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シリーズ:書評で考えるM&A

M&Aのお役立ち情報

M&A実務を遂行するうえで重要なのは、「買い手が望んでいることは何か」について深い洞察と経験、広い視野をもっていることです。

投資目的としてのM&A

M&A実務を遂行するうえで重要なのは、「買い手が望んでいることは何か」について深い洞察と経験、広い視野をもっていることです。株式会社等の法人に対する投資実行にあたっては、買い手は大きく、ストラテジックバイヤーとファイナンシャルバイヤーに大別されますが、事業会社においてもポートフォリオの再構築が一般的になったこの10余年においては、事業のイグジット方法について考えない投資家(買い手)はいません。

したがって、M&A実務を遂行する我々専門家も、投資にあたって買い手プレーヤーがもつインセンティブについては、深く理解する必要があります。

【表】M&Aにおける買い手

M&A(事業買収)と他の投資対象

さて、上記のような前提にたつと、M&Aにおいて一般的に投資対象となっている「事業」は他の投資資産との比較において、投資判断がされていることがわかると思います。つまり、ストラテジックバイヤーにせよ、ファイナンシャルバイヤーにせよ他の投資資産(上場株式、ETF、通貨、金などの実物資産、不動産など)との比較において、投資リターンが有利であると判断するから、事業に投資を行うわけです。

したがって、投資家にM&A案件を紹介し、実務を遂行するアドバイザー・専門家は、他の投資資産についての相場感や、置かれている環境、関連規制や関連税法についても基本的な知識を有している必要があります。「他の資産を買うよりも会社を買ったほうがお得ですよ」という切り口で、会社を紹介する必要があるからです。

ここに、M&Aにかかるアドバイザー・専門家こそ、金融資産としての不動産についての知識を深める必要が生まれます。事業の買収と不動産の買収には似た側面があり、不動産について分からないと、M&Aに対する理解が抽象的、ふわふわしたものとなってしまうからです。M&Aにおける買収を買い手にすすめるにあたっては、自信をもって「不動産よりお得です」といえる必要があります。不動産と事業のリスクとリターンの特性の違いについての知識は不可欠です。

【表】事業投資と不動産投資

お勧めの書籍 山下章太『図解 不動産ファイナンスのしくみ』

投資対象としての不動産については、把握しなければならない要因は多数にあります。

対象物件の地理的条件や用途、周辺相場等を把握するほかにも、金利環境(特にイグジットを視野に入れる場合)、利回りと価格の計算方法、不動産取得税等の流通税、投資対象の種類(オフィスビルかレジデンスか等)、取得資金の調達方法、調達スキームなど、不動産にかかる固有の論点については、ある程度おさえておかないと、「いざ売却しよう」となったときに、損をだす可能性が高いです。

不動産投資にあたっては、「このような物件を買うとお得ですよ」という説明をしている不動産業者の営業本から、宅建資格の資格本のような関連規制を書いた書籍は多数ありますが、ファイナンス(投資と資金調達)という観点から、多数の論点をおさえるのは著者に広範な知識を要求します。 そのような観点から、おすすめなのが山下章太著『図解不動産ファイナンスのしくみ』(2020年4月、中央経済社)です。

著者は公認会計士でありながら、証券会社にてトレーディング実務、銀行にてM&Aファイナンスや各種ストラクチャードファイナンスに携わった実績があります。また、キャリアスタートである監査法人での勤務時代には、バブル崩壊後の金融危機対応のなか、不動産の担保価値を中心とした金融機関の監査への厳格化に対応するなど「危機に対する経験と勘」も多く有してします。

本書にて著者は不動産にかかるマーケット環境を概観することから始めます。「不動産価格はなぜ動くのか」「マイナス金利は何がダメなのか」「市場金利と利回りの関係」「不動産が売れないと節税というキーワードを使う」など、不動産市場における価格の形成要因から、全体像の説明を始めます(第1章)。不動産と金融の関係を書いた書籍については、一般的な価格形成要因について触れることは多くありません。ここに、常にマーケット全体への気配りが効いている、著者の特徴がよく表れています。

全体のあとは、各論です。まずは、他の投資資産との比較として、上場株式や外貨投資の比較をし、次いで利回りの計算方法、投資対象とする不動産についての外観など、投資実務についての説明を行っています(第2章、第3章)。特に、第3章のアセットタイプ(オフィスビルか、レジデンスか、ホテルか、物流施設か等)による要求利回りとリスクの違いの説明は、今次の危機のさなかに「不動産は買いである」と判断する方には、大きく参考になります。たとえばREIT(不動産投資信託)への投資を行うにあたって、ホテルの賃料収入が「固定+変動」であり、レジデンスの場合は「固定」となるといったことを知れば、自身のリスク選好によって、より適切な投資対象を選択することができるでしょう。

また、第4章では不動産投資における資金調達(借入)の手法を、第5章では不動産投資における投資スキームの説明がされているなど、「これから金融マンとして不動産実務に携わる人」にも格好の入門書となっています。本書をきっかけに、著者の一連の『金融マンのためのファイナンス』シリーズを読むのも、たいへん良い勉強になるでしょう。評者の場合は、再生ファイナンスの業界で仕事をはじめるにあたり、著者の書いた『金融マンのための再生ファイナンス講座』はたいへん参考なりました。

ステイホーム下の読書として

この度のコロナウイルス危機は、さまざまな負の影響を経済活動に与えています。そのようなさなかで投資について考えるのは困難かもしれませんが、stay homeの習慣があるうちに、じっくりと基礎的な知識を蓄えておきたいものです。特に新聞報道等だけに目を通していると、各種の相場の変動的な要素だけに焦点があたってしまい、自身のお仕事が安定されている方も余計な投資、知識がない分野への投資をおこなってしまい、経済的なリスクを高めてしまう可能性があります。

企業年金・国民年金等の年金積立をおこなっている方、保険商品を購入されている方、預貯金を有している方など、多くの方は金融資産を有しており、無自覚であっても投資を行っている状況にあります。本書に限らず時間がある際に、長い視点で投資について考えるのは、経済的な意味だけでなく、人生を豊かにすることでしょう。

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当社は、世界的に有名なREFINITIV(旧トムソンロイター)のM&A成約件数ランキングに9年連続ランクインしております。

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事業の今後の成長性を考慮した事業計画作成による譲渡価額最大化や、補助金・税制の申請支援、M&A後の相続税対策、資産運用などのご相談も承ります。

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