M&A後、評価制度、給与体系、福利厚生などを形式的に統合しても、それに対して不満を持つ人材は必ず存在し、結果、それらの人材が起点となって運用面でうまくいかないリスクが発生します。

 

2.売り手側が注意すべきM&Aのリスク

M&Aの売り手側では、契約を締結し、クロージング(決済)が終わったらあとは安心と考えるかもしれませんが、売却前も売却後も以下のようなリスクが存在しますので注意が必要です。

①情報漏洩

M&Aに関する情報が漏洩すれば、役員・従業員、取引先、銀行などに大きな影響を及ぼし、大量離職、突然の取引中止、などのリスクが生じる場合があります。

②事業が売却できない

M&Aを進めても、業種、タイミング、条件、業績、金融環境などによっては買い手を見つけることができないこともあります。最悪の場合、M&Aは難しいため、廃業や倒産に至ることもあります。

③M&A前の事業運営に関する損害への責任

買い手企業側との譲渡契約書の中で売り手側の表明保証違反、気味違反の規定に基づき、契約前の事業運営に関する違反、粉飾などで、クロージング後、買い手企業側から損害賠償を求められる可能性があります。

④安値で売却する

売り手側のタイミング、財務状況、金融環境などによっては交渉が不利になりやすく、結果的に価額を安値で合意してしまうリスクがあります。

そうならないためにも早めにM&Aの専門家に相談し、有利な立場で交渉できるタイミングを計り、M&Aの準備を十分に行い、その間に企業価値を高める方法などをアドバイスしてもらいましょう。

⑤人材の流出

M&Aによって売却した企業の役員・従業員が、買い手企業と文化や理念の違いに適応できない場合、退職するリスクが高まります。また、買収後に、売り手側の企業に採用されていた人事制度が変更される場合、従業員の不満が高まり、退職などに至る可能性もあります。

早期に退職が発生した場合、買い手から話が違うなどとクレームを受けたり、最悪の場合、訴訟に発展するケースもあります。

 

3.買い手企業が注意すべきM&Aのリスク

M&Aの買い手企業は、買収後も、残った役員・従業員と経営を進めていきます。

M&Aの契約を締結し、クロージング後、経営を進めていく過程でいろいろな問題が発見されるケースが増えてきています。

このように、M&Aのリスクは、取引の交渉の間だけのものではなく、どちらかと言いますとM&Aのクロージング後に突然発生してくることの方が多いと言えます。

ということでここでは事前に必ず想定しておくべき買い手側のリスクを解説します。

①財務リスク

買収企業の財務状況が、買収が完了する前と比べて想定外に悪化するリスクがあります。この原因としては様々ですが、マクロ環境の急激な変化、新経営体制の問題、大量離職、取引先の離脱、簿外負債の発生、資産の減損などです。

②人材流出

売り手企業の役員・従業員が、買収後に企業を離職する可能性があります。従業員の不安や不満、文化の相違、新経営体制への抵抗などが原因となるケースです。

③企業統合の失敗

買い手企業と売り手企業とが、様々な経営資源を統合していく作業は、容易ではありません。両社の文化や組織、ビジネスモデルの相違など、さまざまな要因が企業統合を複雑化させます。統合作業が失敗した場合、買い手企業は売り手企業の業績や成長力を棄損するリスクがあります。

④高値による買収

入札方式で取引をした場合、競合企業と条件面で激しく競争した結果、予想外の価格つり上げ競争になってしまい、高値による買収ということになってしまうリスクがあります。

そのケースでは想定していた収益力や利回りが実現せず、結果的にM&Aが失敗ということになりかねません。

⑤業界や市場の変化

売り手企業の業界や市場には、時に予想外の変化が発生することがあります。成長していた市場が飽和状態になったり、技術進歩によって競争環境が激変し、突然、競合他社との競争に負けてしまうといったリスクが発生することがあります。

 

4.M&Aのリスクへの対処方法

M&Aを売り手、買い手双方で成功させるためにはリスクをコントロールして、これまで説明してきましたあらゆるリスクを回避する施策を講じる必要があります。

これらのM&Aリスクに売り手、買い手がそれぞれ対処するために、以下のような方法があります。

(売り手のリスクマネジメント)
売り手は、契約締結後に買い手から突然クレームなどが受け、最悪、訴訟などのトラブルに発展することもあります。
買い手からの補償要求金額が、株式譲渡代金以上となる場合もあり、そのようなトラブルにならないように事前に十分リスクマネジメントを行う必要があります。

