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IT業界(ソフトウェア受託開発)のM&Aを検討する場合_岡村 新太(2020年11月4日更新)

このコラムでは、IT業界の中でも企業からの依頼を受けて情報システムを開発する、受託システム開発(ソフトウェア受託開発)に係る事業者についてお話したいと思います。

1.はじめに

こんにちは。かえでFAの岡村です。今日はIT業界に関するM&Aのお話をしたいと思います。IT業界といっても、多岐に渡ります。業務システムに関するものやWebサービスに関するもの、近年盛り上がりを見せるAI開発やアプリ開発等も当てはまります。ただ、本稿で扱うものは、企業からの依頼を受けて情報システムを開発する、受託システム開発(ソフトウェア受託開発)に係る事業者についてお話したいと思います。

2.IT業界(ソフトウェア受託開発)の動向

まず、業界の状況を把握しましょう。経済産業省の行う「特定産業実態調査」によれば、IT事業に係る売上高は右肩上がりが続いています。2018年度においては、約24兆円と市場規模は巨大です。

コンピューターの技術進歩と共に、大企業から中堅企業においてまで、情報システムのニーズが高まり成長を続けてきました。近年では、アマゾン社が提供するクラウドシステム(パブリッククラウド)の台頭により、クラウド上で自社型サービスを提供(Saas)するための開発ニーズや、自動車や家電等にシステムを組み込み、特定の機能を実現する組み込みソフトウェアのニーズも高まっています。

国内の業界構造としては、年商1兆円を超える、富士通社、NEC社、日立製作所社といった企業を中心に、NTTデータ社や大塚商会社、日本IBM社等、準大手と呼ばれる事業者が続きます。これらの企業群は、主に大企業向けの基幹システムに携わることが多く、その他の事業者の多くは、中小企業向けのシステム開発や大手事業者の下請を手掛けているという構造です。

業界はこれからも拡大を続けると考えられ、また、常に人手不足であると言われており、従って、事業承継を検討する時期としては、適切なタイミングが続くと考えられます。

3.IT(ソフトウェア受託開発)事業者の分類

ソフトウェア受託開発に係る事業者は、事業モデルにより、4つに分類できます。

①システムの開発プロセス全てを請け負うシステムインテグレーションを担う事業者(SIer)

②システムへの要件定義、設計業務と開発導入のプロジェクト管理を担うITコンサルティング事業者(IT系のコンサルティングファームや大企業傘下の総研等)

③業務システムの設計、開発、テストを請け負う開発事業者

④運用保守業務を請け負うシステム運用管理事業者

当然①、②の事業者は大手や準大手が担う領域となることが多いでしょうから、今回お話したいのは、③に係わる事業者です。

業務システムの受託開発といっても、大きくは3つに分類できます。

①基幹系システム・・・会計や人事、購買、生産、販売、在庫管理といった企業の根幹を担う情報管理を行うソフトウェアの開発

②業務支援システム・・・販売や営業、顧客属性の管理等営業面の支援を行うソフトウェアの開発

③Web系のシステム・・・企業のHPやECサイトの構築、ログ解析等webアプリケーションを運営するうえで必要なソフトウェアの開発

まず、ご自身の会社が、主に何処に属するものなのかは理解されているかと思いますが、一度棚卸をし、分類してみてください。

4.事業承継が加速すると考える理由と売主が把握すべきポイント

私が、IT業界において事業承継が急速に進むのではないかと考えている理由は、Saas等のクラウドサービスの台頭により、多くの企業がこれまで基幹システムを独自に構築していましたが、その開発コストを嫌って、安価なクラウドサービスに切り替える動きが増えていくのではないかと思うからです。また、IoTといった概念の登場により、ITがより私たちの生活の至るところに関わってくることになるでしょう。情報セキュリティに関する技術ニーズも高まり、多くのソフトウェア受託開発企業にとって主流であった、基幹システムを受託開発し売上を作るという商流が、大きく変化していくと思います。今後はより、自社開発のクラウドサービスを提供する事業者が隆興し、そのような環境変化の中で、優秀な人材確保に向けた動きが活発になっていくはずです。

