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「愛される無垢の木の家具を作る会社から、愛される無垢の木の家具を作る愛される会社へ」

業種
その他製造
スキーム
株式譲渡
譲渡会社
株式会社ウッドユウライクカンパニー代表取締役神山 公一
譲受会社
株式会社KESIKI代表取締役石川 俊祐

〔写真:左から稲村・内倉氏・神山氏・河合氏・石川氏〕

 

創業者である神山 公一氏(以下神山氏)の洒落がきいた株式会社ウッドユウライクカンパニー(Wood You Like Company、以下WYLC)は2021年1月、事業承継により『愛される無垢の木の家具を作る会社』から『愛される無垢の木の家具を作る、愛される会社』への生まれ変わりを目指します。家具の直営店は表参道駅から徒歩5分、青山通りに近い路地に佇んでいます。周囲に大学や専門学校が多いためか、多くの若者がSHOPの前を行き交い、人通りの多さが目に付く好立地です。

WYLCを自分達の代で終わらせてしまうのではなく、WYLCブランドを大切にしつつ、もっと良い方向に発展してゆけるような事業承継を実現したい

今回は桜が綻ぶ季節に実現した神山氏・河合店長ご夫妻と、譲り受けた株式会社KESIKIの共同パートナーである内倉代表・石川代表とのクロス対談の様子をお伝えします。

弊社稲村(以下略):お久し振りです。クロージングから約3か月経ちましたが、その後お変わりございませんか?

石川 俊祐 代表(以下 石川氏): ご無沙汰しています。2021年1月8日にクロージングしてから、あっという間の充実した3か月でした。

河合店長(以下 河合氏): 従業員のモチベーションが上がって、新しい風が吹いていることに(不安よりも)期待の方が上回っている感じがします。KESIKIさんの大変な努力のおかげで、スタッフの顔が生き生きしてきました。

今回、KESIKIさんとしてのM&Aは初めてだと思いますが、M&Aに対するポリシーなど大切にしていることはありますか?

石川氏: 私たちには「M&A」という言葉よりも「事業承継」という言葉の方がしっくりきます。私たちには3つのポリシーがあります。1つは、今まで価値ある物を作ってきた企業の元来のビジョンや哲学を活かしながら、どう新しい価値に変えていくのか、先人が遺してくれている物をとても大事に考えています。2つ目は、より長期的な時間軸で会社を良くしようとしているビジョンを持っていまして、例えば「家具をつくる」会社から「ライフスタイルをつくる」会社に変わることがどういうことなのかということを、長い期間を掛けて模索しながら一緒に見つけていくスタイルで承継します。会社を売る前提で価値を上げたり効率化したりするということではなくて、この会社で働く人たちが幸せで、かつ、新しい価値を生み出し続けていくカルチャーを大事にしています。3つ目は、デザイン×ビジネスの視点を大切にしています。そもそもM&Aはビジネスの人達がするもの、買って会社を効率化して色々な仕組みを入れて経営する、というイメージがあります。私たちはそういうことではなく、商品自体の価値(製品力)を新しく生み出して、デザイン×ビジネスという視点にもこだわっています。デザインというのは、形のある物だけでなく、ブランドのコミュニケーションや組織のデザインなど、デザインの力でできる無限の可能性について考えています。

まさに、WYLCさんがこれまで大事にしてきたことと思い描いてきたことが、KESIKIさんの考えと重なりますね。KESIKIさんは会社設立から1年半になりますが、事業承継は設立当初から視野に入っていたのでしょうか。

石川氏: はい。「愛される会社のデザイン」を実現するための方法として、設立当初から事業承継は考えていました。日本中に今からでは作り得ないような、伝統的な歴史的な魅力をもった中小企業の事業承継問題がずっと気になっていたので、後継ぎが居ないというだけで、もしくはデザインの力と出会う機会が無くて気付くことも無いまま事業を終わらせてしまうのは勿体ないことだと思っていました。そんな会社を私たちが変革し、それをモデルに横展開することが次のステップであると考えています。私たちが実証して、同じようなモデルを他の人にもできるように拡大していくことを事業として目指しています。

神山さん、お久し振りです。神山さんにはFAとして弊社を選んでいただいた理由を教えていただきたいです。

神山氏: 東京都の引継ぎ支援センターに相談して3社紹介いただきました。佐武社長と当時の担当者にお会いして、対応がきちんとしていて信頼できそうだと思ったことが決め手になりました。成功報酬制であることも選んだ理由の一つでした。

事業承継を考えるきっかけとしてご年齢や体力面があると思いますが、事業承継の方法として、何故、第三者承継を選択されたのでしょうか。

神山氏: 正直、よく覚えていないんです・・。ただ、親戚や社内の従業員という身近な人への承継もありますが、それが必ずしも会社が発展する方向なのかなと疑問に思ったんです。発展させるには客観的に判断ができる第三者の方が良いのではないかと考えて選択しました。

お互いに初めて会った時の第一印象はいかがでしたか?

