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4. 案件の入り口の段階で確認すべき事項
①対象会社のある国に対する戦略的なマッチの確認

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2015.12.10
海外案件が最初に持ち込まれた時に真っ先に確認したいのは、どの国の案件かということでしょう。買い手さんによって重視する市場は、それぞれが置かれている事業環境によって異なりますが、日系企業全体としての大きな傾向としていえるのは、東南アジアを向いているということであります。

戦略的に重要視すべき国を検討するにあたり、以下のようなポイントは考慮に入れるべきです:

・東南アジアのような新興市場であれば、国全体、また、対象市場として高成長をしているか。つまり、そこに大きな市場ポテンシャルがあるかです。

・東南アジアの高成長の国において、警戒すべきソブリンリスクはないか(政治・経済リスク)。
 ハイリターン(高成長)は、コインの裏表の関係に似ていて、ハイリターンはハイリスクの関係にあるといえます。多くの東南アジアの国々は5%前後の高い成長をしていますが、外貨準備高に余裕がない国も多いため、外部要因に端を発した経済危機に貧弱な体質であるといえます。また、通貨価値も基軸通貨であるドルに対してかなりボラが高く、資源国で比較的に通貨価値が安定的だと言われていたマレーシアの通貨も昨今の資源安でドルに対して20年来のリンギット安になっています。
昨今の東南アジアの政治体制は総じて安定しておりますが、ほとんどの東南アジアの国にて外資規制がまだ色濃く残っています。また、法規制なども不透明なところが多いため、M&Aを検討するにあたり、重要な判断をする時に障害要因になったりします。

・そこそこの売上規模を有する日系企業であれば、東南アジアに一つや二つくらいの拠点を有している企業も多いので、東南アジアを一つの大きなマーケットとして捉え、当該地域の事業基盤をさらに拡充するために、周辺地域に拡大していきたいニーズがあります。また、隣接するそれぞれの国にクロスセールのチャンスがあったり、ロジスティックス的に効率的だったりするので、広げやすいメリットがあります。

・南アジアの代表国であるインドには、中国がかつて経験したような高成長の時代が到来するといわれており、ここにきて非常に成長のモメンタムに乗っているので、インド市場を無視ことはできず、東南アジアに比べては多少遠くても、今から出ていきたいニーズも確実に増えてきています。

・ただし、東南アジアもインドもまだまだ規模的に小さい企業が多く、購買力のある市場も先進諸国に比べてまだ少ないので、案件サイズ(売上など)が大きい案件は比較的に少ないのが現状です。なので、買収した後に対象会社の業績を連結しても大きなインパクトにならないケースも少なくありません。

・短期間で可視的な買収効果を狙うには、米国の案件の方が向いているといえます。何よりもそれぞれの業界における市場規模が大きく、成熟しているので、短期間で買収効果を上げるには向いている市場であるといえます。また、政治・経済も安定し、法制度などへの不安要因もあまりないのは大きなメリットですが、良い案件への獲得競争は極めて高いといえます。

・欧州の場合は、イギリス、フランス、ドイツを除けば、小さい国が多いので、欧州を一つのマーケットとして捉えられることが多い傾向にあります。中央ヨーロッパや東ヨーロッパの国々も昨今では非常に安定しているのと、そこそこの成長をしているので、欧州地域においてM&Aが検討できる地域は広くなっているような印象を受けます。欧州の案件を日系企業が買収する時は、国や業界としての成長率よりは、案件(対象会社)としてのユニークさが買われているような印象を受けます。独特な技術や商品を持っている会社がそれにあたります。

・戦略的な国を選定するにあたり、最も重要なのは、買い手さんにとって、対象市場にてうまくやっていける自信が持てる市場(競争的優位になり得る市場)かどうかです。当然、競争関係も見極めなければなりません。日本では知名度の高い企業でも海外では全くの無名であることもよくあります。また、ターゲットとする市場で、海外の有力企業がすでに進出をし、大きなマーケットシェアーを取っているパターンもよくあるので、そのような有力な多国籍企業を相手に戦える自信があるかが問われます。

・買い手さんの既存事業とシナジーがなくても、単純に規模の拡大のために、様々な国に出ていく選択肢もあります。

・また、ターゲットとする市場にて、十分にほしい原材料が確保できるかどうかも事業の成敗を分ける大きな課題になります。

・買い手さんの主要な顧客がターゲット市場へ進出しているのか、または、進出する予定があるのか。

・当然、日本から比較的に近い国の方がビジネスのし易さや対象企業のコントロールのし易さという意味で優先順位が高い傾向にあります。

ジョシュ パク(パートナー)
かえでファイナンシャルアドバイザリー㈱
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