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「息子への事業承継と、ファンドによる成長支援と」

業種
食品製造
スキーム
吸収分割
譲渡会社
有限会社金井酒造店代表取締役佐野 英之
譲受会社
株式会社金井酒造店       (くじらキャピタル株式会社)代表取締役佐野 博之

2021年10月15日(金)にクロージングを迎えたばかりの株式会社金井酒造店と、くじらキャピタル株式会社 両代表にお時間を頂戴し、「息子への事業承継」と「ファンドによる成長支援」といったこれまで類を見ない新たなスタイルのM&Aについて詳しくお話を伺いました。事業承継問題と業界の縛りに悩んでおられるオーナー様の参考になれば幸いです。

 

 

 

 

小田急線急行で新宿から約1時間20分程の渋沢駅から見た美しい富士山

まずは、今回のM&Aに「かえでファイナンシャルアドバイザリー」を選んでいただいたきっかけを教えてください。(かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社 稲村、以下省略)

株式会社金井酒造店 代表取締役社長 佐野博之様(以下佐野氏):最初は銀行からM&Aの話を勧められたのですが、私たちのことをちゃんと理解していないような見当違いな話が多く、徐々に不信を抱くようになりました。そんな中、かえでさんとのネットワークを持つうちの会計士の先生から「情報漏洩の心配は無いし相談してみては?」と紹介いただいたのが始まりでした。大手のM&A専門会社を含む多数の営業DMが届く中、信頼する会計士の紹介から最後は人と人との繋がりであると感じ、かえでさんにお手伝いいただくことになりました。

M&Aのクロージングを先週終えて何か変わったことはありますか

佐野氏:今のところは特には無いですね。今まで専務と呼ばれていたのが「社長」に変わったくらいです。M&A後、会社の営業や製造体制がガラッと変わってしまい、社長として残ったものの不満がある、と言ったような皆様が想像されるトラブルはありません。

くじらキャピタル株式会社 代表取締役社長 竹内 真二様(以下竹内氏):私たちはお酒を造ることについては素人です。先ほども仕入れの話などをお聞きしていましたが、基本的には佐野社長にお任せし、我々はデジタルマーケティングなどの強みを要素として加えていきたいと考えています。基本的な部分を任せられる存在があるということは非常に大きいです。

酒造案件が多々ある中で他にも検討された先がありましたが、金井酒造に決めたきっかけは何ですか

 

竹内氏:まず酒造りをしっかりされていることです。小さい蔵にもかかわらず純米酒が作れる、大吟醸が作れるといった様々な種類のお酒を作る技術力の高さに魅力を感じました。また、新しいものを作っていこうとする気風が備わっていたことも選ばせていただいた理由の一つです。新しいことにチャレンジすることは決して簡単ではありません。

佐野社長、純米酒・大吟醸を作る技術は強みとして意識して取組んでこられたのですか

佐野氏:中に居ると周りが見えないので分からないのです。技術力がしっかりしているとか竹内社長に言っていただきましたけど、五里霧中でそれが当たり前と思っていて特別なことをしたつもりは無いです。なので、竹内社長の視点は良い刺激になっています。色々な提案をいただいて、すぐにはできないけど実現するにはどうすれば良いか考えるきっかけになっています。

順当にまともなことをやっているけど、時々遊びをやりたいというのが金井酒造の特徴でもあります。「モーツァルト」や「いなり」とか梅酒にしてもしかりで、変に凝り固まったところが無いから気に入ってもらえたのかも知れません。

業界のトップランナーと言われている酒造会社はこの店でないと卸さないとか、かなり我の強い売り方をしているのですが、うちはそういう変なこだわりはなく、お客様に喜んでいただくことに軸足を置いているところは他と違って変わっているのかも知れません。

明治元年からの歴史はあるものの、柔軟性も兼ね備えているのですね

佐野氏:みなさん、長い歴史を持っていると仰るのですが、この業界で150年はまだまだベンチャー企業なのです。だからこそ、色々やってみたいと考えています。

事業承継の方法としてM&Aを選択されたきっかけは何でしょう

佐野氏:時代の流れもありますし周りにもそういう動きはありましたので。色々な複合要因がありますが、最終的にはM&Aが自然な選択でした。廃業される酒蔵さんもいらっしゃいますが、できれば伝統文化を絶やしたくないという思いからM&Aで伝統を残すという選択に至りました。

佐野社長と竹内社長が初めて対面したのは今年(2021年)4月頃でしたが、お互いの第一印象はいかがでしたか

 

佐野氏:前向きな方だと思いました。結局お見合いと一緒でビビビと直感が働いたというか、前向きに捉えていただいていることはよく分かりました。

竹内氏:お相手との相性は非常に大事です。これまでもいくつかの酒蔵様とお会いしましたが、その時に感じた若干の違和感のようなものを金井酒造には一切感じませんでした。それまで感じてきた違和感について思い返すと、こだわりが強過ぎたり、逆に投げやりな印象が要因となっており、こだわりが強過ぎると私たちの提案をなかなか受け入れてもらえなかったり、投げやりになっていると基礎部分が不安定だったりします。一方、金井酒造は非常にバランスが良く、且つ佐野社長のお人柄が信用できると感じ、第一印象は非常に良かったです。

ファンドが関わることについてはどうお考えでしたか

佐野氏:先代である父の世代では「ファンド」というと、「ハゲタカファンド」のイメージが強くて、中身だけ抜かれて全部持っていかれてしまうイメージがありました。私は学生の頃を海外で過ごした経験とか、色々な自伝書などの書物に触れる機会が多かったので、父の世代のような固定観念は無く、完全に違う捉え方をしています。ハンズオンで企業価値を上げていくのがファンドのイメージです。父を説得するのには多少の時間が掛かりました。