①M&A進行中に信頼関係を構築する
M&Aのプロセスでは、売り手と買い手はそれぞれ自分の希望条件を実現させるべく、場合によっては厳しいやりとりをせざるをえない場合があります。ただ、双方やりすぎますと契約締結はできたはいいですが、その後、信頼関係が崩壊し、不信感が醸成し、その感情的な部分でトラブルやクレームに発展するケースが散見されます。

小職の経験によりますと、条件交渉はどちらかの完全試合ではなく、お互いが多少譲ったという程度の結果(それぞれ妥協した条件)が望ましいと考えています。

逆にM&A進行中に信頼関係を構築することができればその後の統合作業なども順調に進み、結果として双方WIN-WINのM&Aを実現することが可能となります。

②隠し事は絶対にしない
売り手は、デューデリジェンスの中で聞かれなかった事項、例えば、過去の粉飾、従業員とのトラブル、係争中の事件、簿外負債、などがあったとしても、積極的に買い手側に開示し、M&A手続きの進行中の早いタイミングで相談し、一緒に対応方法を協議すべきです。
そうすることによってかえって相手への信頼が増し、その後のM&A手続きがスムーズに運ぶことが多いと思います。

 

(買い手のリスクマネジメント)
①デューデリジェンスの実施
買い手企業は、売り手企業の財務状況、法的問題、人材管理、環境問題などについて徹底的に調査することが必要です。デューデリジェンスを実施することで、リスク要因を特定し、条件変更、契約書での手当、スキームの変更などの対策を講じることができます。

②契約書での表明保証や補償規定の設定
買い手企業は必ずM&Aの譲渡契約を弁護士にチェックしてもらい、DDの結果をふまえて、表明保証や補償規定を詳細に設定してもらう必要があります。そうすることによって最悪の事態となっても売り手へ損害賠償の請求ができるからです。
したがって中小・零細企業、個人事業のM&Aの場合でも、DDのコストはセーブすべきではないと考えます。

③統合後のモニタリング
買収後、統合が完了した後も、統合された企業の業績や経営状況を継続してモニタリングすることが必要です。これにより、買収後に生じる可能性のある問題を早期に発見し、対策を講じることができます。

④コミュニケーションの確保
買収後、役員・従業員や顧客、サプライヤーなどとのコミュニケーションを積極的に確保することが必要です。特に、役員・従業員に対しては、買収に伴う変化や不安に対して適切に対応し、意思決定に参加する機会などを多く与えることが重要です。

以上のように、M&Aリスクに対処するためには、リスクの種類や業界、市場に応じた適切な対策を講じることが重要です。M&Aには多くのリスクが伴いますが、十分な準備と適切な対策を講じることで、リスクを軽減し、M&Aの成功につなげることができます。

 

5.正しいM&Aは企業を成長に導く手段になる

これまで説明してきましたように、M&Aは、売り手経営者、譲渡企業、譲受企業の三方に大きなメリットをもたらします、

ただ、案件によっては、このようなリスクに過剰反応してしまって魅力的なビジネスチャンスであるにも関わらず、取締役会、投資委員会などで取りやめになってしまうこともあります。非常にもったいないことです。

これまで説明してきましたリスクの対処方法を参考にしていただき、M&Aに詳しい専門家と案件を進めることによってこのようなチャンスロスを回避することができますのでぜひチャレンジしてみてください。

 

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本記事の執筆者

かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社_代表取締役_佐武伸

かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社
代表取締役
佐武 伸

 

兵庫県宝塚市出身。関西学院大学商学部卒。米国サンダーバード国際経営大学院卒(MBA)。
朝日監査法人(現あずさ監査法人)にて上場企業数十社の会計監査、システム監査、株式公開準備(IPO)プロジェクト等に参画。
その後、奥田公認会計士事務所で中堅・中小企業の国内・国外税務戦略立案、事業承継対策、IPO等の幅広いコンサルティング業務に従事。専門は、M&Aコンサルティング、企業評価、会計・税務コンサルティング。
2005年にかえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社を設立、代表取締役に就任。
元中央大学ビジネススクール客員教授(M&A戦略)。

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