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3. 海外M&A案件のソーシング(プッシュ型 vs. プル型)

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2015.7.24

3. 海外M&A案件のソーシング(プッシュ型 vs. プル型)

海外M&A案件情報へのアプローチはどのようにすれば良いでしょうか。M&Aは、国内で行おうが、海外で行おうが、案件がないと始まりません。従い、どのような方法で海外M&A案件のソーシング(調達)をすることができるかにつき、お話します。
 
通常、M&A案件は、M&Aアドバイザリーの専門会社(通称、FA会社)によって買い手候補企業に持ち込まれることがほとんどで、一般的なパターンだと思います。会社によっては、国内または海外の企業を買収するための予算を公表する企業も多数存在します。このような情報をもとに、FA会社はそのような海外企業を買収したいと普段、シグナルを送っている企業にマッチする案件があれば、案件の紹介をすることができるわけです。または、海外企業買収に興味がある会社は、FA会社に相談し、案件を探してもらうこともよくあるパターンです。いずれにしてもFA会社を経由し、案件が持ち込まれることを受動的に待つ形になりますので、プル型の案件ソーシング方法になります。ほとんどの買い手企業は、このパターンで案件をソーシングすることが多いといえます。また、FA会社に買収案件ソーシングを依頼する際に、日本企業の場合は、どこかのFA会社一社を選定し、買い手探しを依頼すること(通称、Exclusive Buy-side Mandateという)は、あまりなく、何社かのFA会社に依頼すること(通称、Non-exclusive Buy-side Mandate)が多いように思われます。
どちらの方法が望ましいかについては、色々と議論がありますが、あまり多くのFA会社に依頼してしまうと、同じターゲット企業に複数のFA会社が同時にアプローチをかけてしまう状況が起きますので、ターゲット企業が混乱してしまうのと、買い手顧客も複数のFA会社の利害を調整しなければならない手間が発生してしまうので、あまりお勧めできる方法ではないです。

また、通常、FA会社が買い手顧客企業に持ち込む案件の中には、すでにM&A案件化したもの(売主が売却の意向が明確にあり、売却手続きにのっている案件)だけではなく、M&A案件化するかもしれない案件(売主が売却する意向があるかどうかは明確ではないものの、可能性がありそうな案件)を持ちこむことはよくありますし、買い手顧客から依頼を受けて(ターゲット候補のリストをもらって、またはFA会社がリストアップしたものを買い手顧客が承認する形で)、FA会社がM&A案件化するかもしれない会社にアプローチをかけて、M&A案件化に成功し、買い手顧客に紹介する方法もあります。

一方で、海外企業を買収したい企業が能動的に、FA会社を通さずに、直接、海外のターゲット企業を調べて、アプローチをかけ、ターゲット企業と面談や交渉をするパターンになります。このようなパターンを取っている会社は、非常に少ないのですが、営業力が比較的に強い会社で、語学を含めて国際ビジネスの展開能力をすでに持っている会社である場合が多いです。まさにプッシュ型のM&A案件ソーシングの方法といえます。

プッシュ型で案件をソーシングするメリットは、ターゲット会社がM&A案件化されてない段階(対象会社の株主が株式を売却する意向が芽生えてない、または準備ができてない)で、ターゲット会社にアプローチをかけて、会社の売却を説得する方法になりますので、他の買い手候補(つまり、競合する同業他社)の目にさらされる前に、相対で交渉に持ち込むメリットはあるといえます。つまり、FA会社によって複数の買い手候補に売り案件が紹介されて、案件の希少価値がなくなることは避けられるわけです。

一方で、プッシュ型で案件をソーシングするデメリットとしては、アプローチを受けたターゲット会社は、株式を譲渡する準備ができているわけではないので、会社の売却手続きを手伝ってくれる売り手側FA会社も採用していない状況が想定されます。M&Aは、きちんとしたプロセスに載せて、案件を進めないうまく行かないことがよくありますので、買い手側もM&Aの専門家を採用してない段階で、プロセスを進めるわけですので、様々なトラブルが起きやすい状況は容易に想像できます。最も起きやすい問題として、売り主も自分の会社の適切な価値がいくらなのかをプロにみてもらっているわけではないので、市場の相場感とかなりかけ離れた価格感を勝手にもってしまうことです。買い手側も同様で、プロに適切な株式価値を見てもらっているわけではないので、FA会社を通してない分、手数料は節約することができても、以外と高い価格を掴まされることがあるということです。交渉が途中で破談になる最大の理由は、やはり双方の株式価値に対する目線の乖離が最終的に縮まらないことにありますので、FA会社のような外部のプロにみてもらってない状況での株価交渉は、このような破談のリスクを高めることになります。様々な破談(Deal Break)のリスクが存在するクロスボーダーM&A案件において、買い手も売り手も経験豊富なFA会社を交渉の代理人として立てることは極めて重要で、案件クロージングの確度を上げるに違いありません。

海外M&A案件の場合、国内案件と違い、平均的な相場よりあまり安く案件を買うことは実際、かなり難しいのが現状です。なぜなら、売主からすれば、クロスボーダーM&Aにおける海外の買い手との交渉は、国内の買い手と交渉をするより、労力的にもディールコスト的にも文化的にも、様々な難点がありますので、海外の買い手に対して、平均的な相場より安く会社を譲渡したいというインセンティブは売主側で出にくくなります。従い、日本の買い手企業からすれば、平均的な相場で海外の企業を買収(高い価格さえ掴まされなければ)できれば、一応、成功といえるでしょう。また、留意が必要なのは、国によって、また特定の業種によって株式価値の相場感はそれぞれ異なるという点です。特に、ターゲット企業が新興国の企業であれば、株式価値の相場感は、日本国内のそれとはかなりかけ離れたものになりますが、株式の価値算定をより正確に行うためには、情報収集能力は欠かせません。なぜなら、株価算定の精度を上げるためには、対象会社の同業他社が過年度においていくら(何倍で)で売買されたかなどの情報をなるべく多く収集し、参照しなければ、偏った結果を招いてしまいますので、M&A専門会社が有する情報や情報収集能力を活用するのは、株価交渉を有利に進めるためには欠かせないといえます。


ジョシュ パク(パートナー)
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