神山氏: 役員の方4名がそれぞれ個性的で、得意分野での確かな実績がありながらも、随分若くて柔らかくてとても魅力的で、話が通じそうだと思いました。スーツを着てかしこまった感じだったらこちらも身構えちゃいますけど、そういう雰囲気じゃなかったので取っつきやすかったです。

石川氏: 「職人」という言葉から連想される、頑固で口数少ないイメージを持って会いに来たのですが、全然そういう印象とは違って、会うとすごく未来の話を中心に語られたのが印象的でした。神山さんの「もっと若かったらこれがやりたい!あれができた!」という思いが溢れ出ていて、むしろ私たちの方が「会社を継がせていただく」と固く身構えすぎて、グローバル展開の話とか準備してきたり、いつも通りの自分達を出せていなかったと思います。M&Aは「する側」と「される側」で軋轢が生じたり、どちらかがブレーキになったり、という印象があったんですけど、最初の印象で良い意味で裏切られ、一緒にやっていけそうという印象がありました。

ご夫妻には私からも私の前任者からも色々な方を紹介させていただきましたが、ご夫妻からお断りすることが多かったですね。KESIKIさんとは何が違いましたか?

神山氏: 何もかも全然違いました。これまでの大体の方はきちんと会社を運営している経営者然とした方でしたから。

河合氏: うちみたいに風変わりな会社を承継してくれる方はそうそう居ないのではないかと悲観的に思っていました。ただ、うちが『愛される無垢の木の家具を作る会社』なんですけど、KESIKIさんの『愛される会社』をつくりたいという、お互いのコンセプトが近いことに驚きました。

実は最初に私がご紹介した先はWYLCさんとは別の会社だったんです。

石川氏: そうですよね。醤油とか日本酒とか旅館とか、違う会社の話をしていましたね。

でも話を伺ううちにWYLCさんとKESIKIさんは「合う」と直感しました。

石川氏: 私たちが家具の会社を探しているなんていう話は伝えていなかったですから。

神山氏: 私に話を持ってきてくれた時は半信半疑と言うか、ダメ元みたいな感じだったから、「まあ一応聞いてみるか」みたいに気軽な始まりでした。やっぱりうちの良さを本当に理解して承継するという人が現れるか、何回も諦めながら「これは長期戦になるな」と思っていたんです。それまで少しでも自分たちで立て直すことを真剣に考えていました。

奇跡的な出会い

 

〔写真:(左)河合氏 (右)石川氏〕

石川氏: そう言う意味では奇跡的なタイミングでしたし、奇跡的な出会いだったんです。

神山氏: そう、奇跡的なタイミング。本当にその通りです。

KESIKIさんが興味を持ったきっかけというのは何だったのでしょうか。

石川氏: ビジョンが明確にある会社だったことが検討するきっかけになりました。継がせていただく時に理念が無い会社だと後で社員が揺らぐ原因にもなることを経験値として持っていましたので。

最初にWYLCをご紹介したのが内倉代表だったので、どういうところがヒットしたのかお聞かせ願えますか。

内倉 潤代表(以下 内倉氏): 形式的な最低限の数字やビジネスモデルやバリュエーションをクリアしたうえでKESIKIの社内ですごく盛り上がった部分は、『愛される無垢の木の家具をつくる』ことや、一人の作り手が最初から完成まで責任を持って丹念に製作する「全工程責任担当者別生産」、それからカンナ屑を隣の牧場の飼料にしていることや、木の成長スピードと伐採スピードが合うように素材を選択していることなど、色々なストーリーがあって私たちが理想とする方向性が一致していたのですごく魅かれました。

石川氏: 私は一人でこっそり客の振りして来店して、木の家具を触りまくって帰ったんです。その時にデザイナーとして、質の高い物を作られていることやベースがしっかりしていることを体感して、この会社の将来の拡がり方や成長が目に浮かび「これはイケる」と思いました。

