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日本酒業界のM&A・事業承継の傾向と分析【セミナー動画付き】

業種別M&A

酒は、「百薬の長」と言われ、その国の食文化や地域社会とも関わりの深い伝統性を有した代表的な嗜好品の一つです。
酒の国内出荷数量は平成11年度をピークとして減少してきていますが、近年では、商品の差別化、高付加価値化、海外展開等に取り組む事業者も少なくありません。また、酒は地方創生やクールジャパン等の観点からも重要なコンテンツであり、こうした新たな観点からの展開も拡がっています。更に、日本産酒類への国際的な評価の高まりから、輸出も拡大しています。

1.国内市場の状況

国内市場の状況は、少子高齢化や人口減少等の人口動態の変化、高度経済成長後における消費者の低価格志向、ライフスタイルの変化や嗜好の多様化等により、国内市場は全体として中長期的に縮小してきています。

 

他方で、商品の差別化や高付加価値化、地域連携や海外展開等に積極的に取り組み、需要拡大につなげている事業者も少なくありません。

日本酒は「米」と「水」と「麹」を原料にして造られます。酒造りに特化した米は120銘柄を超え、米が違えば酒の香味は異なります。さらに水が違えば、飲み口に差が生まれ、酵母の種類によっても香りは大きく異なります。また、造り手が違えば同じ味わいにならないことから、酒は造り手の個性、人格を反映すると言われています。

日本酒の課税移出数量をタイプ別に区分して見ると、普通酒については減少傾向にありますが、純米酒及び純米吟醸酒については、平成20酒造年度の8.2万KLから令和元酒造年度は10.1万KLと23.2%増加しています。

 

 

更に、日本酒製造業の出荷金額の単価は上昇し、出荷金額も平成24年から増加基調にあります。これらは、より高付加価値の商品の需要の高まりを表すものと考えられます。

 

日本酒業界の大半は中小企業ですが、商品の差別化、高付加価値化、海外展開等に取り組み、成長している事業者も少なくありません。最近では、異業種やスタートアップ、更には外国人が我が国の酒類業界に参入する動きも見られます。

 

2.日本産酒類の輸出の状況

酒の輸出については、日本酒やウイスキー等の日本産酒類の国際的な評価の高まり等を背景に、近年は大きく伸長を続けています。

令和2年の日本産酒類の輸出金額は、約710億円(対前年7.5%増)となり、平成24年以降、9年連続で過去最高を記録しました。

輸出金額を品目別にみると、ウイスキーが最も多く約271億円(対前年39.4%増)、次いで日本酒が約241億円(対前年3.1%増)となりました。また、輸出金額が上位の国・地域を見ると、中華人民共和国が約173億円(対前年70.9%増)、次いでアメリカ合衆国が約138億円(対前年11.6%減)、香港が約100億円(対前年59.5%増)となり、中華人民共和国は初めて輸出金額で首位に立ちました。

 

日本酒の輸出金額は、平成22年以降、11年連続で過去最高を記録しました。日本酒の輸出金額が上位の国・地域を見ると、香港が約62億円(対前年56.7%増)と初めて輸出金額が最も多くなり、次いで中華人民共和国が約58億円(対前年15.8%増)、令和元年において最も多かったアメリカ合衆国は新型コロナウイルス感染症の影響により約51億円(対前年25.0%減)となりました。

欧州市場の更なる開拓は今後の課題となっています。輸出単価も11年連続で増加しており、マカオ、香港、シンガポール等が上位となっています。

 

 

3.酒類業界の課題

こうした状況の中、酒類市場や需要の拡大、酒類業の健全な発達に向けた、酒類産業振興への取組、特に伸びしろが大きい海外市場への輸出促進を中心とした振興策の強化はこれまで以上に重要であり、主に以下のような課題に取り組むことが必要であると考えられます。

