インドのM&A事情

インドの経済・投資環境

・インドの名目GDP(2013年)は約10,876億ドル、一人あたり名目GDPは約1,509米ド
ルであり、2004年から2013年までの年間GDP成長率は7.4%で推移。

・インドの中間層は急拡大をしており、2015年の総家計数における中間層の割合は、約
25%の予定であるが、2025年頃には約46%まで拡大する見通しである。

・デリー・ムンバイ間産業大動脈構想(Delhi-Mumbai Industrial Corridor)という大型
インフラ開発プロジェクトが進められており、これは指定した24のノード(クラスター)を2つのフェーズに分けて開発するUSD900億規模の超大型インフラ開発プロジェクト(長さ1483キロの貨物線がデリームンバイ間の大都会と産業地区を結ぶプロジェクト)である。

・他の大型インフラ開発プロジェクトとして、ムンバイーバンガロール間は、航空大動脈を開発する予定で、インド政府が産業都市開発計画を作成し、英国政府が実現可能性調査を実施する予定。

・また、チェンナイーバンガロール間の国家投資・工業地区をケララ州と結ぶ動脈構想に関する実現可能性調査をJICAが実施する予定。

・ITセクターが2014年度に13%成長する見込みで、2020年までは米ITセクターの地位
を奪うと予想される。

・資本、労働生産性は順調な増加を見せており、インドとその他の市場向けのローコスト
高品質研究開発ハブ、生産拠点としての地位を強めている。

インドのM&Aの特徴

M&Aの件数及び業界別M&A実積

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中国進出の次は、インドです。日本企業だけでなく、欧米企業も積極的に投資を始めています。インドの製造業、製薬業に対するM&Aが増えています。なお意外ですが、IT業界に対するM&Aは少ないようです。

日本の企業のインド企業への投資事例

これまでインドの製造業や製薬会社の買収が多かったですが、今後はサービス業へのM&Aが急増しそうです。日本企業は、インド市場だけでなく、インドの会社を買収しプラットフォームにして、アフリカ市場への進出も狙っています。
金額基準におけるトップ10ディール(2012~2013)
日付 対象会社 買い手企業名 産業セクター 金額
(百万米ドル)
07/31/2013 Claris-Infusion Business Investor Group Pharmaceutical preparations 193.26
02/05/2013 Conmat Systems Pvt Ltd
Kayaba Industry Co Ltd
Construction machinery and equipment
10.35
01/30/2013 Sree ramcides Chemicals Pvt
SDS Biotech KK
Pesticides and agricultural chemical, nec
18.34
01/16/2013 Arch Pharmalabs Ltd
Mitsul & Co Ltd
Pharmaceutical preparations
69.04
01/10/2013 Western Refrigeration Pvt Ltd
Hoshizaki Electric Co Ltd
Refrigeration and heating equipment
27.55
09/28/2012 L & T Plastics Machinery Ltd
Toshiba Machine Co Ltd
Special industry machinery, nec
60.61
09/06/2012 Navyug Special Steel Pvt Ltd
Investor Group
Steel foundries, nec
39.17
08/17/2012 REliance Capital Ast Mgmt Ltd
Nippon Life Insurance Co
Investment offices, nec
289.19
08/10/2012 Honda Siel Cars India Ltd
Honda Motor Co Ltd
Motor vehicles and passenger car bodies
32.56
07/18/2012 Sindhu Cargo Services Ltd
SG Holdings Co Ltd
Arrangement of transportation of freight and cargo
16.27

留意点(プロセス、投資規制、買収後の注意点など)

外国直接投資(FDI)規制

・100%自動認可: 製造業、建設業、卸売業、ノンバンク業、石油業

・上限付き自動認可: 通信業(49%)、定期航空業(49%)、保険業、出版業(26%。出版する内容によっては最大100%まで可能)

・個別認可: 小売業、宅配便事業、茶栽培、放送業(20%。事業内容によっては最大100%まで可)、銀行業(74%。比率によっては個別認可が不要)。

・投資禁止: 鉄道業、原子力エネルギー、チットファンド・ニディカンパニー(相互無尽金融の一種)、農業
・農園(一部可)、不動産、譲渡可能不動産開発権の取引、賭博・宝くじ、葉巻・たばこ製造

株価算定に係る留意点

・インドの案件を含むクロースボーダーの案件では、日本国内でよく使用されている「時価純資産法プラス営業権」は、交渉や買い手側の適正買収価格の算定にほとんど使用されておらず、「DCF法」と「類似会社比準法(通称、マルチプル法」の2つの方法がよく使用されている。価格の検討は、 「DCF法」と「類似会社比準法」で行い、デューデリゼンス実施後に時価純資産法を活用し、減額の交渉を行うのが一般的。

・買い手側の適正買収価格の検討にあたり、日本国内の感覚で、インドのような成長率の高い国のM&A案件を検討してしまうと、折角のよい案件が入ってきても、判断を誤る恐れがある(*日本国内では長期間にわたるデフレの影響で、インドのような新興国で経済全体や会社が高い成長を続けていて、それが株価算定に反映されることにつき、なかなか受け入れられていないことが散見される)。

・インドのような新興国では、価格の交渉(特にMOU前の段階)に時間をかけるのは、得策ではない。価格交渉では、類似会社比準法(EV/ EBITDA)というロジックがよく使用されるので、対象会社の直近のEBITDAが価格交渉のベースとしてよく使われる。インドのような新興国では年々、売上とEBITDAが成長を続けるパターンが多いので、本年度のEBITDAの着地見込みが前期を上回る見通しが高くなれば、EBITDAのベースが上がる蓋然性が高くなるので、売り手側は買い手側との交渉に強気になる。

インドM&A案件でよく見かける株主構成パターン

インドの企業における一般的な株主構成は、様々な性格の株主で構成さ
れたものとなっている。特にPEファンドなどの外国機関投資家の存在が目立つ。

PEファンド主導の売却の場合、PEファンドのファンド運用期間の満了に伴い、
保有持分の売却を進めるもの(*プロモーターを巻き込む等)が多い。

また、プロモーター主導の売却の場合、後継者問題や次の成長ステージに移行す
るために資本力と技術力を兼ね備えた外国企業との資本・業務提携を目的としたものになる。