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介護付き有料老人ホームのM&A・事業承継の動向とポイント_稲川 貴法

高齢化の進展と共に介護ニーズが高まる中、有料老人ホームのニーズも依然として拡大傾向にあります。一方で、恒常的な人材不足や人件費の上昇が経営を圧迫し、小規模事業者を中心に倒産を余儀なくされる事業者も存在します。介護業界の動向、M&A事例、売手が気を付けるべきポイントについて解説します。

1.有料老人ホーム業界の市場環境

高齢化の進展に伴い今後も介護ニーズは拡大していくと見られ、立地さえ問題なければ、ほとんどの有料老人ホームで定員が埋まっている状況にあります。今後も需要が拡大していく成長産業であるため、異業種からの参入も含め買収ニーズは高まっています。

一方で、介護報酬の引き下げや恒常的な人材不足、人材コストの上昇などにより、経営が悪化して廃業や倒産を余儀なくされる事業者も存在します。特に、介護業界は給与水準が低く、労働環境も過酷な傾向にあるため、他の業界に比べて人材の離職率も高く、恒常的な人手不足に悩まされています。

規模の大きい事業者であれば、一時的に人材が不足しても施設間で人材の融通を効かせることも可能です。しかし、小規模事業者は、わずか一人の退職でも人員配置基準を満たさなくなるケースがあり、人手不足と人件費の上昇により、厳しい事業運営を強いられています。

2.有料老人ホームのM&A動向

今後も有料老人ホームの需要が増加していくと考えられますが、一方で総量規制がかかっているため新設が容易でなくなっており、既存の有料老人ホーム等に対する買収ニーズは高まっています。

同業者が規模の拡大や人材確保のために買収する動きだけでなく、医療法人や不動産会社など異業種からの参入も比較的多く見られます。

一方、介護報酬の改定や恒常的な人手不足に悩まされる小規模な事業者も多く、M&Aで売却を検討する事業者も増加傾向にあります。その意味で、M&Aを行うには好機が到来していると言って過言ではないでしょう。

3.M&A・事業承継のポイント

有料老人ホームを売却する際に考慮すべきポイントを説明します。まず、スキームについてのポイントは以下の通りです。

①株式譲渡か事業譲渡か

株式譲渡の場合、許認可を引き継ぐことができますが、事業譲渡の場合は改めて許認可を取得する必要があります。その際、旧法人を廃止して新法人で許認可を申請し直すと、自治体にもよりますが、通常、2~3か月を要します。従って、他の業種よりも事業承継のハードルが高いと言えるでしょう。その点、株式譲渡だと許認可の問題はクリアされますが、一方で簿外債務を引き継ぐリスクが生じます。

②不動産ごと売却するかどうか

有料老人ホームは不動産的側面もありますので、不動産を一緒に売却するかどうかもケースバイケースです。買手により、不動産のような重い資産を取得することを嫌う場合があります。その場合は、介護事業のみを売却し、M&Aの結果、売手は不動産業だけを営む大家さんになるというイメージです。

次に、買い手が見るポイントについて説明します。

①施設の立地、設備

有料老人ホームは介護事業ですが、不動産的な側面もあり、施設の立地や建物の状態は非常に重要なポイントになります。また、自己所有か賃貸か、自己所有なら不動産ごと売却するのかどうか、賃貸ならその契約内容がどうか、などがポイントになります。

②入居率

不動産と同じですが、有料老人ホームは定員が決まっているため、入居率が非常に大事になります。入居率が低いのであれば、その原因が何によるものかを探り、可能な限り対策していくことが大切です。

③スタッフ

恒常的に人材不足の業種であり、人材確保を目的に買収される買い手も多いかと思います。また、人員配置基準があるため最低限の人数が承継されることがマストですが、もともと最低限の人数しかいない場合、事業承継の際に退職者が出て人員配置を満たさなくなることなども想定されるので、気を付ける必要があります。

 

かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社

稲川 貴法 Takanori Inagawa

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