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M&A補助金制度がスタート | 新型コロナウイルス対策の一環として_岡村 新太(2020年7月6日更新)

政府、とくに経済産業省および中小企業庁では、これまで各種のM&A関連レポートを公表し、事業承継税制による特例措置を実施するなど、経営者の高齢化にともなう事業承継・M&Aの推進が行われてきました。
そのような中、新型コロナウイルス(COVID-19)対策として、
・日本政策金融公庫等が実施する特別融資制度(条件によっては、金利ゼロ)
・雇用調整助成金の制度拡充(中小企業については、助成率が最大90%)
・売上の減少高に対応する、事業者に直接給付する給付金(持続化給付金、最大200万円)
と並んで、「経営資源引継ぎ支援事業」がスタートいたしました。
これまで予算措置のされていなかったM&A実施のための費用につき、補助金制度が実施されます。
(最終更新日:2020年7月6日 主に太字部分を更新)

1.経営資源引継ぎ補助金制度とは?

中小企業庁では、新型コロナウイルスの流行によって、各種の産業が致命的な打撃を受けていることから、経営資源の引継ぎにかかる各種費用についての、補助金制度がいよいよスタートします。

具体的には、事業の第三者への承継(株式の売却等)を実施する際に、オーナー様に小さくない負担となる専門家にかかる費用(業者によりますが、最低報酬は通常500万円~2,000万円程度です)が補助されます。ここで、専門家費用とは、FA会社の仲介手数料・デューデリジェンス費用、企業概要書作成費用等を指します。

補助率は、売り手となるオーナー様にむけては最大2/3、買い手に対しても最大2/3です。

2020年7月6日に公表された要領によると、下記のような支援内容となっています。

尚、本稿は売主様の場合を想定したものとなりますので、それ以外の方はご容赦ください。

また、概要を分かりやすく説明いたしますので、詳細については必ず公募要領を確認してください。

2.補助対象者

では、補助対象者がどのように定義されているのか、見ていきましょう。

対象となるのは、M&Aの当事者となる中小企業(対象会社の支配株主も含む)、個人事業主です。一方で、対象とならない事業者もいます。社会福祉法人、医療法人、一般社団、財団法人、公益社団・財団法人、学校法人、農事組合法人、組合(農業協同組合、生活協同組合、中小企業等協同組合法に基づく組合)は、対象となりませんので、ご注意ください。

更に、下記の要件が必要になります。

3.経営資源引継の要件

①経営資源の引継を促すための支援

⇒補助事業期間に経営資源を譲り渡す者(売主)とそれを譲り受ける者(買主)の間で、事業再編・事業統合等が着手される予定であること。

②経営資源の引継を実現させるための支援

⇒補助事業期間に売主と買主の間で事業再編・事業統合等が着手され、かつ行われる予定であること。

①というのは、要するに、M&Aの検討を始めた際に必要となった費用のことです。

例えば、着手金が必要なM&A仲介業者に依頼するのであれば、その費用(当社は完全成功報酬なので不要)、もしくは企業価値算定報告書等のレポートに実費が必要な場合、その費用を指します。M&Aを検討し始め、M&A仲介業者に何がしかの費用を支払ったタイミングを想定していると思います。

②は株式譲渡契約(SPA)の締結が完了して、実際にM&A仲介業者等に支払った報酬を指します。他に弁護士費用など、DDコストもかかったのであれば、それも該当するはずです。

この要件を満たしたうえで、どのようなスキーム(株式譲渡や事業譲渡、会社分割等)で行われたのかにより、補助金の申請区分が異なるようですので、御確認いただき、申請をしてください。

4.補助事業対象期間

補助金の対象期間は、補助金の交付決定が行われてから、最長で2021年1月15日までです。要するに、2021年1月15日までに対象となる事業承継の準備、もしくは実行が行われる必要があるということです。尚、売主様が利用できる補助金については、「事前着手届出書」を提出すれば、2020年4月7日以降の着手日から遡ることができるようです。

5.補助対象経費

補助対象となる経費については、下記を全て満たす必要があります。

  1. 使用目的が補助対象事業の遂行に必要なものと明確に特定できる経費
  2. 補助事業期間内に契約・発注をおこない支払った経費
  3. 補助事業期間完了後の実績報告で提出する証拠書類等によって金額・支払等が確認できる経費

では、具体的にどのようなものが対象となるか見ていきましょう。
①謝金
②旅費
③外注費
④委託費
⑤システム利用料(M&Aマッチングプラットフォーム等の費用)
このうち、M&A業者に係る費用としては、④の委託費として要領に記載されています。
例えば、M&A仲介業者に支払う着手金、リテーナー費用、基本合意時報酬、成功報酬等です。基本的には、M&Aに必要となる費用については網羅されていると思いますが、こちらについても、申請される場合は、要領と経費の内容をよくご確認いただき、ご対応ください。
それでは、想定されるモデルケースを見ていきましょう。

6.モデルケース:M&Aの準備費用(経営資源の引継を促す費用)

事業承継を考えていたあるオーナー社長が、M&Aを検討していて、自社の価値を知るために、M&A仲介会社に企業評価書の作成を依頼をしたとします。この際の費用が50万円で、また、不動産も保有していて、評価書の作成にあたり不動産の鑑定評価書を100万円で取得しなければならなかったとします。

ex) 企業価値評価50万円+不動産鑑定評価書100万=150万 >100万:補助金額

これが対象となるわけです。

7.モデルケース:M&Aの実行費用(経営資源の引継を実現させるための費用)

ここに、客室100室・客単価2万円・稼働率80%のビジネスホテルがあったとします。立地にもよりますが、ホテル業はコロナウイルスの流行前は人気業種でしたので、事業価値は利益の12~15倍程度にて、M&Aが実施されていました。ざっくり試算すると、100室×80%×2万円×365日で、年間の売上が5.8億円程度となります。

営業利益率をこちらも概算ベースにて7%と仮定すると、年間の営業利益は4,000万円程度となります。この事業の価値を営業利益の12倍~15倍と考えると、事業価値は約5~6億円程度と考えられます。ここで、平均をとって事業価値を5.5億円と仮定します。

ホテル事業の場合は、ホテルの建設等にかかる費用を金融機関から借り入れるのが通常ですので、事業価値の60%を金融機関から借り入れていたとすると、借入額は3.3億円です。株式の価値は、「事業価値-借入金」と表現されるので、上記ホテルの株式価値は、

事業価値5.5億円 – 借入金3.3億円 = 株式価値2.2億円 と表現できます。

さて、M&Aにかかる費用ですが、株式を2.2億円で売却する場合、オーナー様には5%程度の費用が発生いたします。つまり、株式を2.2億円で売ったうえで、1,100万円程度の報酬をファイナンシャルアドバイザリー(FA)会社に支払うわけです。

これまでは、この1,100万円がすべてオーナー様負担となっておりましたが、この度の補助金制度の成立により、最大650万円もしくは2/3の補助金が得られることとなりました。すなわち

1,100万円×2/3=733万円 > 650万円:補助金額

どちらのケースにおいても、今までは売主様の実費として負担頂いていたものですから、M&Aを検討されるオーナー社長様にとっては、魅力的な制度であることは間違いありません。

8.終わりに

経営資源引継補助金の概要を説明して参りましたが、如何でしたでしょうか?

コロナ禍で事業運営も思うようにいかないこともあり、事業承継に及び腰な経営者様も

多くいらっしゃるでしょうが、こういう制度を是非活用し、ご納得のいくM&Aとなるよう、願っております。

 

かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社

岡村 新太 Arata Okamura

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