事業会社ではなく、ファンドだからこそできる強みは何でしょう

竹内氏:良い意味で我々は酒造業界の素人としてフレッシュな視点に立って新しいやり方を提案することができます。一方で、私たちには投資家への説明責任がありますので、実現可能な計画を立て実行し結果を出さなければなりません。私たちは新しさと規律のバランスが取りやすい存在なのだと自負しています。

さらに、歴史ある酒造業界では、同業他社のライバル心や、人間関係などのしがらみから、デューデリジェンスなどで全てをさらけ出すことに抵抗を感じる方が多いと思います。そういう意味ではファンドは色が付いていないフラットな立ち位置としてしがらみのない対等な関係性でビジネスの話をできることが強みであると考えています。

くじらキャピタル株式会社としての強みは何でしょうか

竹内氏:私たちはDX(デジタルトランスフォーメーション)でバリューアップを目的に3年前に立ち上げたファンド会社です。中小企業DXファンドとしては日本で初めてとなります。デジタルの知見では他の追随を許さない、実践する能力のあるファンドです。インハウスのエンジニアも抱えており、実践者としてのデジタル変革を強烈なスピードで実行します。

ECサイトの立上げは順調でしょうか

 

竹内氏:新しい試みの一つが通販ビジネスです。私たちは「背骨を通す」という表現をしていますが、まずはオーダーを受けて商品を発送するまでの一連の流れをコンプリートさせ、その次に流れを加速させます。

今日は水曜日ですよね。それでクロージングしたのが先週の金曜日でしたが、私たちはクロージング日に新しいサイトを立上げており、既に受注も何件か受けています。先ほどの一連の流れをもう体験しているのです。これから流れを検証し改善して、トラフィックを太くするフェーズに向かっていきます。このようなスピード感を持って実践するファンドは世界中例を見ないと思います。

株式会社金井酒造店 通販サイト

販売面のDXのお話しを伺いましたが、酒造りの製造面のDXについてはいかがですか

竹内氏:私は現場をしっている訳では無いので、佐野社長と相談しながらになりますが、できることはあると考えています。人の感性が必要な部分や人が動かないとできない部分はありますが、再現性を担保するためには属人的なやり方をできるだけ数値化して可視化し、「この人でないとできないこと」を「誰でもできること」に近づけることはできると思います。

それは決して無味乾燥な機械化を進めることではなくて、いま感覚的にやっていること・素晴らしい技術を他の人が学びやすいように分解して、それによってより多くの人に届けることができるようにしたいです。

M&Aのプロセスで一番大変だったことは何でしたか

佐野氏:M&Aで大変だと聞いていた資料類の提出に関しては思ったよりスムーズに進みましたし、取引先関係も問題なく進みました。くじらさんには資料提出の指示を明確かつ丁寧にしていただき、かえでさんにはそれをサポートいただけたので、思っていた程のハードルではなく順調に進みました。

プレスリリースを終えて、酒造組合や周囲からの反応はありましたか

 

佐野氏:客先は不安なこともあるでしょうし、「どうやったの」「どんな風に変わるの」とか周囲に聞かれることはありましたが、結局、メンバーは全員変わらないし私が社長になって会社名が変わっただけだし、説明すれば皆様納得して受け入れてくれて、大騒ぎになるようなことはありませんでした。

今後の成長戦略を教えてください。

竹内氏:金井酒造だけでなく日本の中小企業全般の課題として、管理面に課題があると感じています。中小企業はどこも管理面に割くリソースが無いし、専門家が付いている訳でもありません。ファンドの強みとして、例えば、月次試算表や証憑管理のバックオフィスのオペレーションを確立するなど、人事・労務・勤怠関連の守りを固めて、デジタルの仕組みとマーケティングの新しい取組みにより成長させたいです。

それから愚直に今ある商品を販売する営業体制のデジタル化も図りたいと思っています。卸担当者の営業管理をデジタル化して営業の足を引っ張る問題を取り払い、目標を達成するための営業管理で売上を数倍にできると確信しています。

海外展開も検討されていますか

竹内氏:いま香港・マレーシアを視野に輸出の準備を整えていますし、日本酒の海外への輸出量がすごい勢いで伸びているので、これは実行します。

最後に、佐野社長から後継者問題で迷っているオーナー様に一言お願いします

佐野氏:とにかく、私は専務・新社長という立場でM&Aに関わりましたが、なかなか周りに相談することができないもので、数年間一人で悩んでいました。一人で悩んで廃業するよりは、早いうちに動いた方が良いと思います。私も隣の蔵に気軽に聞いたり相談したりできなかったので、そんな時は専門家に相談すれば必ず道は開けると思います。

 

株式会社金井酒造店

〒259-1304 神奈川県秦野市堀山下182-1

明治元年(1868年)創業。ロングセラー商品の白笹つづみや麹菌にモーツァルトを聴かせた銘酒「モーツァルト」シリーズなど。入賞商品多数。

 

くじらキャピタル株式会社

代表取締役 竹内 真二 様

〒107-0052 東京都港区赤坂2-9-3 松浦ビル3階

2018年創業。デジタルの力で会社を永続させるために当事者となり実践する、新進気鋭の投資ファンド。

 

かえでファイナンシャルアドバイザリー株式会社

マネージャー

稲村 圭祐 Inamura Keisuke

近くには複数のハイキングコースやカルシウム豊富な温泉と旅館があり、美味しいお蕎麦もいただけます。こだわりの日本酒を探しに、是非、金井酒造店に足を運んでみてください。

 

左から先代社長英之氏、当社稲村、新社長佐野博之氏、佐野二三氏

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