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事業承継と後継者育成について

M&Aのお役立ち情報

こんにちは。かえでFAです。近年、日本の中小企業の事業承継について盛んに議論が行われています。自身の引退時期をどうするのかに直結する問題ですから、中々腰の重い問題でしょうし、時間がかかるのは当たり前の話だと思います。中小企業庁が作成した事業承継ガイドラインでは、事業承継には準備期間を含めると10年程かかるとの記載があるほどです。株式といった資産の承継だけではなく、その会社の伝統やミッションの承継は、経営の基盤になるものであり、後継者にそれを引き継ぐには本当に時間がかかるものであることは想像に難くありません。

1.初めに

本日は、親族内で事業承継をしている会社の中で、後継者への事業承継が上手くいっている会社を紹介します。事業承継は今、国を挙げて盛んに第三者への譲渡が叫ばれていますが、経営者にとって一番の理想は、親族内で事業承継を行い、創業の価値観を引き継ぐことだと思います。私がそう考える理由は、会社というものが、特に、株式会社が日本において成立していく過程で、生活協同体としての機能も有してきたことにあり、『家・イエ』的な要素を含むためで、会社=家・イエ的な価値観の継承が上手くいくのは、やはり後継者が親族の場合が一番良いだろうと考えるからです。

それでは、今日の日本国内において、事業承継が上手くいっている企業の事例紹介と、どのような流れでそれが行われたのか、どういう考えを持ち合わせているのか、星野リゾート社代表の星野佳路氏の著書『星野佳路と考えるファミリービジネスの教科書』(日経BP社)、日本ファミリービジネス学会編集の『日本のファミリービジネス』(中央経済社)等を参考にしながら紹介していきたいと思います。

2.事例から見る親族内承継の形

■相模屋食料社のケース
1社目は、「ザクとうふ」で有名になった、豆腐業界の雄、相模屋食糧社です。この会社の事業承継は、娘婿(※戸籍上はなっていないが事実上)が社長となったケースです。現社長である鳥越氏が入社後、15年で売上高が7倍になっており、後継者への事業承継が凄く上手くいっているモデルの一つだと思います。

信頼構築の期間

鳥越氏は29歳で入社しました。元々、会社を経営するということに憧れがあり、奥様の実家であった相模屋食料社の千代社長から自身の後継者になる打診を受け、入社しました。最初の2年間は、豆腐の製造現場で働いたそうです。午前1時から働くハードな環境だったのですが、周囲からの評判も良く、先代社長からの信頼を勝ち取っていきました。鳥越氏としては、製造業である以上、現場のことを全て知っておくべく、当たり前のこととして従事されたようです。

・事業承継のポイント

鳥越氏が社長になってから、基本的には、先代社長が経営に口を出すことはしないようにしたようです。それができたのは、社長就任前の勤務態度であったり、大きな方針として会社をどうするのかという、後継者である鳥越氏と意思共有できていたためであると、先代社長は回想されています。

また、娘婿であるから、親族と違い距離感がちょうどよいことも、後継者への事業承継がスムーズに進んだ理由のようです。

この事例から考えられることは、娘婿という立場が、親族よりも遠く、従業員よりは近い距離で関わることのできる立場にあって、それが価値観をうまく継承できる要因になったのではないかということです。

■サイボク社のケース

2社目は、株式会社埼玉種畜牧場、サイボク社を紹介します。このケースは、創業者である、父から息子への承継であり、いわゆる一番多い後継者への事業承継の事例になると思います。

・元々継ぎたいとは思っていなかった息子

サイボク社は、笹﨑龍雄氏が養豚ビジネスを始めるために創業した会社で、業界ではカリスマ的な人物であったそうです。長男である静雄氏は、家業を継ぐつもりなどなかったのですが、父親からの鶴の一声で日本大学の農獣医学部(生物資源科学部)に進学、大学入学後も家業を継ぐつもりはなく、別の会社に入社しようと就職活動をするも父親に一喝され、後継者としてサイボク社に入社しました。

・父と後継者である息子の関係をフォローする母

静雄氏がサイボク社に入社した当初は、現在のように小売まで手掛けておらず、養豚農場として運営されていたそうで、自社の商品が適切に評価されていないことに気が付いた静雄氏は、流通業に進出することを提案しました。しかしながら、猛反発にあいます。流通に進出したくても、ノウハウがなかったためです。そこで、静雄氏は、伝手をたどり食肉センターで働くことでノウハウを得ようと決断します。父に辞表を出し、食肉加工の実務を得るべく鹿児島に向かいました。

その後、サイボク社に戻ると父から流通業の進出を認められ、より付加価値の高い事業を手掛けるようになるのですが、父との架け橋を担ったのが母親であったと静雄氏は回想されています。母は静雄氏に、修行の間毎週父親宛に手紙を書くように話をしたとのことで、その手紙でサイボク社をどうしていきたいのか、業界がどうなるのか、何故この修行が必要なのか書き続け、それがあったので父親から流通業への進出の理解が得られたと仰っています。

その後、ウィンナーやハムといった加工業への進出も行っていきますが、その都度、父親とは激論し、実行に移しています。それも、母親から父とよく話すように言われていたからできたことであるようです。

・事業承継は父親が亡くなってから

父親である龍雄氏は94歳で亡くなられますが、それまでは会長職として働いており、静雄氏が完全に事業承継ができたと回想されているのは、父親が亡くなった64歳の時であろうと仰られています。

