M&A戦略の策定①買収ニーズの策定

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2015.7.3

海外企業を買収して、海外市場に出ていくという大きな経営方針が会社の中で決まった場合、次の課題として議論しなければならないのは、どの国または地域で企業買収を行うかの論点になります。

私どもが様々な顧客企業の買収ニーズをヒアリングしてわかったのは、ほとんどのケースにおいて、具体的にこの国の会社を買収したいという話にはならず、やや曖昧な形になっているパターンが多いという印象を受けています。例えば、インドネシアやベトナムで企業買収をしたいというニーズよりは、アセアン諸国、または西ヨーロッパや北米のM&A案件がほしいという具合です。引いては、宗教的に日本と同じように仏教国が好ましいとか、親日国が好ましいとかという具合です。

また、買収対象地域や国を選定する際に、外部のコンサルタント会社を採用して市場調査やフィージビリティ・スタディを事前に行うパターンはほとんどなく、世の中の経済の流れなど、マクロ的な経済要因や政治外交的な要因の影響を受けることが多いように思われます。

一方で、欧米の買い手企業からの買収ニーズは、具体的に買収を行いたい国、ターゲット企業の売上規模や利益水準、ターゲット企業の事業内容、期待されるシナジー、買収を行う意義など、非常に細かく規定されていることが多い傾向にあります。買収ターゲットのサーチを顧客から依頼されるFA会社からすれば、このような詳細な買収ニーズは、ターゲットサーチをより効率的に行うことができ、顧客のニーズによりマッチする案件を発掘して、顧客に提案することができるので、顧客側もより有効的に時間と労力を配分して、案件の検討を行うことができるようになります。

但し、日本の買い手企業の方で、買収ニーズをやや曖昧に伝える理由の一つとしては、自社の買収ニーズをあまり細かく伝えると企業の重要な戦略が漏れるリスクがあるので、対外的にはわざと曖昧にしておくこともあるように思います。または、現に詳細な買収ニーズが固まってなく、取りあえず、入口の段階では、検討のスコープを広く取っておいて、より広い地域で、より広い事業分野で案件情報を取得し、検討を行う方法になりますが、様々な案件を検討しているうちに、限られた会社のリソースで検討できる案件や想定シナジーが取れる案件のイメージなどがだんだん明確になり、買収ニーズが時間の経過と共に詳細になっていくパターンであります。

欧米型のように最初から細かく買収ニーズを規定して、案件を探した方がいいのか、または曖昧に買収ニーズを設定して、広いスコープで買収案件を探した方がいいかは、良し悪しがありますので、正解はないと思いますが、海外企業の買収においては、自社がやっていない事業、つまり馴染みのない事業をやっているターゲットを買収するリスクは非常に大きいので、検討の途中でNGになることが多いのが現実です。国内のM&A案件であれば、ターゲット企業の事業が買い手企業の本業と一致しなくても、垂直的バリューチェーン上のシナジー効果や新規事業として検討し、買収まで至るケースはよくありますが、海外企業のM&Aには国内にはない様々なリスク要因がありますので、買い手企業にとって経験やノウハウがない事業を有する現地企業を買収するのには、多くのリスクが伴います。従い、コアでない事業を行っている海外のターゲット企業を顧客に紹介しても、最終的にNGになることが多いので、顧客企業としては、試行錯誤を繰り返し、ベストなターゲットに辿りつくまで、相当な時間と労力を使うことになります。

結果的に、ある程度は、入口の段階で、買収ニーズを明確にし、M&A案件をソーシングした方がいいように思います。


ジョシュ パク(パートナー)
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