神山さんと河合店長が一番迷ったポイントとして、『本当の価値を気付いてもらうことが困難だった』という話がありますが、KESIKIさんはどのように理解されていますか

内倉氏: この会社に入って3か月になるんですけど、入ってみて初めて分かったことがたくさんあるんです。あの時と今と、見えているケシキは全然違います。職人さんがどういう思いで働いているかとか、実はちゃんと理解できていなかったんだと感じています。

神山さんと河合さんの人柄に魅かれて一緒にやりたいと思いましたが、その人柄や思いが職人さんにもきちんとストレートに反映されていて、平たく言うと「いい人ばかりの会社」でした。

石川氏: これは失礼な話で過小評価していたと言いますか、職人さんは目の前のものづくりに集中していて、それ以外のことはあまり関心がないんじゃないかと思っていました。実際会ってみたら全然違いまして、『うちの商品はただの商品では無くて「生き物」なんです』と話されて、やはり生きている木とかに触れている方々の感覚の鋭さを感じました。非常に印象的な言葉で、良い意味で驚きました。

それは神山さんご夫妻が普段から従業員や職人さんに思いを伝えてこられたのでしょうか。

神山氏: 私たちは別に日頃からそんな話は何もしていないんですけど、自然と感じ取る物があるのでしょうか。

内倉氏: 多分、素質のある方を見極めて神山さん達が採用してこられたのと、直接語っていなくても皆さん肌で感じる物があったのだと思います。

承継の前と後とで心境などの変化はありましたか?

神山氏: お蔭様で肩の荷は降りましたけど、実際に自分の手を離れることに悲しいような寂しいような辛い気持ちが込み上げます。こんな気持ちになるなんて思ってもいなかったので、意外な感じです。後悔は何もありませんが、この悲しみを自分なりにきちんと消化しないと悲しみで潰れてしまいそうです。

河合氏: 私はあまり気持ちは変わらないです。昨年末は色々寂しい気持ちになって、お店で一人残った時に大音量で音楽を掛けて踊ったりしていました。

年が明けて、まさに話が進行している真っただ中で、悲しみより忙しさの方が勝っています。でも傍で神山を見ていて、悲しみに襲われているのを見て・・・ちょっと心配しています。

石川氏: それなら悲しい気持ちにならないように何か一緒に忙しくやりましょうよ!いつまでも神山さんの会社だと思っていてください。

私もこの仕事をしていて、色々なオーナーさんを担当しますけど、皆様、神山さんと同じようなことを仰います。真摯に経営に取り組んでいた方ほど、安心すると同時に寂しいような気持ちを受け止めていらっしゃるようです。

(もらい泣きtime・・・)

さて、それでは前向きな話としまして、今後やりたいことなどありましたら、お聞かせ願えますか。

石川氏: まだ漠然としているかも知れませんが、無垢の木の置き家具を製作する会社から、無垢の木と生活し共に生きることを提供する会社として、教育などのビジネスに拡げていきたいと思っています。それから、グローバル展開の可能性もあると思っているのでアジアに向けて発信していきたいですし、私たちが掛け合わさったことで創出できることを形にして新しいラインを作るとかなど色々挑戦していきたいです。

内倉氏: 大前提としてあるのは、会社を大きく方向転換をしていこうと思っている訳では無いということです。今までやっていたことを受け継いで、同じベクトルは向いているけれど、もっとこの会社の魅力をお客様に知ってもらいたいのでどう発信するか考えていきたいです。

WYLCは既に愛される家具を作る会社ではありますが、KESIKIの掲げるビジョンにもあるように、働く社員にももっと「愛される会社」にしていきたいです。

職人さんは元々独立志向の高い世界なのかも知れませんが、「この会社の一員で良かった」「死ぬまでこの会社で働きたい」「自分の家族に胸を張って自慢できる会社」と思ってもらえる会社に変われたら、もっと飛躍的に成長できると考えています。社員とのコミュニケーションの時間を作っているので、私たちのビジョンや人となりも理解してもらえていると思います。

最後に従業員へのメッセージをお願いします。

神山氏: 日々、一歩一歩の努力の積み重ねこそが、未来を切り開くので、浮足立つことなく地道に頑張り、愛される会社を作っていきましょう。

かえでさんには3年間の長きに亘り、数々のわがままにも関わらず、見限る事無く辛抱強くお付き合いいただき、大変ありがとうございました。不思議な縁と必然を感じています。

本日は貴重なお話をお聞かせいただいてありがとうございました。

一同:ありがとうございました!

温かい無垢の木の家具に囲まれて、終始笑いに包まれる和やかなインタビューとなりました。

 

かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社

マネージャー

稲村 圭祐 Inamura Keisuke

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