事業承継をお考えになるオーナー様が抑えるべきポイントは、下記になるかと思います。

自社の得意先はどのような先であるのか

まず買い手が気にする点として、売上構成がどうなっているのか、そしてその種類は何かです。基幹システムの受託開発に強みがあるのであれば、その実績は当然のこと、保守契約等も受注出来ているかや、特定の分野に強いかどうかも鍵になります。また、SES契約を締結しているのであれば、その期間や取引先との関係性も気になるところです。

従業員の保有資格はどのようなものであるか

IT系の事業者はBS(貸借対照表)上の資産が、見えにくいです。これは、業界柄土地や在庫を保有しないためのことであって、実際には働く従業員の皆様に知識や経験が集約されています。従って、その方々が、どのような資格をお持ちであるのかは、買い手に取って非常に興味がある点になります。例えば、高度情報処理技術者と呼ばれる資格である、ITストラテジスト、システムアーキテクト、プロジェクトマネージャー、ネットワークスペシャリスト、データベーススペシャリスト、エンベデッドシステムスペシャリスト、ITサービスマネージャー、システム監査技術者等を保有されている方が何名いらっしゃるのか等です。

受託開発の実績は、どのようなものが多いのか

買収によって規模の拡大を目指す買い手に取っては、自社で取り組んでこなかった実績も気になる点になります。実績の多くが基幹システム系なのか、業務支援系なのか、Web系なのかによって、従業員の皆様が習得されているプログラミング言語が異なると思いますので、複数のPJ経験がある方が望ましいでしょうし、Web系のプログラミング言語が使えるのは、人気がある印象です。これは、業界柄Webマーケティングの隆盛やWebサービスがこれからまだまだ盛り上がりを見せるであろうと考えらえるからでしょう。

5.事例(2020年11月4日更新)

ここでは、IT業種の会社がどのようなM&Aを行っているのか、少し見ていきます。

公表されているIRを元に、小職なりに解説しています。

■SHIFT社によるホープス社のM&A事例

SHIFT社は、東証1部上場のIT企業で、主にソフトウェアの品質保証サービスを手掛けています。中期成長戦略に則り、ERP関連サービスの強化を目的にホープス社を買収したようです。ホープス社は、ERPサービスを中心に事業をされている会社様のようで、中小企業向けのそれに強みがあったようです。上場会社グループの傘下になることで、今まで以上に信頼の向上、業績のアップが見込まれます。SHIFT社自体は、積極的にM&Aを展開されており、個人的に注目しております。更にSHIFT社は、下記の事例もございます。

■SHIFT社による、クラッチ社のWebマーケティング事業のM&A事例

クラッチ社は、Webマーケティングを主な事業として展開している会社様で、こちらもSHIFT社の中期成長戦略に則り買収を決められたようです。ソフトウェアの開発から品質保証、更にwebマーケティングのサービスまでワンストップで提供できる、そういった仕組を持つ会社様は、今後も伸びると思います。

■ウィルテック社によるパートナー社のM&A事例

ウィルテック社は東証2部に上場しており主に、製造請負・人材派遣、EMS等を中心に展開されている会社様です。製造関連の事業を生業とされているようですが、クライアントの意向を深く聞いていくと、ITへのニーズも強くあり、この決断をされたようです。

■じげん社によるPCHホールディングス社のM&A事例

じげん社は、webサービスを展開する企業様で、求人・不動産等のサイトを多く保有しており、ライフメディアプラットフォームを標榜されています。M&Aも積極的に実行されている会社様で、累計で15社されております。PCHホールディングス社の傘下にキャリアサポート社という、介護・保育領域の人材紹介、人材派遣業を担う会社があり、この業界での成長を目指し、決断されたようです。

時代はまさに、M&A戦国時代と言ってよいのかもしれません。既存の事業ドメインのみで勝負するのではなく、周辺領域にまで進出し成長を続ける大変な時代になったかと思います。しかしながら、企業の意思が強く問われる時代になったとも言え、個人的には面白い世の中になることを期待しています。

6.最後に

駆け足ですが、IT業界(ソフトウェア受託開発)のM&Aについてお話させていただきました。事業承継を検討されるオーナー様においては、まずは自社がどうであるのかを棚卸してみてください。その中で、分からない点等ございましたら、何なりと当社にお申し付けください。

 

かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社

岡村 新太 Arata Okamura

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