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物流業界(運送業)のM&A・事業承継を検討する場合_三浦 正裕

こんちには。かえでFA三浦です。本日は、物流業界のM&A・事業承継についてお話したいと思います。物流業界といっても、トラック、海運、鉄道、航空、倉庫、流通加工など分野は多岐に渡ります。すべてを網羅できるわけではありませんが、本日は、その中でもトラック運送業に関するトレンドを解説させていただき、M&A・事業承継を検討する方にとって有益なお話になるようにしたいと思います。それでは、始めていきます。

1.業界の市場規模と特徴

まずは市場規模を見ていきましょう。公益社団法人全日本トラック協会によると、物流業界の市場規模は約24兆円となっており、非常に存在感の大きな業界です。このうち、トラック運送事業の市場規模は、平成28年度において14兆4,578億円であり、物流市場全体の約6割を占めております。また、国内貨物総輸送量における輸送分担率(トンベース)で約9割を占めており、日本の物流の主役と言える分野です。トラック運送事業全体で見ると、石油製品や鉄鋼などの不振から、ここ10年間は伸び悩んでおりますが、消費のEC化により、今後は宅配などの需要拡大が見込めることでしょう。

※出典:日本のトラック輸送産業-現状と課題-2020(公益社団法人全日本トラック協会)より弊社作成

トラック運送業の特徴としては、事業者のうち、従業員100人以下の中小企業が全体の97%を占めていることが言えます。これは、1990年12月に施行された物流二法(貨物自動車運送事業法と貨物運送取扱い事業法)により、事業参入が免許制から許可制に変わるなど、参入障壁が一気に下がり、トラックが5台あれば起業できる仕組みとなったことがきっかけです。

また、トラック運送業は、典型的な労働集約型の事業です。運送コストにおいては人件費の占める比率がもっとも高く、2017年度の全国平均では39.6%にのぼります。つまり、人件費の高騰を抑えながら、トラックを走らせることが重要と言えます。また、適正な運賃をもらいながら輸送を続けていくことが重要になってきますが、荷主企業からの圧力により採算の合わない運賃で輸送を続けているトラック運送事業者は少なくないというのが現状です。

2.業界のトレンド

続いて、物流業界のトレンドについて見ていきましょう。下記にお示しするのが主なトピックスです。

■慢性的な人手不足
2017年頃より「物流クライシス」という言葉が登場しました。物量と運び手の需給バランスが崩れ、モノを届けられないという状況のことを意味します。物流業界は、慢性的な人手不足に陥っている中、安定的な物流サービスを提供することが、第一に求められております。また、トラック運送業界におけるドライバー不足は、採用時の賃金水準を引き上げたり、既存の賃金水準を引き上げることで退職を引き留めようとする動きが高まるなど、人件費の上昇にも繋がっております。トラック運送事業者にとって、ドライバー確保は喫緊の課題であり、脱3K(きつい、汚い、危険)イメージや未経験者でも活躍できる教育制度の整備、ダイレクトリクルーティング、定着率アップなどの対策が必要でしょう。

■提案型営業へのシフト
荷主企業の物流一括アウトソーシングを請け負う3PL(サードパーティ・ロジスティクス)に注目する企業が増えており、大規模な物流施設や倉庫への投資を行っております。今後、米国のように3PLが普及していけば、単なるノンコア領域としてのアウトソーシングではなく、競争力強化のためのビジネスパートナーとしての役割をより一層求められることになるでしょう。よって、3PL事業者は荷主企業の開発、生産、販売などの部門との連携を含めて、物流システムの構築およびマネジメントを荷主企業の視点で行っていくことが必要となってきます。

■最新技術への投資加速
AIやIOT、ロボットなどを用いて、生産性向上や省人化を図る「スマートロジスティクス」に注目する企業が増えており、最新技術への投資が加速しています。具体的には、AIでトラック、ドライバー、貨物内容、物量、納品時間等のデータを押さえて最適化を図るツールや最適な積載方法をシミュレーションできる積付計画支援システム、自動搬送機、無人フォークリフトなどが挙げられます。GPSやデジタルタコグラフなど、既存システムへの投資はもちろんですが、人手不足や働き方改革、コンプライアンス強化などへの対策として、今後、最新技術へ投資が必要になるでしょう。

3.業界のM&A事例

では、物流業界のM&A事例には、どのようなものがあるのでしょうか?

