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ビルオーナーの悩みを解決する不動産M&Aの実務 ~不動産賃貸業、資産管理会社は不動産M&Aで売却すればお得!~_佐武 伸

このコラムでは、今後、急速に拡大が見込まれる不動産M&Aについて解説します。
不動産M&Aとは、不動産を保有する法人(資産管理会社や不動産賃貸業)の株式を売買すること、つまりM&Aで売買することをいいます。事業承継問題は、メーカー、卸売会社、小売業など一般的な事業会社だけの問題ではなく、不動産賃貸会社や資産管理会社(以下、「不動産会社」という)にも及んでいます。
不動産会社は、通常の事業に比べ、ビジネスモデルがシンプルで、賃貸管理に伴う事務負担などが少ないイメージから、後継者がサラリーマンや専業主婦であっても当然引き継ぐものと考えられています。しかし、昨今、配偶者や子供世代で、不動産は“負動産”なのでいらない、管理が面倒、CASH IS BESTと考えるひとが増えてきており、引継ぎ手が見つからないという相談が急増しています。
このコラムでは、このような時代背景から、親世代の不動産会社をM&Aという手法を使って事業承継する方法のメリットや実務上のポイントなどについて解説します。

1.不動産M&Aとは

不動産M&Aは、不動産を保有する法人(資産管理会社や不動産賃貸業)の株式を売買すること、つまり法人をM&Aで売買することをいいます。

不動産を個人ではなく、法人で所有する手法は、十数年前から、サラリーマン投資家が増加するに伴って、税理士や会計事務所などのアドバイスにより増えてきたと考えられます。ただ、このサラリーマン投資家も、昨今、高齢化に伴い、その保有する不動産会社の事業承継問題が脚光を浴びてきています。

今後、少子高齢化が進み、空き家も増え、素人が不動産会社を経営する環境はますます厳しくなります。親世代は不動産投資に興味があったが、子供世代は、不動産よりもCASHと考える人が増えてきています。したがって、不動産会社の出口戦略、後継ぎの問題を不動産M&Aで解決し、サラリーマン投資家からプロの投資家へ集約されていく流れが急速に展開すると予想されています。

2.不動産M&Aが人気の背景

不動産の法人所有は、サラリーマン投資家が増加するに伴い、税理士や会計事務所が、不動産を個人ではなく、法人で所有することをアドバイスするようになったことがあげられます。主な理由としては、以下のような節税です。

1.運営時の節税

法人で所有し、配偶者や子供を取締役に就任させ、役員報酬などを支払うことによって賃貸収入からの利益を分散させることができます。役員報酬には所得税や住民税がかかりますが、法人と個人のトータルで考えて節税することが可能になります。なお、個人で所有する場合は、不動産所得で申告しますが、個人では所得を分散することは法人に比べ難しく、経費として認められるものも限られます。また税率も法人は約30%ですが、個人は累進課税方式となるため、最高で約55%(住民税を含む)となり、税率の観点からも法人保有が有利となるケースが多いと思います。

2.売却時の節税

個人が保有する不動産を売却する場合の税率は、売却する年の1月1日時点で所有期間が5年以下の場合は、約40%、5年超の場合は約20%(住民税などを含む)です。法人の場合は、売却益に対して約30%ですが、役員退職金の支給など、多様な節税策が可能なため、個人に比べ、一般的に税金を抑えることが可能です。

3.相続税対策

不動産を個人ではなく、法人で所有することにより、株価評価の引き下げも可能です。相続した時点で株価を評価する場合に、法人が所有する不動産の評価は、その不動産を取得して3年以内の場合は取引価格(時価)ですが、3年を超えていると、路線価評価(一般的に取引価格より低く算定される)や、事業の規模によりケースによっては、類似業種比準方式というさらに株価を引き下げる方式を採用することができます。

このように、法人で不動産を保有することにより、個人で所有するよりも、相続対策になるということで法人所有が加速したという経緯もあります。

3.売り手であるビルオーナーが不動産M&Aを活用するメリット

不動産所有法人をM&Aで売却する場合のビルオーナーのメリットとして以下の点を挙げることができます。

1.売却時の税金が節約できる

【事例】

(1)法人が保有する不動産を売却し、売却後の資金を配当する場合(売買金額10億円)

①10億円×(1-30%)=7億円(税引後利益)

・売買金額=売却益と仮定

・法人税率は30%

②7億円×(1-50%)=3.5億円(株主の手取り額)

・配当所得の所得税率等は50%と仮定したが、複数回に分散させることにより、節税可能。

(2)不動産M&A(株式譲渡代金7億円→不動産の時価から負債を控除した時価純資産)

7億円×(1-20%)=5.6億円(手取り額)

・株式譲渡代金=売却益と仮定

・所得税率等は20%と仮定

(3)不動産M&Aのメリット{(2)-(1)}

5.6億円-3.5億円=2.1億円のお得

2.時間、手続き、コスト

不動産M&Aの場合、不動産自体を売却するのではなく、法人の株式を売買しますので、不動産の売却に伴う登記手続きや費用、時間がかかりません。株式譲渡契約書の締結と決済で終了しますので、不動産自体の売買に比べて、時間、手続き、コストの面で格段に少なくて済みます。

3.株主の相続発生による財産(株式=実質不動産)の分散や共有を解決できる

不動産を所有している法人の株式は、相続を積み重ねるうちに親族に分散していきます。また相続が開始し、遺産分割が終了していない段階では共有という株主の権利行使も制限される不安定な状況におかれます。過度の株式の分散や共有状態を回避するためにも、早期の不動産M&Aによる現金化は有効です。

4.買い手が不動産M&Aを活用するメリット

1.不動産取得時の時間、手続き、コストが削減できる

買い手にとって、不動産M&Aは、不動産自体の購入ではなく、不動産を所有する法人の取得になりますので、不動産購入に伴う仲介手数料、登録免許税、不動産取得税、司法書士の手数料など取得にかかる費用がかかりません。

2.不動産ビジネスを早期に展開できる

不動産M&Aは、不動産を多数所有している法人の株式を購入することにより、スピーディーに不動産事業を展開することも可能です。また、駅前、商店街などの一等地の不動産はほとんど法人所有なので不動産M&Aで優良な物件を獲得できる可能性もあります。さらに決算書を確認することにより、正確な収支の状況や借入金の残高、返済状況なども把握できますので、安心して検討することが可能です。

3.他と競争せずに購入できる

不動産M&Aは、通常、相対取引で交渉が行われるため、ほかの買収希望者と競争せずに優良物件が購入できるチャンスがあります。

5.不動産M&Aのまとめ

不動産M&Aは、一つの法人で不動産事業とほかの事業を運営しているケースでも、会社分割を活用することにより、不動産事業とほかの事業をそれぞれ別法人に分割し、不動産会社のみ売却するなどいろいろな対応策が可能です。

コロナ終息後、ビジネスの選択と集中が加速することが予想される中で、不動産M&Aが日本の中堅中小企業の事業承継対策、事業の新陳代謝、生産性向上に資することを期待されています。

 

かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社

代表取締役

佐武 伸 Shin Satake

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