【商品の差別化・高付加価値化】

酒類の国内需要が長期的に減少傾向にあり、これまでの取組を継続するだけでは今後の需要の回復・拡大が見込めない中で、酒類事業者には、従来型の商品の開発・製造・販売等の方法にとらわれず、新たな商品・サービスの創造、新たな市場の開拓に取り組み、経営改革や酒類業界の構造転換を推進していくことが求められています。

また、近年、異業種やスタートアップ等による新規参入や、日本酒の出荷金額の単価上昇(高付加価値化)の動き等も確認されており、こうした動きが酒類業界全体の動きとなることが期待されます。

【海外市場の開拓(輸出促進)】

現在、酒類市場は世界全体で100兆円を超える規模があるとされています。他方で、日本産酒類の輸出額は近年大きく伸長を続けているものの、依然として世界の酒類市場のわずか0.1%にも満たない規模にとどまっていることに鑑みれば、日本産酒類の認知度向上及び販路拡大等を通じた海外市場の一層の開拓は、酒類業の更なる発展のために必要不可欠な取組です。

海外の流通市場においては、地場の流通大手が圧倒的な市場シェアを占めるケースもあり、これら流通大手との取引を実施・継続することが販路拡大において重要となります。

そのためには、商品の品質の高さに加え、海外における認知度の高さ(「商品を陳列すれば売れる」こと)が求められています。

しかし、現状では、日本産酒類の海外における認知度は、一部の銘柄を除きまだまだ低いことが課題となっており、また、商品の選定・開発やその提供方法について、現地の消費者の嗜好やニーズをより一層踏まえていく(マーケットインの発想)必要があると考えられます。

また、これまでは、輸出拡大に当たっての重点品目やターゲット国、品目・国ごとの具体的な輸出戦略を策定しておらず、戦略策定のために必要となる現地の制度や規制、消費者の酒類の嗜好等を把握するための市場調査も十分とはいえない状況にあります。

更に、輸出先国によっては、酒類に高い関税が課されているほか、その取扱いに様々な規制があり、例えば、米国では、流通可能なワインの容量に制限があります。

【技術の活用と人材の確保等】

酒類業従事者の高齢化や、なり手不足が進む中、特に日本酒製造業者においては、杜氏等の専門家が有する技術やノウハウの継承が課題となっています。

生産体制の見直しなどを通じて、人材の確保・育成や働きやすい環境の整備、事業承継等の課題に取り組むとともに、醸造技術をはじめとする日本酒等の文化的価値の保存に努めることにより、日本の伝統的な酒造りの技術について、その円滑な継承や更なる開発・活用を進める必要があります。

【中小企業支援】

酒類事業者は、中小・零細企業がその多くを占めているものの、歴史的・文化的に地域社会とのつながりが深く、地域の中核的な存在として地域経済やコミュニティの活性化等において重要な役割を果たしています。

また、酒類及び酒類事業者は、経済・観光資源として地方創生の観点から有望なコンテンツであり、酒類業界にとどまらず、地域社会全体の活性化・構造改革をなし得る可能性を有しています。

こうした観点から、酒類事業者が、社会経済情勢の変化等に適切に対応するとともに、地方創生の実現・推進により密接に関わっていけるよう、業界団体や酒類事業者による技術や文化の継承等の取組に加え、酒類事業者のニーズを踏まえた効果的な支援を実施する必要があります。

 

4.おわりに

M&A業界において、酒造は人気業種ではあるものの、中小・小規模な酒造の財務状態は、決して良好なものではなく、多くの企業が赤字で買手がつきにくい状態だと考えられます。更に、昨今のコロナ禍の影響から、特に地方の酒造は地元の飲食店などが主な取引先であることも多く、これまで以上に苦しい状況が続いているかと思います。

中小・小規模な酒造においては、これらの課題に対応し、永年続く伝統を絶やさず、今後も永く愛される酒造として生き残っていくためにも、M&Aは有効な手段であり可能性を広げます。

 

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