・事業承継のポイント

後継者への完全なる事業承継が完了したタイミングは、年齢を考えると遅かったのかもしれませんが、逆に良かった事例ではないかと考えました。というのが、静雄氏は父親は志を持って創業したから、経営者になることが宿命であった自分と違い、1つの筋があると仰っているためです。これは、一緒に経営に携わった期間が長いことで、創業の思いであったり、大切な価値観がきちんと後継者に承継されたのではないかと感じました。また、母親の果たした役割も欠かせません。

■オタフクソース社のケース

続いて紹介するのは、オタフクソースで知られる、オタフクソースHD社です。この会社は、日本では珍しい、家族憲章を導入された会社様です。導入を決めたのは、6代目社長であった、佐々木茂喜氏です。

・何故家族憲章を導入したのか

茂喜氏が家族憲章を導入した理由は、自身が入社した際、2代目社長であった父が急逝し、丁度同時に兄も会社を辞め、また、創業者であった祖父には父を含め7人の子供がいたことから、相続で大変な思いをしたことが原点のようです。父が急逝した後の会社の社長は、3人の叔父が代わる代わる代表となりリーダーシップを取った結果大きく成長、自身が6代目の後継者として会社を引き継いだ際、更に会社を発展させていくべく、当時オタフク社に勤務していた8人の従兄弟らと家族憲章を導入するべく議論を重ねたと仰られています。

当時は親族間の関係は良かったけども、万が一後継者の問題が出てきた場合、ステークホルダーの多い状況を整理するべく、家族憲章の作成に着手されました。

・家族憲章の特徴

茂喜氏は、従業員に就業規則や賃金規定等のルールがあるように、創業家にもルールを定めることで、持続的な発展ができるよう目指しました。氏が仰られる家族憲章の特徴の一部には、

「給料や退職金は同額」

「年齢を重ねても何らかの役割を与える」、

「株は創業8家が均等に保有し、保有者になるには入社しなければならない」

「多数決で決定はせず、全員が納得するまで議論をする」

「グループ企業の取締役の半数以上を創業家以外とする」

等があります。特に意識されたことは、事業に携わる創業家全員にパートナーシップが生まれるような仕組みを心掛けたそうです。全員参加型という形にすれば、それぞれが得意な分野で貢献ができるという思いからとのことでした。

また、事業承継にあたり後継者の選考基準には、「何を始めたか」、「何を変えたか」、「誰を育てたか」と売上や利益貢献でないところに着眼していることも企業を永続させるポイントになるのではないかと思います。

・事業承継のポイント

この会社の場合は、自身の苦い経験が元にあり家族憲章を作成するという少し特殊な事例かとは思いますが、いわゆる同族企業が永続して発展するためのヒントがあります。創業家だけでなく、従業員にも積極的なチャンスを与えるような仕組みづくりは、結果、優秀な後継者が沢山出てくる基盤になると考えます。

3.親族内での事業承継で大切なことは

ここまで、いくつかの事例をみてきました。親族内での事業承継には選択肢として、実子、娘婿、兄弟を後継者に指名し、事業承継を行うことが挙げられます。いずれの手法をとるにせよ、大事なこととしては、下記をきちんと時間をかけて行うことだと考えられます。

  1. 後継者を信頼し、事業を任せる
  2. 価値観を共有する
  3. 家族憲章の作成により一族の会社への関与方針を定める

1.で大切なことは一度後継者に事業承継をしたら、事業のかじ取りを任せることです。これが中々できず、苦労されている会社様が多いと思いますが、これを実行するためには、入念な事業承継計画が必要でしょう。この匙加減が難しいと思うのですが、何処かで考えて実行していかなければならないことです。

私が、最も大事なことで一番難しいことだと思うのは、2.の価値観を後継者に共有することです。一般的に後継者は、創業者のやってきたことを全否定したり、新しいことを突然始めたりしがちだと言われます。それが、価値観を共有したうえで現代風にアレンジするようなものであれば、とても良いと思うのですが、そのような事業承継を行うには、やはり事業承継計画がとても大事になるでしょう。後継者へきちんと事業承継を行うということは経営資源の承継だけでなく、価値観の承継がとても大事であるということだと考えます。事例で紹介した、相模屋食料社は、先代と後継者が事業承継にあたり会社をどのようにするのか、大枠で共有できていたからこそ、あれだけの成長が実現できたのだと思います。

3.の家族憲章を作れるかどうかは、およそ慣習として日本国を支えてきた仕組であったイエ制度がいよいよ消失しようとする現代においては、今後後世に事業承継をさせていくうえで重要な鍵となるかもしれません。いわゆる日本的経営≠家族的経営のようなイメージは、株式会社が根付くにあたって慣習としてあったイエ制度を取り入れた背景があり、核家族化、また、個人がより自由になっていく将来において、会社を守る指針としての役割が期待されると思われます。これについては、別に解説をしたいと思いますが、家族憲章自体は、特に欧州の起業においては取り入れられており、日本においても、会社の所有と経営が非上場会社においても進んでいくかも知れません。

4.終わりに

いかがでしたでしょうか。親族内で事業承継を上手くしている会社様の事例は、そのまま当てはまるものもあれば、そうでないものもあると思います。しかしながら、紹介した事例は多くの会社様にとってあり得るパターンでしょうから、参考にしていただければ幸いです。もちろん、当社では中堅・中小企業の事業承継のお手伝いをしていますから、もし第三者への事業承継を検討されるのでしたら、是非一度ご相談ください。

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