■ファイズHD社による中央運輸社のM&A事例

ファイズHD社は3PLをはじめとするECソリューションを包括的に提供する企業グループです。一方、中央運輸社は長距離幹線輸送や店舗向けルート配送を展開する、トラック運送業です。ファイズHD社はこれまで、中央運輸社が本社を置く神奈川県厚木エリアおよび隣接する相模原エリアで急拡大する物流需要を取り込むため、事業所開設などの対応策を講じてきました。しかしながら、物流機能を大きく上回るニーズが顕在化していたほか、今後も大規模物流施設の開発等を控えており、更なる需要の拡大が見込めることから、同エリアにおける輸配送インフラのスピーディーな拡充・強化を目的に、中央運輸社のM&Aに至りました。

■福岡運輸社による八洲陸運社のM&A事例

福岡運輸社は福岡運輸グループの中核会社であり、定温物流を軸とした、トラック運送業です。一方、八洲陸運社は、東北エリアに強い基盤を持つ物流企業で、冷凍冷蔵食品を中心に集荷から保管、配送まで一連のサービスを提供するトラック運送業です。福岡運輸社は、2014年9月に盛岡市に事業拠点を開設するなど、東北エリアの物流業務の拡大に取り組んできましたが、更なる営業エリア拡大の観点で青森市に本社を構える八洲陸運社のM&Aに至りました。

■日本物流未来ファンドによるアイアンドアイ千葉中央社のM&A事例

日本物流未来ファンドはSBSホールディングスと日本政策投資銀行により共同出資された投資ファンドであり、全国の中堅・中小物流事業者を投資対象としております。一方、アイアンドアイ千葉中央社は、千葉県および東京都東部でネットスーパー配送、ルート便、企業専属便などの軽貨物輸送を手掛けるトラック運送業です。SBSホールディングスの小口配送網強化戦略とアイアンドアイ千葉中央社の事業拡大ニーズが合致したことから、本件M&Aに至りました。

■センコー社によるUACJ物流社のM&A事例

センコー社はセンコーグループの中核会社であり、雑貨・アパレル・食品・家電製品など幅広い業界・業種の荷主を抱える総合物流企業です。UACJ物流社はUACJ製品の重量貨物運送や倉庫運営などを担い、非鉄金属製品の輸送に関わる多くのノウハウを有しております。重量物輸送を得意とするセンコーエーラインアマノと連携したさらなる事業拡大や生産性の向上、輸送力の確保と増強、UACJグループとの取引拡大などが図れることから、UACJ物流社のM&Aに至りました。

4. M&A/事業承継におけるポイント

事例を見てきたところで、M&Aを検討するにあたり、ポイントになる点を記載します。勿論これが全てではございませんが、参考にしてみてください。

■拠点の立地は良いか
まず、高速道路のICや幹線道路沿いに立地するなど、多方面へのアクセスが良好であれば高い評価を得られるでしょう。また、譲受け側が求めていることにもよりますが、譲受け側の既存荷主や新規取引を検討している荷主の所在地と近接しているかどうかもポイントになるでしょう。

■若いドライバーはいるか
総務省による年齢別の就業者構成比を見ると、50代以上が42.8%を超えており、ドライバーの高齢化も深刻な問題となっております。この先長く勤務して貰えるであろう、若いドライバーが多数在籍していれば、高い評価を得られるでしょう。

■元請比率は高いか
トラック運送業界で問題とされているものの一つに、下請け多層構造があります。下請け多層構造で問題なのは、下の層になればなるほど運賃が安くなることと、それによりドライバーの確保ができなくなるというところです。よって、元請比率が高く、荷主がある程度分散しているようであれば、高い評価を得られるでしょう。

■運行管理は適正に行われているか
運行管理は労働時間等、コンプライアンスを遵守するために不可欠です。運行管理者の未選任や点呼の未実施は行政処分の対象となります。また、過労運転や未払残業などの問題にも関わってくる為、きちんとした運行管理が行われていれば、それだけでも高い評価を得られるでしょう。

■車両は新しいか
保有車両が古く、更新の必要がある場合、追加投資が不可欠となる為、マイナスポイントとなるケースがあります。一方、比較的新しい車両を保有している場合、帳簿価額より相場の方が高くなるケースが多い為、含み益のある資産として評価される可能性があります。

上記は一例であり、譲受けを検討している企業は個別の経営資源に注目しております。譲受け側から見て『魅力的な企業』であるために、全てが完璧である必要はありません。

5.終わりに

いかがでしたでしょうか?トラック運送業はビジネスモデルが画一的でスケールメリットが働きやすいことから、M&Aが最も盛んな業種の一つです。例えば、保有車両の台数が多いほど関連費用の割引が入る為、仮にM&A前と全く同じ業務を続けたとしても、利益を出しやすくなります。更に、拠点間で仕事を融通し合えば帰りの積荷も確保しやすく、積載効率の向上にも繋がります。福利厚生の充実や対外的な信用力アップも見込め、ドライバーの新規雇用も加速することでしょう。ここで記載したことが全てではありませんが、M&Aを検討するすべての方にとって、この情報がお役に立たれば嬉しく存じます。

かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社

マネージャー

三浦 正裕 Masahiro Miura

 

鈴与グループにてエネルギーや建材などの営業に従事し、2017年新規開拓実績全社1位など多数受賞。
その後、株式会社日本M&Aセンターにて、物流、印刷、建設、医療、卸売など幅広い業界のM&A案件に携わるなど、2019年は売上予算比153%達成。
2020年にかえでファイナンシャルアドバイザリーに入社し、M&A・事業承継アドバイザリー業務を担当。
静岡大学教育学部卒。

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